第5話 断絶
正気を取り戻した瞬間、深い後悔に襲われた。
本当にどうかしていた。
熱に苛まれて、まともな思考を失って、欲望に歯止めが効かなくなって————ユリアの尊厳を、踏み躙った。
「…最低だ」
危険信号は鳴っていた。その衝動が危ういものだということにも、ちゃんと気付いていた。それなのに、差し伸べてくれる手を振り払えなかったのは、ただ俺の意思が弱かったからに過ぎない。
ユリアは、過ちを犯した俺を責めなかった。それどころか、またこうすればいいだなんて、そんなことを言った。
もっと自分のことを大切にしてほしい。その心も身体も、決して軽んじていいものなんかじゃないのに。
でも、その感覚をユリアから奪ったのも俺だ。
ユリアを花騎士に選ばなければ、こんなことにはならなかった。
きっと、あの頃のままユリアは笑っていた。心を殺すことも、傷つけられることも無かった。
「っ…」
拳を握る。
今更悔やんだって、何も戻っては来ない。だからいつもこれから先のことだけを考えて来たのだけれど————俺はただ、振り返って後悔を目の当たりにするのを避けていただけなのかもしれない。そう思うほどに、自分が壊したユリアの人生を直視するのは苦しかった。
強張った身体を動かして、ベッドに腰掛ける。
目を閉じれば、好きだと伝えた時の、揺らぐユリアの目が瞼の裏に浮ぶ。
あんなことしておいて、よく好きだなんて言えたものだ。でも、ユリアからまたこうすればいいと提案された時、ちゃんと全てを打ち明けなければならないと思った。このキスは魔力の暴走による事故なんかじゃないのだと、そこには明確な下心があるのだと、はっきりそう伝えることで、認識を改めて欲しかったんだ。そんな簡単に、受け入れて良いものではないのだと。
実際、思いを伝えたら、それまで淡々としていたユリアも動揺を見せた。否定の言葉を探す姿を見て、全く悲しくならなかったと言えば嘘にはなるけれど、でも安心の方がよっぽど大きかった。恋心を伝えてもなお、自らを蔑ろにする選択を取られたらどうしようという不安もあったから。
「…とりあえず、兄上のところ行かなきゃ」
立ち上がって、部屋を出た。考えるべきことも、向き合うべきことも山ほどあるけれど、今は何よりユリアの身体のことを優先すべきだ。
何ともないと言っていたけれど、俺が数日動けなくなるほどの魔力を受け取って、何の後遺症もないとは思えない。兄上に相談して、現状を正しく把握しなければ。
兄上の部屋のある西館へ向かう。王位継承権を持つ者は皆、別の建物に私室を与えられているため、かなり距離があった。
早足で廊下を歩き、階段を上り、五分ほどかけて目的の部屋に辿り着いた。息を整え、ドアをノックしようとしたところで先んじてドアが開く。
「こんばんは、ランゼル様」
「あ…こんばんは」
髪を下ろしていて、一瞬誰か分からなかった。夜に会った時でも、一つに束ねているところしか見たことがなかったような気がする。さらさらのミルクティーブロンドの髪が、いつも以上に柔らかさを醸し出していた。
フレジアさんはにこりと微笑んで、俺を部屋に招き入れてくれる。俺が尋ねてきたことを、兄上があらかじめ感知していたのだろう。
「どうしたんだい、こんな夜遅くに」
兄上は奥のテーブルで晩酌をしているようだった。
「すみません…ちょっとご相談があって…」
テーブルにはワイングラスが二つ並んでいる。二人でお酒を飲んでいたのだろうか。相変わらず、羨ましいほどに仲が良い。
グラスの置いていないところに座ると、すぐさまフレジアさんがアイスティーを入れてくれた。
「随分と落ち込んでいるね。ユリアと喧嘩でもしたの?」
「喧嘩では、ないんですが…」
「ユリアのことではあるんだね」
はい、と頷いて肩を落とす。何から話そうかと悩んでいると、兄上はくすりと笑った。
「ふふ、振られたみたいな顔してる」
「えっ!?」
妙に核心をついた言葉にぎくりとする。
まぁ、あながち外れでもない。自分の犯してしまったことに対しての気持ちが大きくてそこまで考えられていなかったけれど、状況的には失恋したのと同じだ。
叶う可能性なんて元から微塵もなかったし、叶えようとも思っていなかったけれど、いざその現実を突き付けられるとくるものはある。
溜め息が漏れて、ついそれを吐露してしまった。
「…キスして、告白してしまいました」
「えっ?」
「え」
二人は声を揃えて、目を丸くする。
