第26話 回答

以前、動画で紹介をした効率よくレベルを上げる方法。それは【螺旋の地下洞窟】という場所で道具をドロップして、戦闘をする。



 動画で紹介をしたから、もしかしたら俺の視聴者が行っているかもしれない。折角だし、向かうことにしよう。



 居たらどうしよう……文面からじゃ性別とかも分からなかった。でも、姫マル持ってるとかコメントで言ってた。





「おお! 【螺旋の地下洞窟】に行くんだね! アムダ君!」

「あ、そ、そうです」




 なぜか、【ラリラ博士】もついてきているんだけども。




「ねぇねぇ、君の動画見てチャンネル登録してるんだけど、1番最初の動画に出てた狐型のエレモンみたことないんだけど、なんて名前なの? ねぇねぇ」




 彼女は好奇心旺盛、探究心の塊みたいな人だからやたら話しかけてくる。研究をもっとしろと言いたいが、それは問題ないくらい進んでいるらしい。




「この間の、木々が更に成長してたよ。日に日に大きくなってもう森みたいだった」

「へへ、お、俺のエレモンが世話をしてる、から」

「だとしても異常な成長速度だよね? 毎日沢山苗木買って、木こりマンが植えてるのが見えるし、この間なんて【グリンウルフ】を見たぜ!? 実物初めて見たよ!!!」




【グリンウルフ】は清らかな森にしか居ない狼のようなエレモンだ。Aランクでも上澄の珍しさだ。



「あの森は確かに綺麗な木々が生い茂ってたし、他の草木も生えてきてた。果物だってね。だけど、あの島に来るには海を渡る必要があるから、君のエレモンだよね」

「あ、そうです」

「へぇー、やっぱり相当の実力者だよね。グレンにもかろうじて勝つくらいだし」

「ぐ、グレンには余裕で勝ちました」

「余裕で勝つねぇ、あのグレンに?」

「ぐ、グレンも筋はいいからまだまだこれからって感じ、で、です」




 悪くないとは思う。流石はグレンだ。でも、俺達には勝てない。





「え、えと、グレンは筋がいいから、で、でも、俺達に負けても強さは変わりないから、落ち込まないで欲しい。あ、相手が、悪すぎただけ」

「それ、アムダ君がいうんだ」






 でも本当だし。






──【螺旋の地下洞窟】に着いた。この場所はゲームの頃からよくきていた。





 【地ノ国】と言う舞台から離れた島国に存在している。一応は地ノ国判定らしいが、船でないと行けない場所である。


 まぁ、テレポートで行ければ良いのだが……それには一度場所訪れないといけない。




 なので、今回は船で向かう事にした





「チケット取っておいたぜー」

「あ、ありがと」

「いいえー。ほれほれ一緒の部屋だぞー」




 ラリラ博士と一緒にか。うむ、空飛んで行くべきだったかもしれない。大きな船でありそれぞれ客室がある。




「ふふふ、僕弟は欲しかったんだよね」

「お、俺、姉とか欲しくない、です」

「き、厳しい……」



 前世だと、体が悪い俺よりも弟や妹の方が優秀だったから両親が愛していたから。苦手な感じする。


 それにしても、初めて移動するけど、船ってこんな感じなのか。よく揺れるな。しかも速度も大分遅い。




「むしゃ!」



 連れてきた武者マルは結構気に入ったらしい。うーむ、普通に空飛べるエレモンに頼んだ方が楽だったかもしれないな。帰りはテレポートでいいな。




「あ、この武者マル可愛いー!」




 船の屋上で景色を楽しんでいると、誰かが俺の武者マルに話しかけた。顔を見て、少しだけギョッとした。




【ライバル枠】だ、この女の子。ゲームでも主人公に対して何度も大戦を挑んでくるのがこの【チカコ】である。



桃色の髪をボブにして、てっぺんにアホ毛が一本ある。垂れ目で美人な顔立ちだがちょっと、人を舐めているような顔つきをしている。



「へぇー、わたしーの武者マルと同じくらい可愛いー」

「そ、そうですか」

「へえー、めっちゃ可愛いー」




 

