第47話 交流会2日目

交流会2日目の朝。


「お前らァ! 昨夜はよく眠れたかァ!? いつまでも寝ぼけているんじゃないぞ!」


校庭では早朝にも関わらず、我修院 遥のその赤髪のように燃え滾る声が響く。並んだ生徒たちは冷水で顔を洗うよりも強烈に眠気を払拭させられる。


「さて!1日目は式神相手の訓練が主だったが、2日目はお前たち生徒同士での対戦になる!心してかかれよ? それでは詳しい説明をしていく!」


天陽学園、天陽院生徒一同はより一層真剣に遥の言葉に耳を傾ける。


「2日目は生徒全員によるバトルロワイヤルのみ! 結界に囲まれたエリア内で、設けられた制限時間まで戦い、順位が高い者程高い評価を得る!」


ルールは至ってシンプルだ。再起不能の傷を負わせる以外は何でもアリ。全員倒しても、制限時間まで隠れていても良い。


兎にも角にも生存能力を試されるのだ。


(バトロワゲーのソロモードって感じだな)


響はたまに遊んでいたゲームと似ていた為理解が早かった。


「1日目の成績と合わせ、上位の生徒達で3日目の御前試合を行う! もちろんその時点で位階の昇進を認められる者もいるだろうな。だが御前試合で活躍すればその者の話は天陽十二家まで届くやもしれん!」

「「おお……!」」


生徒達の口から期待のどよめきが漏れる。


天陽十二家に見初められれば、姓与権により各家の武器庫や秘蔵の書庫や秘伝の術を知れるなど、様々な越権を許される事にもなるだろう。


皆より一層やる気に満ち溢れる。それは響も同様だった。


「さて、次は戦いの舞台について説明する。これを見るがいい」


遥は左側を指差す。そこには朝礼台の傍に置かれていた大きな板があり、映写機から地図が映された。


大まかに6つのエリアがある地図。中央の白いエリアを囲うように、時計回りで緑、赤、橙、黄、青と五色の着いたエリアがある。


「先ずは中央!この場所は大小様々な建物があるだけだ。だが中央なのでどのエリアにも行きやすいだろうな」


遥の声に合わせて地図が拡大され白い建物が並ぶ街並みを見せられる。


中央のこのエリアは周りを囲う5つのエリアのどれにも面しており、遥の言うように好きな場所に容易く足を運べる事が伺える。


「次は北にある緑のエリア。ここは森林エリアだ」


文字通り緑生い茂るエリアと分かる。


「次は火災エリアだ」


北東から東南にかけては燃え盛る建物が連なるエリア。


「その隣は土砂エリアだ」


東南から南は土砂や砂漠により石造りの建物が埋もれたエリア。


「そして鉱山エリア」


南から西南は金や銀、銅や鉄に加えて宝石の原石など、多数の鉱石が剥き出しのエリア。


「最後に水上エリア」


西南から北は海、川、湖、氷河など水辺が6割のエリア。


「もう諸君らが察している通り、五行のエリアとなっている」


五行は世界を形作る理。全ての物質にはそれぞれが五行の何れかに属している。よって陰陽術にある五行の関係は環境でも考慮すべき必要があるのだ。


特に今回はそれぞれ元素の濃度が高い状況が作られている。


「五行の関係は知っているな? 同じ元素が集まって強まる『比和ひわ』。これならば周囲の元素と自分の術が強まるだろう。周りの元素を糧に強まる『相生あいおい』ならば、エリアの元素を消費しながら自身の術が強まる。そして討ち滅ぼす『相剋そうこく』ならば、エリアを効率的に破壊する事もできるだろうな」


比和ひわ』で自分の術とエリアの相互の力を強化するか、『相生あいおい』でエリアの元素を糧に自分の術を強めるか、『相剋そうこく』で元素を破壊し相手の有利を消すか。


各々の実力、地形、五行と複雑に絡み合うこのバトルロワイヤル。


生き残る為にはそれらを利用する事も頭に入れなければならない。


「因みに中央は無元素エリアとなっている。結界を利用して建物を作っているからな」


無元素……要するにどの元素にも属さない状態。


陰陽術にも元素を扱わない無元素のものがあり、結界術や式神術、呪術や降霊術などがこれに当たる。


つまり中央はエリアから五行の影響を受けない場所という事だ。


(なるほど……まどろっこしい事を考慮しねぇなら中央がいいかもな〜)


響も説明を聞きながらどこで戦うか思考する。


「ああ、言い忘れていた。スタート地点は転送によりランダムだ。不利な場所に出る事もあるだろうから注意するんだな。以上! 準備が整うまで各々待機だ!」


(マジか……スタート早々にアドリブも試されるって訳か。おもしれぇ……!)


響は奮い立つ。

全ては位階を上げ、真実への足がかりとする為だ。


生徒達は時間までテントで作戦を練ったり武器の手入れをして時間を過ごす。


「今度は生徒同士でかぁ……」


緊張した面持ちで空は言葉を漏らす。


「そうだな。けど、空だって手合わせで近接も大分動けるようになってたし、術も言わずもがな強いから大丈夫だと思うぞ?」


響はプレッシャーをかけすぎない為あえて少し楽観的な言葉をかける。


「そ、そう? ありがと……でも怪我させすぎちゃったらどうしよう……!」

「そっちかい!」


しかし懸念は思ったよりも強者の目線だった。


「まあ、空程の陽力なら本気でやり過ぎたらやべぇかも……つっても陽力のコントロールも上手くなったし大丈夫だろ」

「そうだね。僕も見てきたから最初と今じゃ全然違うって思うよ」

「うんうん! あたしもうちの子(式神)達が身を持って知ってるし大丈夫大丈夫!」


口々に空に声をかける響達。一番近くで空の成長を見守って来た信頼がある。


「そう、だね! うん、ありがとう! 怪我させすぎないように、でも全力で挑むよ! 」

「おう、お手柔らかにな。俺も空達も今回はライバル同士だ。負けねぇぞ?」

「もちろん」

「がんばろーね!」


それぞれ覚悟を伝える4人。それを文香と臣也は微笑ましそうに眺める。


「俺も後輩ちゃん達にいいとこ見せねぇとな〜。って事で文香、会ったら手加減してくれ!」

「寧ろ全力でやるわ。やり過ぎても治せるし」

「えぇ……」


おちゃらける臣也に辛辣な文香。いつも通りのやり取りをしつつその心は競い合う事へとしっかり向いていた。

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