「それは…大胆なことをしたね」
兄上は驚いたように言った。まさか本当に振られたとは思っていなかったのだろう。その隣に立っているフレジアさんは、申し訳なさそうに眉を下げた。
「わたしは席を外した方が良いでしょうか…?」
「あ、いや…全然大丈夫です…というか、きっとユリアもめちゃくちゃ困ってると思うんで、気遣ってもらえたらすごく助かります……」
言いながら、情けない気持ちになってくる。明日からどうユリアと接するべきか、考えるだけで頭が痛い。
「…でも、本題はそれじゃなくて」
懺悔はまた後で聞いてもらうとして、今はそれよりも早く解決しなければならないことがある。
「ユリアに、氾濫した分の魔力を全て移譲してしまったんです」
「…どういうこと?」
兄上の目が、すっと鋭くなった。
何が起きたのか、一部始終を説明する。兄上は、ずっと深刻な顔をして聞いていた。
「…なるほど。それで、一旦ユリアは無事なんだね」
「はい。本人は、特に問題ないと言っているんですが…」
兄上はしばらく何か考え込むように黙り、それから口を開いた。
「起きた現象としては、ユリアに魔力を渡しても蓄えることは出来ないから、過剰分は外に吐き出されて消えた…ということかな」
「おそらく、そうかと」
氾濫による中毒症状は、許容量を超えた魔力を保持してしまうことにより発症する。しかし、魔法の使えないユリアはそもそも魔力を持っておくことが出来ないので、すぐに渡された魔力を手放せたのではないかと推測していた。
「けれど、普通はそんな量の魔力を受け取ったら確実に中毒症状が出る。ユリアはたまたま耐性が強かったのかもしれないけれど…刻印の時はどれくらい時間をかけた?」
魔力の移譲という意味では、刻印も同じことをしていると言えた。違いは、渡した魔力を無理やり身体に留めさせようとする力が働いているかどうか。
その時の記憶を思い返す。早く終わらせなくてはと思いながらやったけれど、それでも、確か。
「…五分くらい、ですかね」
「五分…?!」
兄上からの予想していなかった反応に、え、とこちらまで驚いてしまう。
「わたしたちは三十分くらいでしたよね…?」
「えっ、三十分?!」
反射的に同じような反応を返してしまった。五分でも辛かったのに、あの時間を、そんなに長く。
「ランゼル…ゆっくりやるようにって、伝えなかったかい?」
兄上に溜め息を吐かれる。
「い、いや、最初はちゃんと言われた通りやったんですが…ユリアが平気そうだったのでつい…」
中毒症状を起こさないよう、少しずつ魔力を入れるように、と言われていた。けれど、あまりに抵抗感なく入っていくものだから、気付けばそういう配慮もなくなっていて————いや、これは色々な意味で堪えられなかった俺が確実に悪い。
「ともあれ、それが答えだろうね。ユリアは、体質的に魔力への耐性がとても高いんだろう」
しかし、本当に何も起きていないかは見ておいた方がいいという話になり、兄上と共にユリアの部屋へ向かうことにした。
「…そうだ、ランゼル」
部屋を出ようというところで、兄上が振り返った。
「このことは、研究院には知られないように気を付けて」
「…はい、もちろん」
兄上は、研究院に対して強い警戒心を持っていた。
研究院とは、悪魔や魔力、魔法についての研究を行っている組織だ。その内容は極秘とされているため、俺たち王族ですら簡単には出入り出来ない場所となっている。
海についてもあまり情報を提供しない方がいいと言われていたし、兄上の魔力感知については、彼らに情報を握られたくないからという理由でそもそも公表すらしていない。
なぜそこまで研究院を信頼していないのか明確な理由は知らないけれど、確かにあの組織は風通しが悪く、不透明な部分が多い。それに、兄上が認めていないものを認める理由も無いので、俺は言われた通り、研究院とはなるべく距離を置くようにしていた。
「じゃあ、行こうか」
「すみません、お願いします」
フレジアさんに見送られ、二人でユリアの部屋へ向かう。
部屋の前で立ち止まり、兄上は気配を探るように目を閉じた。
「…ここでいいんですか」
「一連のことを、私やフレジアに知られているのは嫌かもしれないからね」
それは、そうかもしれない。自分の話として二人に包み隠さず打ち明けてしまったけれど、ユリア側の気持ちは考えられていなかったと反省する。
結局、兄上に見てもらっても問題はなさそうだった。中毒症状もなければ、渡した魔力が悪さしている様子もなかったので、一旦は見守ろうということになった。