 うーん、やはり外見が一緒で話し方も一緒なんだな。メスガキ、みたいなあだ名をネットではつけられていたな。人を舐めているような話し方をエレモンバーサスでする。





「あ、お兄さん。もしよかったら【エレモンバーサス】しない? わたしー、強いから良い経験になると思うよー」

「え、えと、実力は俺たちほぼカンストしてるから、だ、大丈夫……」

「あ、え? か、カンスト? ふふ、すごい自信だね、お兄さん……まぁでも、そんなに過信しないほうがいいよ? テイマーの世界は厳しいからね」

「し、知ってます」

「あはは、面白いねぇ。まぁでも見たところ子供だし、お兄さんってより坊やだね? その無鉄砲なのは将来の宝だよね」






 ふむ、本当のことだけど……それよりも人と話すのが緊張するので早くどっかに行って欲しい。




「ふふふ、坊やかわいいねー」

「あ、へ、へへ」

「あ、照れてるのかわいいー」



 コミュ障だから、嫌って言えないだけなんだけど。早くこの時間が終わってくれ……。




「あ、わたしー、【螺旋の地下洞窟】って場所で修行するんだ。危険な場所だから坊やは来ちゃだめだぞ?」

「危険な場所、でも、大丈夫、む、寧ろ、あなたこそ、まだまだ、発展途上だから……お、お気をつけて」

「ふふふ、坊やに心配されるなんてね。でも、大丈夫。わたしーエレメンタルコード、5個持ってるからー」






 やー、まさかライバル枠に絡まれるとはね。俺はゲームのストーリーは一度見たことあるし、展開とか知ってるからそんなに興味はないな。それより、俺の島の発展の方が興味がある。



 今から行くのも離島。一応観光スポットでもある場所だ、修行場所もあるけど。観光もできるからこそこの大きな船に沢山人が乗っているんだろうね。




「【遊奥の島ゆうおくのしま】と言う名前か。パンフレットもあるのか」

「むしゃ!」

「昔、ゲームの時なら一緒に行ったな。レベリングのために。ここで武者マルが一気に60くらいになったな」

「むっしゃ!」





 ゲームの時の記憶も覚えているエレモン達。レベリングの記憶もあるのか。



 今回行く理由は視聴者が気になるのもあるけど、島の様子が1番気になるって言うのが本当だ。俺も今は島を開拓する者だからな。


 観光地っていうのは基本的に誰かを呼んで楽しませる場所だ。俺のエレモンも楽しめる場所の参考にできれば良いだろう。ゲームでは無い設定や場所とかもあるかもだしな。



 他にも島に敵が来た時の防衛策とか。まぁ、そんなのはあんまり無いと思うけども。






──船が【遊奥の島ゆうおくのしま】に着くまでに時間が大体、1日かかる





「おーい、アムダ君。今日は僕と一緒に寝る?」

「い、いや。や、やめときます」

「ふふふ、拒否権はないぜ」




 【ラリラ博士】は結構ベタベタしてくる。理由は体で気になる情報体に触れることで解析をしたいかららしい。




「ふふふ、可愛いね!」

「あ、ど、どうも。でも、俺の武者マルの方が可愛いです」

「武者マルも可愛いね!」





 夜になって個室に入ると彼女は必要以上に俺に触ってきた、あと武者マルにも。ベッドに座りながら、彼女はいつものように怒涛の勢いで話しかける。



「そう言えば【テラゴラム】のことなんだけどね!! 君は二体持ってるよね? なんで二体持ってるのか、僕なりに考えてみたの! やっぱり、君は不自然だよ。二体も持ってるなんて」

「あ、そう」

「この星にかつて存在していたのは記述があって証拠も見つけた。でも、一体だけ。つまり……どう考えても数が合わない。だから、君が持っている一体は【並行世界】から来たって考えたらどう!」




 おお、急に俺に対しての推理が始まった。



「君は、【並行世界】では実力があるテイマーだった。それゆえに【テラゴラム】を捕獲していた。そして、この世界の一体も捕獲した。これなら筋が通るよね! まぁ、想像に想像を重ねたような説だけど、君の摩訶不思議感なら仕方ないよね!! どうかな! この考え! あってる?」

「……あ、えと、ち、違う」

「まじかー!!! くっそー。次は当てるぜ!! 君は研究しがいがあるね」





 当たっていないが、遠からずとも言えるかもしれない。これが天才ってやつか? それとも、妄想が上手なだけだろうか?




 俺についてはそこまで彼女に話していない。【転生】とか前世の【ゲーム】での話とかはね。



 だから、彼女は気になって俺の正体について言及をしてくる。ハグをしたりしたいのも正体が気になるのだろう。





「もしかして! 宇宙人!? 宇宙には沢山テラゴラムがいるとか!??」

「ち、違う」

「くっそー」




 もしかしたら、彼女なら本当に辿り着いたりするのかもな、俺の正体について。素性について

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