第28話 DLCイベント

「やぁ、こんにちは」


【螺旋の地下洞窟】の最下層に俺たちは辿り着いた。辿り着いた場所には【カツタマ博士】が居た、



おおー、懐かしい。ゲームの時なら色々教えてくれたり、エレモンの図鑑を見せたり、博士の中でもメインな感じだった。



メガネをかけている坊主の男性。40歳を超えているんだとか。



しかし、若々しい感じでエネルギッシュな印象を受ける。






「この最深部に人が来るとは珍しいね。なかなか来れないテイマーが多いからさ」

「あ、久しぶりー。【カツタマ博士】」

「ら、【ラリラ博士】っ!? い、一体どうして!? 行方不明だったんじゃ」

「なんとかなったんだぁー。今は学会とかどうでも良いから彼と生活してるの」

「そうだったのか。幸せそうで良かった。学会に居たときは色々庇えなくてすまなかったね」

「いいですよー、今の方が楽しいし」




 そうか、一応は博士同士だから知り合いなのか。カツタマ博士は俺を見て、ちょっと気になるようで話しかけてきた。




「えと、名前を聞いても良いかな?」

「あ、い、イヴです」




 一応、偽名でいいか



「そうかい、僕はカツタマ! よろしくね! 君の武者マル、よく育てられているね、筋肉質か絶妙だ。今度、僕の家に来ない? チョコとかあるよ」

「え、えと、遠慮します」




 チョコで釣ろうとしてるよ。俺の武者マルがそんな安値で買われるわけがないだろう!!! いい加減にしろ!!





「そう言えば、ラリラ博士は【テラゴラム】や【ウミノゾア】が研究対象だったね。この壁画は気になるんじゃないかい?」

「うー、それなら最近もっと気になる研究対象を見つけたので。ねぇー?」

「おや、彼がかい?」

「この子は凄いですよー。よしよし」




 なぜ、俺の頭を撫でてくるのか。ラリラ博士はこうやって頭を撫でることで情報を掴んでいるのだろうか。



「彼が凄いのか。イヴ君、今度僕の家に来ないかい? クッキーがあるよ」




 だから、クッキーじゃ釣られないって。子供じゃないんだから。一応は10歳だけど!!