ありがとうございました、と頭を下げる。兄上は無事で良かったと微笑んで、それから小さな声で問うた。
「それで…本当に振られたの?」
俺は肩をすくめた。
「ちゃんと返事をしてもらったわけではないですが…まぁ、振られたも同然かと」
恋が叶わなかったこと自体は、正直そこまでショックじゃない。
ただ、関係が崩れてしまうのは怖かった。
そもそも嫌われているし、何が変わるわけでもないかもしれない。でも、幼い頃の関係値のおかげで、多少は心を許してくれていた部分もあったと思うから————それすらも失われるのかもしれないと思うと、とても恐ろしい。
「二人で、あらためてちゃんと話せるといいね」
そうですね、と返したけれど、今はとてもそんな明るい未来は見えなかった。
* * *
あまりよく眠れないまま朝になってしまった。
今日の公務が早く終わるものであるよう願いながら、支度をして廊下に出る。
そこには、すでにユリアが待っていて。
「あ…おはよう、ユリア」
「…おはよう」
どちらともなく歩き出す。
以降、沈黙が続いた。
気まずいし、申し訳ないし、少し悲しくもあるけれど————でも、これで良かったのかもしれないと、いや、本来こうあるべきなのではないかとも、思ってしまった。
ユリアに対する恋情を隠して、友人の顔をしながらそばにいる方が不誠実だ。ユリアからすれば、それを知ったところですぐに騎士をやめられるわけでも、距離を置けるわけでもないのだから、黙っていて欲しかったかもしれないけれど、でも、俺の気持ちを知って心の距離が離れるのなら、そうあるべきだ。
そういう気があるのならやらないこと————例えば、一緒のベッドで眠るとか、避けたいこともあるだろうから。
「…」
「…」
頭では納得していても、感情はどうしたって沈んでしまうけれど。
* * *
数日が経った。
ユリアとの距離は変わらずで、共に公務に出る時以外はまともに口も聞いていない。避けられているということはなく、話しかければ普通に返事はくれるが、目は一度も合わなかった。
当然、告白の件を話題に出したこともない。ユリアが何を思っているのか、俺の気持ちをどう受け止めたのか、尋ねることも出来ないまま日々が過ぎて行った。
視線の合わないユリアと言葉を交わす度に、森で初めて一緒に悪魔狩りをした日の記憶が何度も脳裏に蘇った。魔剣を強化した時に見せてくれた、数年ぶりのユリアの笑顔が。
あの時は、本当に嬉しかった。
もしかしたら、またいつか、前のような関係に戻れるんじゃないかって、そんな淡い期待を抱いた。
結局、俺の勝手な思いがある以上、そんなのは叶わないと決まっていたようなものだ。それでも、あの笑顔を忘れられなかった。
昼下がりの公務室。書類の山を前にして、机に突っ伏した。
「だるすぎる…」
ずっと悪魔狩りが続いていたが、今日は初めて書類系の仕事だった。そのため、俺は一人で公務室へ向かい、渡された仕事に取り組んでいたのだが————これが想像より遥かに面倒なもので、開始早々に投げ出したくなっていた。
「ユリアには手伝ってもらわないの?」
背後から柔らかな声がして、慌てて起き上がる。振り返って、声を掛けてくれたロゼヴィアさんに歯切れ悪く答えた。
「いや…まぁ、ひとりで出来るかなと思って…はは」
ロゼヴィアさんと兄上は、当然のようにガーバラさんとフレジアさんを連れて来ていた。公務室にはパーテーションで区切られた四人分のブースがあり、そこでそれぞれの仕事をしているのだけれど、二人のスペースからは時折朗らかな声が聞こえて来る。
「結構量あって大変じゃない? このペースでは一日かかってしまうよ」
ですよね、と曖昧に笑って返す。
悪魔狩りと違って、これは花騎士の仕事ではない。ユリアも頼めば手伝ってくれるとは思うけれど、今はなるべく俺と距離を置きたいだろうと思うととてもお願いなんて出来なかった。
分からないことがあったら聞いてね、と残して、ロゼヴィアさんは自身の机に戻っていく。これでも、俺は一年目ということで配慮してもらっていて、一番難易度が低く量も少ない。どうにか定刻までに終わらせなければと、自分を奮い立たせて机に齧り付いた。
しかし、そんな短時間で器用に出来るようになるわけはなく。
結局、定刻の一時間前になっても終わらない俺を見兼ねて、先に終わった兄上とロゼヴィアさんが手伝ってくれた。
