俺の周りの女子はみんな親友を好きになる、はずだった

uruu

第1話 遠距離通学

「はぁ、やっとついたか」


 俺、長月光輝ながつきこうきは学校に入るなり思わずそうつぶやいた。自分から選んだとはいえ、この高校は家から遠い。八代やつしろから1時間半かけ、JRと路面電車を乗り継いで、ようやくここに着いた。


「まあ、そう言うな。俺のわがままだし」


 俺の友人、霜村太陽しもむらたいようは言った。確かにこいつがここを選んだのが原因だ。太陽はとにかくモテる。名前の通り、太陽のような存在だ。背が高い俺よりもさらに背が高い。恵まれた体を生かし、バスケ部で活躍していた。そして、たくさんの女子から告白を受け、その全てを断ってきた。その結果、男子のほとんどと女子の一部からうらみを買った。


 それらから逃れるため、とにかく離れた高校に行きたいとここを選んだのだ。そして、俺はそれについていった。なぜなら、俺はこいつの親友だし、俺も地元を離れたい理由があったからだ。


 クラスに入ると、もちろん俺たちが知っている生徒は誰も居ない。遠く離れた高校だから当然だ。と、思ったのだが、一人知っている名前が名簿にあった。


上山文佳かみやまふみか? 同姓同名じゃなければあいつか?」


「まさか。あいつがここにいるわけがない」


 そう思って、俺たちはその席を見る。だが、やはり、同じ中学だったあいつだった。といっても、俺たちは特別親しかったわけでは無い。人気がある女子だったから知っているだけだ。上山文佳は小柄で小動物的な可愛さで評判だった。だが、性格はかなりきつめ。告白はたくさんされていたらしいが誰も付き合えなかったらしい。だから男嫌いとの噂もあった。


「なんで、あいつが……」


「まあ、関わらなければいいだろう」


 俺は太陽にそう言った。関わる理由は無い。とりあえず、静観だな。


 誰も知り合いが居ない俺たちは2人だけで話していたが、クラスには大いに騒がしい場所もあった。見てみると2人の女子が中心に居た。クラスのアイドル的な存在か。1人は長身で、長い黒髪の美人系。もう一人は肩ぐらいの髪で目がくりくりと大きい。まさにアイドルという感じだ。


 こういう目立つ女子には関わらない方がいいだろう。中学の頃はこういうやつに関わったことで、太陽がひどい目に遭った。もう、ここでは間違いは犯さない。


 高校初日が終わると、俺たちはまた長い道を帰ることになる。


 上山文佳も同じように電車で帰るようだが、俺たちと違って誰も知り合いは居ないようだ。

 もちろん、俺たちは関わらないようにして帰路についた。


◇◇◇


 路面電車の長旅を終え、終点の熊本駅に着くと、あとはJRで故郷に帰るだけだ。時間的には中間点といったところか。


「少し腹ごしらえしようぜ」


「そうだな」


 俺と霜村太陽は駅ビルの6階にあるファーストフード店に入る。そこでチキンバーガーとポテトのセットを食べ、再び一階に降り、駅に向かおうとした。すると、駅ビルの入り口から少し離れたところで男女が揉めているのが目に入る。


「おい、あれって……」


 俺は太陽に言った。良く見ると女子の方はクラスメイトだったからだ。しかも、クラスの人気者2人。ナンパだろうか。男性三人に言い寄られていて、嫌がっているようだが、さて、どうするか……


 と、思ったのもつかの間、太陽が走り出していた。そして、男達の前に割り込む。


「なんなんだ、お前は?」


「クラスメイトだ。お前ら、この子らが怖がってるだろ」


 はぁ。太陽はいつもこうだ。困っている人が居たら後先考えずに助ける。だから、モテるのだ。こいつの主人公体質は遠くの学校に来ても変わっていなかった。


「なんだと、コラ。邪魔するんじゃねえぞ」


 男達は柄が悪い。年齢はさほど変わらなさそうだが、3対1ではさすがの太陽も厳しそうだ。はぁ……行くしかないか。


「しょうがねえなあ、まったく……」


 俺は太陽のそばに向かった。

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