第21話 流れ着く
ワタクシは負けた。【ガイア帝国】に、またしても……【完敗】だった。
ワタクシは三体のエレモンで挑んだが、一体も倒すことなど叶わなかった。
負けたワタクシは……ただ見逃してもらえるはずもない。以前もそうであった。
ガイア帝国の二人組に負けた時、ワタクシはあのままならきっとエレモン、武者マルを奪われていただろう。
その確信がある。旅なんてもう終わっていただろう。
二対一で状況が不利であったと言い訳をしようと思えば出来る。でも、彼は勝った。【アクティブスキル】も使用せずに圧倒をした。
武者マルは手加減をしていたが、それを見ていると不思議とお父様よりも強いのではないかと思ってしまった。
お父様はゴッドリーグでも負けが殆どないテイマー。お父様よりも強い人なんて殆ど見たことがなかったけど……
──まさか、本当に
「……あ、あり得ない。それはエレモンか? それとも、なんなんですか!!!」
【ガイア帝国】、【ガイア大将ダルダ】が激昂したように声を荒げている。その理由もわからなくはない、彼の前に立っている【エレモン?】を見てしまっては……
「あ、え、えと」
なぜイヴがオドオドしてるのかは分からない。取り乱しているのはワタクシの方であると言うのに。
全身が黒い靄で囲まれているような感じ。ただ、全体像は人間の形に近いような気がする。
顔には骸骨の仮面をかぶっている、顔は見えないが骸骨の骨の部分から蒼い綺麗な瞳だけが見えていた。
──生きたい
そう、思った。本当に赤子の手を捻るように『あれ』にワタクシは殺される。
体の形が保てなくなるほど、誰だが分からないほどに切り刻まれて殺される。
生きれるイメージが湧かない。
「……え、えと、俺の勝ち、ですよね」
「……くっ! ……えぇ、私の負け……ですが、私は負けでは済まない感じがしますがね」
ガイア帝国ダルダも、自身の死を悟ったように視線を落とした。彼はきっとワタクシより諦めが悪かったんだろう。
あれを見て、まだ生きようと憤っていた。
「えと、警察に出頭で……」
「構いません。私は最早死んだも同じ……バーサスに負け、銃を使ってもこの結果……格が違いました……」
「あ、と、俺、エレモンバーサスに買ったから、お金、ください」
「……無論、全額渡しますよ」
この状況でよくお金を要求する……。はぁ……結局、ワタクシは負けただけ。
このまま、この程度の実力で大丈夫なのだろうか。その後、警察が呼ばれたが、到着前に彼は走って逃げた。
「それで、その少年が全てを倒したと」
「はいですわ」
「なるほど。【ガイア帝国】の隊員、そして大将は重要参考人として逮捕しましたが、如何せんその少年からも話を聞きたい所。名前とかは知らないのですか」
女性の警察官にワタクシは問い詰められていた。流石に今回のテロリスト事件はかなり大ごとになっているらしい。
ネットでもトレンドに、ニュースに沢山なっている。
「ふむ、まさかグレンさんの娘である貴方が負けるとは……ガイア帝国、相当の手練が多いと考えるべきでしょうか」
「下っ端はそれほどではないですわ。ただ、今回負けたのは……」
「なるほど……【シア帝国】もありますけど、こっちもこっちで面倒な……その先ほどの【謎のエレモン】を使うテイマーは名前とかは知りませんか?」
「イヴと、名乗ってましたわ」
「イヴ。監視カメラにも映っていましたが黒いフード、黒マスク、身長は分かりますがそれだけじゃ……。イカファイターをメインで使う、少年、ありがとうございます」
警察はそれで話を終えた。ワタクシは解放された、でも、体がまだ震えていた。
あの、エレモンの恐怖が残っているんだろう。
「……久しぶりに家に、帰ろう」
◾️◾️