「やっと終わった…」
大きく伸びをする。
「お疲れ様、ランゼル」
「終わってよかったね」
優しい兄たちに囲まれながら頭を下げていると、ガーバラさんが紅茶を持ってきてくれる。何から何まで申し訳なく、次回からはユリアを呼ばざるを得ないかもしれないと、心の中で溜め息を吐いた。
席を立って辺りを見渡すと、フレジアさんは部屋の掃除をしていた。あともう一人はどうしたのだろう。
「リーフィラなら、さっき帰ったよ」
ロゼヴィアさんが、俺の疑問を察して教えてくれた。
「あ…そうなんですね」
用があったわけではないけれど、一言も話せずに終わってしまった。というか、まだ一度もまともに話をしたことがない。
「リーフィラ、あまり僕たちと仲良くはしてくれなさそうなんだよね…どうしたものかな」
溜め息を吐いたロゼヴィアさんに、兄上は軽い調子で返した。
「まぁ、いいんじゃないかい? 一応、私たちはライバルなわけだしね」
「…!」
ライバル————そうか、確かにそうだ。
舞台に上がりながらも、王座につくことは全く考えていなかったから、その意識が完全に抜け落ちていた。
しかし、そういう意味だと————リーフィラの能力値が未知数ではありつつ————ほぼこの二人の王座争奪戦と言っても過言ではない。
「それもそうか。一定仕方がないかもしれないね」
ロゼヴィアさんが肩をすくめる。兄上も、それに対してやわからく頷きを返した。
二人の雰囲気は、穏やかなまま変わらない。誰よりも本人たちが一番状況を分かっているだろうに、敵対とまでは行かずとも、王座の話が出ても緊張感すら無かった。
兄上の王座への執着を、俺は何度も目にしている。ロゼヴィアさんに対してそれを全く見せないのは、単に学生時代からの親しい友人だからなのだろうか。あまりしっくりは来なくて、俺はひとり首を傾げた。
「さて、じゃあお開きにしようか」
兄上の言葉に、もう一度礼を言って頭を下げる。気にすることないと慰められつつ、皆で部屋を出て、そこで解散となった。
「はぁー…」
次からは、ユリアにお願いしなくてはならないのか。
気が進まない。どうしたものかと考えながら、自室に向かって廊下を歩いていると、ふと窓の外にその姿を見つけた。
「あ…ユリアだ…」
ネモと一緒だった。
二人で修練でもしていたのだろうか。しかし、よく見るとただ仲良く話をしているのではなく何やら取り込み中のようで、目が離せなくなる。
「…」
ネモが、ユリアに一歩詰め寄った。ネモの表情は見えなくなったが、代わりにユリアの顔がよく見えるようになる。
ユリアが、ネモを見上げて何かを口にした。
すると————ネモが、ユリアの腕を掴んで自分の方へ引き寄せて。
「っ…」
思わず足を踏み出してしまう。
ネモはユリアの耳元へ唇を寄せた。何かを囁いたのだろう、ユリアがはっとした顔をする。
そして、ユリアは掴まれた腕を力なく振り解いた。
ネモはひらひらと両手を振る。まるで、冗談だとでも言うように。再び見えたその顔は笑っていた。ユリアはむっとした顔でそんなネモを見上げているけれど、そこに嫌悪は見えなかった。
「…なに、今の」
気に入らない。
もやもやとしたものが心に広がる。不相応な嫉妬なのは分かっているけれど、不快感はどうしようもなかった。
部屋に戻ってからも、ずっとさっき見た光景が頭から離れず、何も手につかなかった。
やがて、ユリアも隣の部屋に戻って来る。
「…」
何を話していたのか聞きたい。告白の件がなかったら聞いていただろうけれど、今はプライベートなことを聞くなんてとても出来なかった。心の曇りを吐き出すように、深く溜め息を吐いた時。
コンコン、と小さくドアがノックされた。
「!」
ユリアの部屋と繋がっているドアだ。
一気に高まる緊張感。生唾を飲んでその方へ向かう。
「…ランゼル」
「な、なに?」
「ちょっと、聞きたいことがあって」
ドアを開けると、そこには気まずそうな顔をしたユリアがいた。
自室に招き入れていいものかと悩んでいたのだけれど、ユリアは迷うことなく部屋に入ってくる。
「えっと…聞きたいことって?」
相変わらず目は合わない。ユリアは視線を泳がせたまま、ぽつりと呟くように言った。
「ネモのこと、何か知らないかなと思って…」
「は…?」
ネモ————その名前に、どくんと心臓が鳴る。
「な、なんで?」
声が上擦る。
「なんでって…気になるから」
気になるってどういう意味!?