「さて、折角だし授業でもしようか。この壁画は見たことあるかい?」




 最下層には壁一面に大きな壁画が描かれている。テラゴラムとウミノゾアが壁画な感じで大きく描かれている。



 テラゴラムは恐竜みたいなフォルムだ。ウミノゾアは巨大なアンモナイトのような形に近い。


 二体が激しく争っているかのような壁画と、その二体の上に大きな星が描かれている。




「カツタマ博士ー。この子、僕達よりその辺の事情には詳しいから説明はいらないと思うよー」

「え? そうなのかい?」

「ねー?」




 だから、なぜ頭を撫でる。





「あ、えと、その、それなりには……」

「へぇー、ならクイズを出そう。テラゴラムの系統は?」

「ち、地系と喪失系……」

「ほう、詳しいね。でも、喪失系は未発見だからね。地系だけとする説もある。それじゃあテラゴラムの生息していたとされる場所は分かるかい?」

「ち、地ノ国。その【大地の監獄】、で、です」

「……ほぉ、なるほど。確かにそうと描かれている見聞があるのも事実。なるほど、これは確かに詳しいようだ。もし良かったらこんど僕の家に来ないかい? ケーキがあるよ」

「え、遠慮します」




 だから、ケーキとかじゃ釣られないって




「ははは、どうだい! この子は凄いだろ! 今一番の研究対象さ! それに見た目も可愛いから弟みたいなもんだ!」

「ははは、ラリラ博士が気にいるなんて凄いね君は。いずれ、また会いたいものだ」

「ど、どうも」





 さて、そろそろ帰りたいな。壁画に描かれている内容も俺の知ってる通りだしさ。



「え、えと、俺、もう、帰ります」

「そうだね! 帰ろうか!」

「そうかい。それなら僕も帰ろうかな。大分、見られたし。一緒に行こう」




 あ、着いてくるんだ。この博士……



 再び来た道を戻っていくのが、特に目立った問題は無かった。そもそも最下層まで行くのに問題がないのだから、戻るのも簡単だ。





「君の武者マルは興味深い。途轍もなく強いポテンシャルを秘めてるね」

「ま、まぁね、へへ」

「ゴッドリーグにも出れそうだね」

「よ、余裕です、へへ」




 俺達からしたら余裕だよ!! 俺達は最強で、俺のエレモンは超絶強いからね。さて、地下洞窟から抜けて再び大地へと俺達は戻ってきた。





「うーん、日の光が眩しいね。久しぶりだ」




 カツタマ博士は随分と長くあの壁画を見てたいのだろう。でなければこんな言葉は出てこない。




 俺は日の光はそんなに久しぶりではないので特に感情が動くこともないけども……




「で、では、俺帰るので」

「じゃ僕も、またねー」

「うん。またどこかで」




 俺達が互いに生還という目的を果たして、別れそうになったそのとき、空中から一匹のエレモンが降ってきた。




「……ら、ラゴ……」



 これは【ラゴラゴン】だ。【Gランク】、光系統と龍系統を併せ持つエレモン。純白の月光のように輝く肉体。大きさは1メートルしかないが、立派なドラゴン。


 光の爪の白の足と尾。瞳は黄金。美しい月光かと思ったら【ラゴラゴン】だった、みたいな話がよくあるとか。



 そんなエレモンだが、傷だらけで輝きが失われている。それに、そもそも【Gランク】がこんな場所にいるのがおかしいのだけど





「こ、これって……まさか【ラゴラゴン】!?」

「僕もそう思うねー」




 確か、DLCイベントで【ラゴラゴン】を捕獲するイベントを配布していた記憶があるようだった。



 あー、【ハンティングギルド】って名前のエレモンを捕まえて売却するグループから逃げてくるんだな。




「い、一応、回復、させておきます……【ホーリーマジックモン】」




 テレポートもこなせる万能エレモン、【ホーリーマジックモン】。戦闘不能状態から全回復も可能である。




「へぇー、持ってたんだ」

「は、はい」

「うーん、やっぱり君のエレモンは全部質が高いよねー。こんなに沢山どこで捕獲して捕まえたの」




 ラリラ博士が気になっているようだが、軽くスルーしておこう。あとこの人【Gランク】を見たのにそんなに驚いてないな。まぁ、俺のテラゴラム二体とか見てるから感覚が麻痺しているのかもしれないけども。





「うーむ、なぜここに……ラリラ博士、どう思う」

「そうだねぇ。僕も本物の【ラゴラゴン】は見たことないからねぇ。アム……じゃなかった、イヴ君はどう思う?」

「こ、これは、本物、です……」

「じゃあ、本物だねー。傷状態なのはなぜかな」





 【ホーリーマジックモン】にて【ラゴラゴン】を回復させる。しかし、どうやらこちらに対して警戒心を持っている。




「ねぇー、どうしようか? このまま放してもいいけど……また怪我するだけじゃない?」

「あ、えと、多分、傷が人工的だから……」

「なるほどね。カツタマ博士、Gランクエレモンを狩れるほどの力を持ったテイマー知らない?」

「うーん、ゴッドリーグテイマーか、それとも……」

「あの、【ハンティングギルド】とか、が犯人、だと、思います」




 犯人探しをする時間ももったいないのでさっさと言ってしまおう。カツタマ博士は俺がその名前を出すとハッとした。




「なるほどね。彼等なら納得かもしれない。珍しいエレモンを狙って売っぱらうのは彼等の十八番でもある」

「どうする? 僕的にはエレモンの捕獲って悪いことじゃないし、皆んなしてるよね? 売却は論外だけど」




 確かに。ゲームでは流れで救うことになってるけど、捕獲までなら正直咎めることじゃない。売買は法律で禁止されてるらしいからダメだけど。


 どこまで【ハンティングギルド】を取り締まるべきなのか。そこが問題なのだろう。



 言ってることは理解できる……ただ、確か【横流し】してるのが改造を目的とした組織だったな。


 叩き潰すべきか。でもそれは俺の役目ではない気がするし、目をつけられるのも面倒だし。




 主人公モエとかに任せておくか、そもそもイベントは主人公のものとも言えるし。





「ら、ラゴ……」





 うーむ、俺には俺のエレモンが居るしな。





「見つけたわ。ラゴラゴン」





 来たか。ハンティングギルド……

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