第17話 キャンプ
デカイチゴマスター、ゲームだった時の【エレパラ】には存在していなかったキャラクターだ。
当たり前だがこの世界はゲームに酷似している現実。原作主人公のモエなどが居るけど、それ以外にも世界とは存在している。
エレ市場でキャンプ用品が売ってた入り、肉串を売っていたり、ゲームでは必要がなかった部分があると言うのが正しいだろうか。それも当然だ。
ゲームは主人公、つまりはプレイヤーが遊ぶためのものであり、余計な部分はストレスであり不必要な部分だ。
だが、ここは現実。このデカイチゴマスターという人物は確かに存在している。
──エレフォンで調べてみると【デカイチゴマスターのブログ】を作っている。
テイマーだけが使えるネット【エレネット】にも乗っているが、一般の人が使えるネットにも彼の情報は載っている。
俺が大会のエキシビションマッチで戦ったコード・バトラーの【クサウチ】、主人公の父親【グレン】には勿論及ばないけど、ブログはそれなりに見られている。
こ、こんな人もいるんだな。
「拙者に勝てるかな。いでよ! 【グリッドドラゴン】」
「行こう、【武者マル】」
【グリッドドラゴン】……この辺では生息していない。って言うか【和ノ国】、二代目主人公が居て旅するところのエレモンだな。
そっか、この人【和ノ国】から馳せ参じたって言ってたから当然か。
【グリッドドラゴン】。全長190センチ、体重100キロ。大型のエレモンだな。
系統は【雷系】と【龍系】の二つ持ち。翼があり、鋭い爪と足を持っているまごうことないドラゴンのようなシルエットと姿。
全身が黄色、そして、体にはエメラルド色の管が通っているような筋がある。あの筋に電気が大量に流れており、それが浮かび上がっているらしい。
眼は黄色、口も大きくて、並のテイマーならびびってしまうだろう。ランクは【A】。
それなりに珍しいタイプのエレモンだろうけど、この人言うこと聞くってことは人望があるんだな。
「【グリッドドラゴン】! 【エレキストーム】!!」
「グラッド!!!!」
「【武者マル】。【左3】」
「むしゃ」
エレキストーム、威力は190くらいだ。しかも、状態異常【麻痺】に確定でされてしまう。これは避けるべきだ。
「ほう! 避けるか!」
「武者マル、もう大丈夫。掴んだ」
「むっしゃ!」
こんなのゲームでは考えられないが、【アクティブスキル】の射程がエレモンによって違う。
俺も【グリッドドラゴン】は持っているけどもっと射程は長い。それに発動までもラグがない。レベルも関係あるんだろうけど、この射程感覚を掴むのが大事だ。
【左3】と指示をしたけど、次からは【左2】で問題ない。【エレキストーム】は口から台風みたいなのを発生させて相手に向かわせるアクティブスキル。
台風の大きさが直径で1メートル半ほど。ならば次からは避ける幅は2メートルで問題ない。
効果範囲は測り終えた。武者マルなら、これくらいの速さと効果範囲なら、特に細かい指示はいらないと判断する。
──こちらの勝利は問題ないと判断した
ただ、相手のグリッドドラゴン。レベルはどの程度か、アクティブスキル使って大怪我させない範囲なら良いんだが……
「……エレキストーム。覚えるのはレベル30くらいだし……あっちは30以上……いや、40くらいだな」
「ぶつぶつ言ってて大丈夫か、今のでビビってしまったか! 拙者は遠慮しないが! もう一度【エレキ──」
「──弱めの【一番】」
【一番】すなわち、俺が指示したのは【奥義・火の粉斬り】。
【パッシブスキル】
・【奥義・サムニャイスピリット】
・火系の技を使う時、その技の威力を2倍にする
パッシブスキルと奥義まで進化させたアクティブスキルによって、放たれる超高火力。
俺の【武者マル】は【火系】。【雷系】に与える、受けるダメージは等倍。【龍系】でも与える受けるダメージは等倍。
等倍なら問題なく。この攻撃は刺さる。
武者マルは普段は猫じゃらしの刀を鞘に収めている。しかし、技を使えば彼は刀をぬくのである。
爆炎を纏った刀を抜刀術のように相手に近づいて、放つ
「なな、なんと!? は、早すぎ!?」
「ふー、ほどほどに飛ばせたな」
「グ、グラッド!?」
武者マルは自分よりも遥かに大きい巨体を浮かせて弾き飛ばした。
「は?」
デカイチゴマスターが驚きで口をぽけーと開けている。よっしゃ! 俺達の勝ちだぜ!!
「うおお!? せ、拙者の負け!?」
「あ、そ、そうですね」
「む、無念。しかし、グリッドドラゴンよくぞここまで戦ってくれた! ゆっくり休んでくれ!」
デカイチゴマスターはエレフォンにグリッドドラゴンを格納した。
「負けた! 拙者の負けだ! 其方強いな! びっくりだった。これは潔く引くしかあるまい」
やはりこの世界の人は【エレモンバーサス】に負けるとすぐに引き下がる……ま、まぁ、良いんだけどさ、負けるの前に引いてくれないものか。
「負けたので賞金を支払おう! 拙者、其方のエレモンに感動した!」
「え!? い、一万円も!?」
「拙者、デカイチゴマスターであるが昔は【和ノ国】で旅をしておった。テイマーとしてな! 故にわかる! 其方は強い! 途轍もなく!」
「あ、ど、どうも」
「うむ、次はちゃんと並んで買うとしよう……そろそろ、【和ノ国】から移住を考えてもいいかもな!」
「そ、そうですか」
人には人の旅路があるのか。この人も、色々と旅をしてきたんだだろうなぁ。
【和ノ国】かぁ。モエが居たってことは、あっちにも主人公がいるのかね?