叫びたくなる気持ちをぐっととこらえる。さっき見たことと何も関係がないとは思えなかった。
あの時、ネモになんて言われたの。
なんであいつのことが気になるの。
聞きたいけど、聞けなくて、ただ歯を食いしばる。息を吸って————努めて冷静に、口を開いた。
「…ごめん、あの双子とは小さい頃に会って以来なんだ」
本当のことだった。俺も、彼らについてはほとんど何も知らない。
「そう…分かった」
俺の返事にユリアは明らかに気を落としていて、反射的に助け舟を出してしまう。
「でも、兄上なら何か知ってるかも。俺も聞いてみるよ」
あの日以来、初めてユリアの方から声を掛けてくれた。ユリアにとって、それだけ聞きたいことだったのだろうと思うと、力になってやりたくなる。
「…ありがとう」
ユリアは呟くように言うと、じゃあ、と自室へ戻って行った。
パタンとドアが閉まって、今日何度目かの溜め息が漏れる。
とりあえず、兄上に聞いてみよう。これはユリアのためだ。
今もなお揺らめいている嫉妬の炎を押さえ込んで、自分に出来ることをしようとさっそく部屋を出た。
それから、また数日が過ぎた。
ユリアとは必要最低限の会話しかしないし、目も合わないし、特に何も変わらない。
双子のことは、兄上もあまり知らなかった。昔は仲が良かったと思うが、いつからかその仲は険悪なものになり、今ではほとんど口も聞かないらしい、ということだけ話してくれたので、ユリアにもそれを伝えた。ユリアは特に驚くこともなかったので、この程度のことはすでに知っていたのかもしれない。
何せ、あの日からネモと二人きりで居る姿を何度も目にしている。フレジアさんとガーバラさんは常に主人についているから、必然的に残り二人が一緒に居ることになるのかもしれないけれど、それにしたってよく見る気がする。今や、俺たちの中では誰よりもユリアが一番ネモのことを知っているんじゃないだろうか。
二人で居るのを見かける度に、胸の中がちりちりと焼けるように痛んだ。けれど、何か言えるような立場ではないし、俺は静観することしか出来ない。
「はぁー……」
最近、一人になると溜め息ばかりだ。
今日は、午後からユリアと二人で悪魔狩りに行かなくてはならない。二人きりの公務も増え、戦いもかなり安定してきたおかげでほとんど会話をせずに狩りも全う出来てしまう。いや、それ自体は決して悪いことではないが。
時計を確認する。まだ少し集合には早いけれど、することもないので部屋を出た。
その途中で、声を掛けられる。
「…ねぇ」
振り返ると、そこにはあまりに意外な人物がいて。
「ちょっといいかな」
「え、俺?」
思わず問い返してしまう。
声を掛けてきたのは、リーフィラだった。
「うん、君」
リーフィラは淡々と頷く。
ガーバラさんほどではないが、兄上よりも背が高くて威圧感がある。ハーフアップの髪型のせいか、無表情のせいか、中性的で底知れない雰囲気があった。
「君のところの子が、最近僕らのことを嗅ぎ回っていて」
「!」
君のところの子————ユリアのことか。
「やめさせてくれない?」
冷たい灰色の瞳に見下ろされる。
「…嗅ぎ回ってるって、どういうこと」
リーフィラの声は一定で、一切揺らがなかった。
「そのままの意味。僕らの事情にこれ以上首を突っ込まないよう、ちゃんと手綱を握ってて」
「手綱って…」
顔を顰めてしまう。何とも嫌な言い方だ。主人と従者という意味では、花騎士は管理下あると言えるのかもしれないけれど。仲が悪いとは言え、仮にも双子の兄を花騎士にしている身でよくそんな物言いが出来たものだと思う。
「これは警告だから」
リーフィラはそれだけ言い残すと、踵を返して去って行った。その背中が見えなくなってから悪態をつく。
「感じ悪すぎ…」
いけ好かないヤツだった。ネモのことも大して知らないが、かなりタイプは違いそうだ。
しかし————警告か。
一体ユリアはあいつらの何を探っているのだろう。わざわざ俺に牽制しに来るということは、すでにユリアはかなり干渉してしまっているのかもしれない。
「…」
ちゃんと、ユリアと話をしなければ。あの様子では、これ以上あの双子について探りを入れるのは危険だ。
今日の公務が終わったら話そうと決め、集合場所へ向かった。
公務自体はいつも通り滞りなく進んだ。この戦い方にしようと決めてから、防御の魔法について徹底的に調べ、実践で使えそうなものを取り入れたり、兄上に相談して魔法を最適化したりと、日々最適解を探している。
攻撃のタイミングを計らずとも、都度適切な形で魔法が発動するようにすることで、守りもかなり安定した。刻印のおかげでユリアの位置は常に正確に把握出来るし、集中力さえ切らさなければ基本的には危なげなく狩りをすることが出来ている。
しかしそれでも、この緊張感にはやはり慣れない。
