第15話

僕等が厳島神社の近くに戻る頃には、陽が落ちて辺りが暗くなり始めていた。

彼女は陽が落ちたおかげで少し気温も下がって昼間より元気そうだ。

髪を手櫛で整えている彼女は髪色もあって、心なしか涼しげに見えた。

夜になり花火の開始時間が近くなると見物人も増えてかなり混雑してくる。

昼間の何処かゆったりとした空気は島外から来た人の喧騒で完全に様変わりしている。

恐らくは元々住んでいる島民の人数を超えているのではないかと思える程の人の多さに圧倒される。

彼女は「はぐれたら見つけるのは無理そう」と言って僕の方に手を差し出してきた。

僕は彼女と離れないように手を繋いで人の隙間から夜空を見上げると、火薬の爆ぜる音がして夜空に花火が上がり始める。

厳島神社の鳥居をバックに見える花火は海面に反射して今までみたどんな花火よりも綺麗で幻想的だった。

夜空を彩る花火を夢中で見る彼女を僕はその横顔をずっと見ていた。

花火の灯りを受けて色とりどりの光に照らされた彼女の銀色に輝く髪と紅い瞳から、目を離せずにいた。

僕はその光景を一生忘れないだろう。

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