【モエ】は初代作品の主人公で舞台は【地ノ国】。二代目主人公は【和ノ国】が舞台。
うーん、今の所、行く予定はないけど。気になりはするけども……【和ノ国】だけにある果実とかはあると聞いたことあるなぁ。そう言うのも取りに行くのはありかも。
デカイチゴは比較的どこでも取れるやつだし。偶には変わったのも育てるのもありだな。だいぶ落ち着いた後になるけども
「では、拙者はこれで!」
「あ、はい」
「そうだ! 言い忘れていた、次はいつ発売になるんだ!」
「え、えと、来月かな」
「うむそうか……宣伝アカウントとかブログとかはネットに作らんのか! 皆んな、其方の店事情は気になってると思うが」
考えたこともなかった。そう言うのってパソコンとか必要なのかな? 一応エレフォンでもネット繋がってるからできるんだろう。でも、ちゃんと管理とかするならパソコンとかだよね……そ、そんな資金はない!
「い、いずれ作ります」
「そうか! そうか! それが聞けてよかった! では拙者はこれで!」
デカイチゴマスターは去っていった。うむ、悪い人ではない気がする。
さて、テレポートで島に戻ったので早速……
『キャンプで拠点を作りなさい!』
「わ、わかった」
十万円で購入したキャンプセットを開封した。中には色々入っているがとりあえず、テントを建てるか。
「え、えっと」
『アタシも手伝うわ』
クイーンも人間の姿になって色々手伝ってくれる。武者マルもホーリーマジックモンも俺の指示に従って……
「で、できた!」
『良かったわね』
「むっしゃ!」
「……!」
ホーリーマジックモンは相変わらず無言だが、嬉しそう!! 俺も嬉しい!!
見た目は結構広そうだ。緑色のテントの中は思ったよりも大きい。屋根は三角のような形で、家の胴体は六角形みたいな大きさだ。これがかなり広い。
流石は10万円で買ったキャンプ用品だ。他にも沢山あるけどだいぶ役立っているようだ。
中は俺が何人寝れるだろうか? 20人、くらいは寝れる感じがする。
「おお、これは良い買い物したかもしれない!」
『ゆくゆくは家を建てるのよ! 今はこれで雨風を凌ぎなさい!!』
ゆくゆくは家になるのか……
「よーし、この拠点からまた頑張っていくぞ! 次は苗木を植える!!」
『あら、苗木を植えるの』
「あぁ!」
『苗木』を育てるなら、それに適したエレモンが入る。果実にはファームモンやガーディモンがいたみたいに。
そういえば【和ノ国】の【Lランク】エレモンは『自然』を司るのが居たな!
そいつの力を借りるか……! 他にも苗木を育てるのに適したエレモンとか、自然の豊かな場所に住み着くエレモンも出していこう!!
◾️◾️
ふむ、強かったな。あの少年。
デカイチゴマスターとして、敗北をしてしまうとは情けない。だが、あれは負けても仕方ないだろう。
それほどに強かった。
負けたのに不思議と悔しさはない。あの武者マルは極限まで強さが引き上げられていたような気がする。
あれは負けても……そうだ。デカイチゴファンのみがやっている【エレネット】のスレにて報告をしよう。
1名無しデカイチゴマスター
負けた! 食べられなかった。エレモンバーサスして買ったらもらえる約束まで行ったのだが……
2名無しデカイチゴファン
え!? マスターが!? それほどまでの貴重なデカイチゴなのか!
3名無し【デカイチゴキング】
ククク、マスターはデカイチゴ四天王の中でも最弱。よし、次は私が行こう。デカイチゴの王がな
4名無し【デカイチゴゴッド】
ククク、油断したなマスター。その次は私が行こう、デカイチゴの神がな
5名無しデカイチゴファン
四天王が動き出すのか! デカイチゴを奪取するために!?
6名無しデカイチゴマスター
いや。拙者もワンパンでやられてたからなぁ。其方達が行っても無理だろう
──エレネットに報告をしながら、ふむと拙者は唸る
「まぁ、彼に挑んでも勝てないだろうけども」
拙者が挑んで負けたこと、そして勝てばデカイチゴがもらえると分かったのでスレは盛り上がっている。
7名無しデカイチゴファン
勝ったらもらえるの? なら、行こうかな
8名無しデカイチゴファン
地ノ国かぁ。ちょっと遠いけど、相当うまいって聞いたし気になるなぁ
9名無しデカイチゴファン
いくぜ!! 待っていろよ!!
10名無しデカイチゴファン
俺も俺も!
──
ふむ、どう考えても勝てないから再販を待った方が良い気もするが……まぁ、何を言っても無駄だろう。
彼等は生粋のデカイチゴファン。盲目になってしまったら、もう無理だろう。彼に負けて、目を覚ますしかない。
さて、拙者は次の再販に向けて移住計画でも建てようかな
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