悪魔からの攻撃がユリアに直撃する度、大丈夫だと分かっていても肝が冷えた。ユリアに全ての危険を背負わせる戦い方で本当にいいのだろうかと、迷いが生まれる。
危ない目には遭ってほしくない。ひとり戦いに身を投じさせるのも本当は嫌だ。でも、速やかに安定して狩りを終えることが出来ている現状を踏まえると、これが自分たちにとっての正解であることは明らかだった。
これは、ユリアの努力の上に成り立った戦法だ。俺のすべきことは、感情的にその身を案じることなんかではなく、ユリアの身の安全を確保し、その剣で一体でも多くの悪魔を狩ることが出来るよう魔法を磨くことだ。
「————ッ!」
攻撃を斬り返す鋭いユリアの剣。その剣技は、何度見ても目を見張るほどに美しかった。
最後の一体がその剣で両断され、辺りは静けさを取り戻す。
「…あらかた、狩り終わったかな」
帰ろうか、と声を掛けると、ユリアはただこくりと頷いた。
会話の一つも無いまま王宮に帰還する。いつもはここで別れて終わりだが————私室に入る前に、意を決して話を切り出した。
「後で少し話がしたいんだけど、いい?」
「…分かった」
ユリアは視線を逸らしたまま頷いた。
「どっちの部屋がいい?」
「え…どっちでもいい、けど」
なんでそんなことを聞いてくるんだという顔をしている。こういう場合、どちらの部屋の方がマシなのか分からず、じゃあ俺の部屋に来てほしいと伝えれば、再び分かったと返された。
そして三十分ほど経った後、ユリアが部屋を訪ねてくる。俺は結構緊張していたのだけれど、ユリアは平然としていた。
テーブルに向き合うように座り、単刀直入に話を切り出す。
「双子のこと、なんだけど…今日、リーフィラからユリアのことを言われて」
え、とユリアは目を丸くした。
「リーフィラ殿下から…?」
ユリアにとっても意外なのか。ますます訳がわからなくなる。
「これ以上探るな、みたいなことを言われたんだけど…ユリアは、何かあいつらについて調べたりしてるの?」
ユリアは小さく息を呑んだ。それから、ぎこちなく口を開く。
「調べる…というか…二人の関係が、気になって」
ネモとリーフィラの関係。不仲だということだけれど、そのあたりの話だろうか。
「詳しく、聞かせてくれないかな」
ユリアは逡巡するように視線を泳がせたものの、最終的には頷いてくれた。
「リーフィラ殿下側のことは分からないんだけど、ネモは、ずっとリーフィラ殿下のことを嫌悪していて————」
その憎悪にも近い激情は、傍から見ていても少し異様なほどだった。ネモ自身は気さくで人思いで、誰かを嫌うような性格ではないのに、リーフィラの話が出ると、急に人が変わったようになってしまう。騎士学校時代からその姿を見ていて、違和感を抱いていたと言う。
「それに…そんなリーフィラ殿下への感情も一定じゃなくて」
「一定じゃない?」
「基本的には、その話になるだけで、悪態をついて険悪なムードになるんだけど…たまに、そこまで過激じゃない時もあるんだ」
ユリアは、ぽつぽつと語る。
ただ興味がないという態度を取る時もあれば、軽くあしらうだけの時もあり、その嫌悪の度合いは日によって変わるらしい。
「それで、この間————ランゼルに、ネモのこと何か知らないかって聞いた日に」
二人で居るところを初めて見かけたあの日か。
ふつふつと湧き上がろうとする複雑な感情を振り払って、ユリアの話に耳を傾ける。
「ネモが…通りかかったリーフィラ殿下を見て、笑ったんだ」
その場面を思い出すように遠くを見つめるユリアも、笑っていた。
「その目が、すごく優しくて」
それが、ユリアの目にどれだけドラマチックに映ったのかが、分かってしまう。
「思わず、リーフィラ殿下のことなんで嫌いなのって、聞いちゃって」
「…そしたら?」
促せば、ユリアは笑みを消して肩を落とした。
「あんまり、まともに取り合ってくれなかった。適当に流されて、でも、どうしても気になって食い下がったら、僕に————」
言いかけて、はっとしたように口を噤む。
「…」
これは、ネモに腕を掴まれて何か囁かれていた時の話だろうか。
「…とにかく、理由は結局聞けなかったんだけど」
ユリアは強引に話を進めた。
「その翌日は、いつものネモに戻ってたんだ」
「え、いつものって」
「リーフィラ殿下の名前を聞いただけで、舌打ちするようなネモ」
確かに、そこまで人が変わったようになるのは普通ではないかもしれない。何かあるのではないかと訝しむ気持ちも分かる。
「そんなことがあってから、二人の関係が気になって…探るって言っても、別に大したことは出来てないんだけど」
でも、リーフィラがわざわざ俺に警告してくるほどだから、ユリアからすれば大したことはなくても、あいつにとってはかなり核心に迫られている状況なのかもしれない。
「具体的に何してるの?」
