第27話【螺旋の地下洞窟】

遊奥の島ゆうおくのしま】にようやく降り立った。【螺旋の地下洞窟】はこの島にあるダンジョンみたいなものだ。




先ずは、観光をしたいのだがどうしたものか。





「──あー、【モエ】ちゃん、だぁ。バーサスする?」

「──【チカコ】また貴方ですのね」




 おや、ゲームではライバル同士の二人のエレモンバーサスが行われるようだ。俺は興味ないのでスルーしておこう。




 最初はどこを見るべきか。やはり視聴者なんだろうけど……ここは観光が先だろう。





「おいおい、どこ行くんだい?」

「あ、博士」

「僕を置いていこうとしてるねー」

「そ、そんなつもりないです」

「ふふふ、僕も行くぜ。君の説があっているか見たいからねぇ」





 俺が動画投稿をしていることを彼女は知っている。俺が言ったことが正解なのかどうか、気になっているらしい。





「レベリング、そんな方法があるとか僕知らないからねぇー。確かめないとさ。これ次第で君の素性の可能性が変わるからね」




 俺の正体を随分と気にしているらしい。




「更に君の素性次第で、あの島とエレモンも分かってくるような気がするんだよねぇ。僕はまだあの島を調べきれてないし」




 ついでの俺の島とエレモンについても気になっているらしい。まぁ、それについては以前から言ってはいたけども。



 転々と島を歩き回る。




 ショッピングモールとか、おもちゃ屋とか、装備屋とか色々と見て回った。ただ、この島には防衛的な施設とかは無いらしい。


 ゲームだとこの島でもイベントがあった。【螺旋の地下洞窟】には【テラゴラム】とそれに対をなしている【ウミノゾア】の遺跡があるんだ。



 それでもって、主人公とライバル枠がそれについて語って……【カツタマ博士】が現れて説明したりするんだったかぁ。



 無視して先に進みたいが……偶々イベントが重なっているような気がする。主人公のモエとライバルのチカコがバーサスしてたしな。





「あ、【螺旋の地下洞窟】。前にここの最下層で石碑を見たんだよねー」

「な、なるほど」





 ここの石碑、壁画とかをすでに彼女は調べていたようだ。





観光がひと段落したら、地下洞窟に入ることにした。




「ここの地下洞窟はね。昔、テラゴラムを崇拝している一族が作ったらしいんだよね。作ったと言っても、作ったのは石碑や壁画だけね。この洞窟自体は元からあったんだ」

「し、知ってます」

「おお、物知りだね。地下洞窟が下に下にと続いているのはエレモンが住み着いたから。階段があるのは、洞窟を改良してテイマーの修行場所として国が管理してるからだねー」





 階段を降りていく、目指すは22階。階段を一階降りると広いフロアが広がっている。洞窟内だが頭上に電気蛍光があるので明るい。凹凸があるがちゃんとした道となっている。





「前に来た時と変わりばえしないねぇー」

「そ、そうですね」




 こうは言ってみたが俺も一応は初めて来たみたいなもんだ。ゲームの時とマップ構造は似ているだろうが、実際の広さとは少し違う気がする。



「むっしゃ!」




 武者マルは探検が好きなんだろう。この場所もノリノリで先に進んでいく。そして、襲ってくるエレモンを全て薙ぎ倒していく。




「うひゃー。君の武者マルは強いねぇ」

「へへへ、グレンの極マルも余裕で、圧勝してるから」

「あー。それマジなんだもんね。グレンって勝負したことないけど僕勝てる気しないんだよねぇ。ゴッドリーグ見に行ったことある?」

「な、ないです」

「あ、そう、ってことは君はゴッドリーグとかは出たことないのに無類の強さなわけねぇ」




 なーんか、ちょくちょく話しながら情報を抜き取られているような気がする。まぁ、こういうの気にし始めたらキリがないから無視しよう。




武者マルの強さが分かったのだろう。この地下洞窟のエレモン全てが寄ってこなくなった。



「君がいたらどこの場所でも軽々研究できそうで楽だよね」

「へへ」

「それじゃ、さっさと【22階】に向かおうぜ」