ガイア帝国の【ガイア大将】ってお金持ってるんだな。ゲームだと、そこまでくれた印象なかったけど完全敗北して、死を意識するとこんなにお金を出すのか。
グレンに勝った時よりも全然お金貰ってしまった
『アンタを銃で撃とうとしたんだから、当然でしょ。殺しても良かったんだから!!!』
まぁ、殺しても……俺は正直殺しとか生かすとかどっちでも良かった。
単純に俺のエレモンの手をあの程度のやつに汚させるのは、嫌だっただけだ。
俺はどっちでも良いのに、【イクリプス・ファントム】が手を汚すのは責任転嫁みたいになってしまう。俺が明確に殺したいと思った時、殺しの指示を出すべきだろうさ。
『面倒な考えね。まぁ、アンタが満足なら良いんじゃない。お金は大分貰えたんでしょ?』
もしかして、これってマジで全財産だよね。まぁ、エレモンバーサスに負けた上で銃使ってるんだから申し訳なさはないけど。
──ガイア帝国の大将ってマジで金持ってるんだな。
パソコンとか買えるな。前からブログとか動画サイト使ってみたいと思っていた。
俺の世界一のエレモンを自慢したいし、良い感じになればそこも資金源となるかもしれないぜ。
『ねぇねぇ、エレフォン見せてよ』
ダルダはエレフォンに大金を落としていった。それによって俺の貯金額はとんでもないほどに増えていた。
『あらあら、苗木何個買えるかしら? そもそもエレ市場では買いきれないわね』
「別の場所に行くか。質の良い苗木が買える場所に行きたいな!」
さーてと、テロリストのおかげでかなりまた出来ることが増えた。ただ、ゲームよりもガイア帝国の動きがエグかったのが気になるなぁ。
主人公を殺そうとするし、俺も銃で撃とうとするし。
『次は殺して良いわ。アンタの責任感より、アタシ達の殺したいって欲の方が強いから。めちゃくちゃキレてるわよ。イクリプスもね』
ゲームの時よりもエグいのは確かにあり得るかもな。ゲームなら負けてもセーブ後に戻るだけだし。
──この世界って、意外と変なことをする奴らが居るんだよな。【軍事利用】みたいな。他国にエレモンで戦争を仕掛けようとする国もあったりする。
その点も含めて、今後はレベルダウンしたエレモンのレベル上げ、それに加えて、卵に戻ってしまったエレモンの孵化にも目を向けていきたい。
今までは単純に島を発展させたいと思っていたけど、防衛、なんなら報復にも力を入れるべきか。
今回は俺に対しての銃火器だったからそこまで怒りはない。でも、俺のエレモンに向くならば話は別だ。
国ごと、滅ぼす必要性が出てくる……まぁ、そうはなってないけども。
『アタシとしては、そこまで考える必要ないと思うわ。アンタってLランクエレモン何体持ってるのって話じゃない。格が違うわ』
「まぁなぁ」
『テラゴラムだって二体いるんでしょ。そんなの──アムダ、誰か来たわ』
「え?」
『漂流……誰かが、流れ着いたって連絡きたわ』
マジかよ、誰かがこの島に来てしまったと言うことか。急いで向かおう。
天気は晴れになっている。最近、大雨でもなったか? それで漂流したとか?
「あれか」
船が流れ着いている。大きさはそこまでではない。人員は一人だけに見えるな。
白衣を着ている……男ではなさそうだ。あれは女の子か、背丈は俺よりも高いが小さめに見える。
船に近づいて中を見た。やはり乗っているのは一人だ。
『一応、イクリプスにいつでも出れるように言ってるわ。下手人だったら……』
うむ、確かによく見ると影が少し揺れている。これは一体全体いつから、仕込まれていたんだ。
敵を騙すには味方からと言うけどまさにその通りだな。
さて、この幼い子に話しかけるか。適当にあしらっても良いけど、一応、どう言うルートでここに流れ着いたとか、聞いておいた方がいいからな。
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