「本当に何もしてない、ただネモと話してるだけ…リーフィラ殿下とは、話したこともない」
ユリアも困惑しているようだった。
話しているだけで、そこまで警戒されたのか。あまり納得はいかないけれど、あの双子の間にどんな真実があるのかも分からない今、どうしてリーフィラが牽制して来たのかを予測するのも難しい。
「色々気になるけど…とりあえず、ユリアはこれ以上首を突っ込まないでほしい」
「…」
ユリアは、すんなりとは頷いてくれなかった。
「俺も、一度もリーフィラと話なんてしたことなかったんだ。でも、俺にユリアを止めるよう言ってきた…それだけ、何かあっちにはバレたくない何かがあるんだと思う」
この警告を無視したからと言って、リーフィラがユリアに直接危害を加えるとは、さすがに思わないけれど。でも、何かあってからでは遅い。
じっとユリアを見つめていると、やがて小さな声で「分かった」と言ってくれた。
ひとまずほっとする。話したかったことはそれだけだと伝えると、ユリアは速やかに自分の部屋へ戻って行った。
「…ふぅ」
久々にまともにユリアと話したけれど、思っていたより普通に話せた。まぁ、ちゃんと議題があったからかもしれない。
ソファに腰掛け、ユリアの話を思い出す。
あの双子に何か秘密があるのは確かだし、側で様子のおかしいネモを見ていたら、事情が気になるのは分かる。
しかし、ユリアがあんなにもネモのことを気にしているのは、少し不思議なような気がした。
ここに来て最初の日、ネモがユリアに話しかけて来た時、仲が良いのかと尋ねたけれど、特別そういうわけではないという反応だった。ただの知り合いなのに————ユリアの言葉通りそこまで深い仲ではないと思いたいという都合も正直あるけれど————ここまで気に掛けているのは、何か別の理由があるのだろうか。
それに、結局あの時ネモに何を言われたのかは分からず仕舞いだ。
「…モヤモヤする……」
ベッドに倒れ込む。考えても仕方がない。分かっているけれど思考は巡る。
ぼんやりと天蓋を見つめながら、延々と答えの出ない思考を繰り返した。
公務を行う日々が続いた。書類仕事の日もユリアにお願いして付き合ってもらうようになり、またもほとんどの時間をユリアと過ごす生活になった。
一緒にいる時間の中で、少しずつ以前の距離感に戻っていった。告白の件は、濁したまま。
ユリアにとっては、こうやって話題を避けて過ごすのが一番楽だろうから、俺から掘り返したりするつもりはない。でも、ユリアは本当にそれでいいのだろかとは思う。
俺に何も言わないだけで、本人の中では折り合いがついているのならいい。でももし、ただ考えないようにしているだけなのなら、それはユリアにとってあまり良くない状態に思えてならなかった。
かと言って、俺がまたあの話を持ち出すわけにもいかない。結局、互いにその話題を避けながら一緒に居るしかなかった。
王宮へ帰る車の中。隣に座るユリアの横顔を見つめる。
「なに」
ちらりと目線をよこされ、慌てて首を振って前を向いた。
今日の狩りも無事に終わった。途中、少し疲れが出たのか、ぼんやりしてしまうことがあったので、今日はちゃんと休もうと心に決める。ユリアとの悪魔狩りにおいて、ミスは絶対に許されない。
間もなくして、車は王宮に到着した。
そして、二人で部屋に戻ろうという時。
「…花の匂いがする」
「え?」
呟いたユリアは、身体を寄せて————あろうことか、俺の首元に顔を近づけ、すん、と匂いを嗅いだ。
「ちょっ…!?」
ぎょっとして距離を置く。汗もかいたし、何より近い。
「また、あれ?」
「え、あれって…」
何を言われているのか、唐突に理解した。
「っ…」
頭がくらりとする。
嘘だ。まさか。
「…部屋、帰ろう」
ユリアに手を取られる。
引かれるまま、廊下を早足に進んだ。一度症状を認識してしまうと、どんどんダメになっていく。
身体が重く、気怠い。頭が鈍く痛み始める。いつも、そのうち吐き気がしてきて、何も食べられなくなって————ベッドから起き上がることも出来ず、数日うなされながら寝込むのだ。
でも。
「…」
手を引いてくれる温もりに意識を集中させると、少しだけ、身体が楽になる。
このままユリアに側に居てほしい。縋ってしまいたい。
でもダメだ、絶対にまた同じことをしてしまう。
傷つけたくない。苦しい思いも、不快な思いも、我慢も、もうさせたくない。
部屋に着いたところで、その腕を振り払った。
そしてユリアの顔を見ることもなく、自分の部屋に入ってドアを閉めようとして。
「っ、ちょっと」
ガッと勢いよくドアを掴まれる。
ユリアと目が合った。その透き通った薄紫色の瞳は、真っ直ぐに俺を見ていた。
「…なんで」
言葉が、勝手にこぼれ落ちる。
「俺のこと、嫌いなんじゃないの…」