 地下洞窟を歩き続けて、遂に【22階】に到着した。構造自体はどの階も変わりないから、面白みはない。



 【22階】の特定のエリアに移動をする。壁が一部、抜けられるようになっており、四つん這いで移動すると別エリアに行ける。



「こ、ここに隠しフロアがあるので」

「……いや、なんで知ってるの?」



 無視して、進んでいく。四つん這いで進むので土で汚れてしまった。移動が終わると、大きなフロアに出た。




「ふーん、ここの【グレール】を倒すと【黄金の剣】がドロップするんだね? やってみようか【シャイニングドラゴン】」




 彼女はエレフォンから【シャイニングドラゴン】を出した。白銀の翼を持ち、大きな尻尾と凶暴な爪を持っている。3メートル級の大きさ。


 手と足が2本ずつ、頭部は巨大なツノが頭の横から2本出ている。



 【Sランク】のエレモンで、光系統と龍系統の二つを持っている。見た目は凶暴で見た目通り攻撃的なアクティブスキルを覚える。




「シャイニングドラゴン。【和ノ国】にいるエレモン、ですよね」

「そうそう! 昔【和ノ国】も調査に行ってたからね」



 シャイニングドラゴンは【和ノ国】の【光の遺跡】に生息している。出現確率がかなり低いレアエレモンって感じだったけども。【光の遺跡】はゲーム攻略難易度としてはまぁまぁ高い場所だった。


 俺達からしたら朝食前、昼飯前、夜飯前のレベルだけど。平均エレモンレベルが【50】くらいだった。



「光の、遺跡を攻略、したんですか?」

「いや、途中で引き返した。それ以上は無理だったし」





  【光の遺跡】最深部には【Gランク】がいる。それが今の俺の影に入っているエレモンなんだけれども。流石に攻略はできなかったのか。



「でも、このシャイニングドラゴンが捕獲出来た。今度また調査に行きたいねぇ」




 そんな彼女の前に【グレール】が現れる。【グレール】は鎧の騎士である。中にはもふもふのクマが入っている。



 低確率出現なのに運がいい……。それともこの世界だと少し出現率が変わるのか。どっちかは知らないけども。



 闇系統の【D】ランク。ランク的には問題なさそうだし、倒せそうだな。




「ウァァァァ!!!」

「クマ!?」




 うむ、良心が痛むような気がする。彼女のドラゴンはグレールを薙ぎ倒した。すると【黄金の剣】をドロップした。



 ドロップが案外速いなぁ。彼女は運が良いのかもしれない。




「それで、【21階】のメタモルフォーゼを倒せば良いんだよね……まぁ、正直ここまでで十分なんだけどね」

「ああ、え、ど、どうしてですか?」

「僕は君の説がどこまで正しいか知りたかっただけだから。この隠しフロアと【グレール】を倒して【黄金の剣】をドロップした事実があれば良いよ。メタモルフォーゼも事実でしょ」




 え、えぇ。それを知りたいだけでここに来たんだ。この人、探究心が高いんだなぁ。



「ふーん……つまり、君は別に適当なことを言ってない。これも事実で他の人が知り得ない事実を知っている、にも関わらず島の観光をした? それはなぜか? 知っているならする必要はないよね?」

「お、おお」

「知らない部分があった、もしくは知っている部分と実際の差異を修正していたと考えられる。なるほどなるほど、【並行世界】が不正解だった。なるほど……もしかして君は【時間逆行者】だ!! 時間を操るエレモンも居るもんね!!! 時を操るエレモンの力を使ったとか!!! どうだぁあああああ!! これで正解だろうぉ!!!! これで正解だったら脳汁出るぞぉぉぉ!!!!!」

「ち、違います」

「あああああああああああああああ!!! 不正解かー!!!!!!! 天才の僕でも簡単に解けない難問は気持ちいぜ!!!!!!」




 不正解しても脳汁出てそう……この人、本当に変わってるなぁ。天才って変わってるところがあるから天才なんだろうな。



 どうやら視聴者も見つからないし、一番下の壁画とかを見学だけして帰るかぁ。











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