ユリアのことが分からない。嫌いなら、放っておけばいいのに。そうされるだけのことを、俺はユリアにした。助けてくれなくたって、薄情だなんて思わない。
「無理、しなくていい、から」
責任感の強さがそうさせているのだろうか。従者だから、花騎士だから、俺のために尽くさなきゃいけないなんてことはないのだと、伝えなければ————。
「…無理なんか、してない。僕を使えばいいって、言っただろ」
ユリアは声を震わせながら言った。
弾き結ばれた唇。吊り上がった眉毛。その瞳には、強い光が灯っていて。
「…」
昔からこうだった。強情で、一度決めたら頑として譲らない。
ああ、どんどん具合が悪くなっていく。身体にまとわりつく熱の煩わしさもあって、苛々が募る。
その手を掴んで、引き寄せた。
「また、同じことするよ」
これが最後の警告だ。
すでに思考はほとんど熱に侵されていて、どうにか理性を繋ぎ止めているような状態だった。
瞳が一瞬揺らぐ。でも、答えは変わらなかった。
ユリアの唇から、いいよ、と溢された瞬間————全部、どうでも良くなってしまった。
掴んだ腕を力任せに引いて、ユリアを部屋に入れる。閉めたドアにその身体を押し付けて、キスをした。
「っ…」
小さく飲み込んだ息ごと喰らうように、開いた唇に舌を差し込んだ。
多幸感に、頭がじんと痺れる。欲のまま、その口内を荒らした。
苦しいものを吐き出すように無理やり魔力を流し込んで、その身体を支配する。まるで自分のものになったような感覚に、仄暗い感情が満たされていく。
力が抜けて、ユリアはずるずるとその場にしゃがみ込んだ。それを追いかけて、抵抗出来ない身体を押さえつけて、キスをして————。
何、してるんだろう。
もうしないって、誓ったはずなのに。
「っ、は……」
唇を離す。ユリアはぐったりとしていて、すでに意識は無かった。
恐ろしいほどに冴え渡った思考。熱は跡形もなく、身体は冷え切っていた。
ああ、また。
また、やってしまった。
「…っ」
唇を噛む。
どうして振り払えなかったんだ。こうなると分かっていたのに。あの日、あんなに後悔したのに。
結局、これが俺の愛情の本性なのだろう。
薄々気付いていて、でも認められなかった。俺のこの感情は、ユリアを傷つけるものではないと思い込もうとしていたが、もう無理だ。もう俺は、この感情を肯定出来ない。
震える手を伸ばす。壁に寄りかかって気を失っているユリアをゆっくり抱き上げ、隣の部屋まで慎重に運んだ。重いけれど、軽い身体だ。
ベッドの上にそっと下ろして、ブランケットをかける。
「…ユリア」
枕の横に手をつき、その顔を覗き込んだ。
無防備で、あどけなくて、可愛くて————愛おしさで、胸が張り裂けそうになる。
どうしたって、好きだった。
ユリアに幸せになってほしい、そのためならこの手を離せるだなんて、綺麗事を唱えてきたけれど、いい加減この感情がそんな美しいものではないことを認めなければならない。
その無垢な寝顔を見ているだけで、際限なく湧き上がる自分本意な欲。
側に置いておきたい。自分だけを見てほしい。自分のものにしたい。全てを知りたい。笑いかけてほしいし、触れることを許されたいし、たった一人の特別になりたい————。
綺麗なものだと信じたかった愛情が、黒く濁って、淀んでいく。
「…ごめん、ユリア」
大切に出来なくて、ごめん。
ユリアにとって、一番の危険因子は俺だ。こんな感情を抱いている奴に、その身体の自由を奪うことの出来る刻印をつけられているのだから。
支配権をすでに握っているということが、とても恐ろしかった。そして、ユリアがそれを当たり前のこととして受け入れていることも。
思い出すのは、自分を使えばいいと言った時の、強い光を灯した瞳だった。ユリアは、その身を俺に捧げることを厭わない。従者である以上、その助けになるために自らを差し出すのは当然だと思っているのだろう。
「ッ…」
拳を握って、歯を食い縛る。
どうすればいい。どうすれば、ユリアを傷つけずに済むのだろう————。
なんて。
本当は、分かってるんだ。
解決方法は、最初から一つしかない。
「…」
ベッドから立ち上がり、ふらつく足で自室に戻る。ドアを閉じ、そこに寄りかかるようにして床に座り込んだ。
全てを解決する唯一の方法。それは、ユリアとの縁を切ること。
俺が王座争いから降りて、花騎士を辞めさせる。色々な力が働いているから簡単にはいかないだろうが、本気でやろうと思えばやりようはいくらでもある。
もう、それしかないように思えた。騎士学校でのことがあって、ユリアが現状維持を望んでいることは分かっているけれど、そもそもそれだって異常な心理状態ではある。
俺が、終わらせなければ。ユリアは、自分が傷つけられていることに気付けないのだから。
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