第16話 デカイチゴマスター
エレ市場では多大なる売り上げを記録した。こんなに1日でお金を貰えたのはとんでもない事だ!!
流石は俺のエレモンだなぁ!! 大体、サラリーマンの給料一ヶ月くらいは稼げたんじゃないだろうか!!
勿論、約束通り【サクマ】に売り上げの一割を挙げるのは約束だったのでその約束は守った。
『ほほほ、約束通りで関心。それにしても随分儲けたの。今回の市場、一番儲けたのはお主じゃった。ほれ、ご褒美をやろう』
──ニクの実を500個手に入れた!!
なーんて、ゲームの頃ならエフェクトが出ていたんだけどね。それはそれとしてサクマから貰ったのは【ニクの実】と言う木の実の種だ。ゲームでも育てていたな。ドラゴンエレモン系がすごい好んで食べていたのを覚えている。
龍系が好きすぎて島で育てていると食べにくるくらいだ。そっからエレモンバーサスに入る仕様があったのは記憶に残っている。
ゲームの頃は島にエレモンがやってくるイベントも発生してたからな。こっちではまだないけどそのうちあるのだろうか?
ニクの実の栽培についてはガーディモンとかファームモンに任せるか。結構難しいらしいけど、問題はないだろう。
ううむ、今回の売り上げは俺が一番だったのか!!
しかも、今回は宣伝の為に敢えて【安く】売ったと言っても過言ではない。デカイチゴなら三倍の値段をとっても問題ないほどだろう。もしかしたら、五倍の値段でも問題ないかもしれない。
それに、今回宣伝したのは他にも売る商品の為でもある。リターンは大きいぜ!!
『それでまた種子買うの?』
「いや、種子自体は実は既に大分買えてるんだ。育ちきっているわけじゃないんだけど……種子ならそこまで問題じゃなくなってる。だから、今回買ったら暫くお預けだな」
『ふーん、なら何買うのよ』
クイーンも気になっているようだ。俺も次に買いたい物をずっと考えていた……だが、最近決まった。
「苗木だな。木材が取れる」
『木材の苗木ねぇ……家でも欲しいの?』
「欲しいエレモンが居るかなと思ってさ」
ゲーム【エレメンタルモンスターズ・パラダイス】の【島クリエイトシステム】でも家を作ることができた。ただ、木材は自分で調達しないといけなかった。
果実とかと同様で育てて伐採して、加工をする必要がある。それをするにはまずは苗木を買う必要があるのだ。
「買った後は育てるんだけども」
『あぁ、木材とか育てるの得意なのが居たわね。そいつらに任せるのがいいわね』
果実を育てるファームモン、ガーディモン同様に木材を育てるのに適しているエレモンが存在している!!
彼等に頼みたいわけだが、その前に……苗木を買う必要があるだろう。
エレ市場にこの間、売っているのが見えた。ゲームでもここで買えたのでここで買おう。
次の日の朝、再びエレ市場にやってきた
「よし、行こう!」
『はぁ、ちゃんと手を繋いでね』
「おう! 王だけに!!」
『ふふふ、面白いじゃない! キングジョークね!』
人間の姿に化けているクイーンと手を繋ぎながら市場を渡り歩く。苗木が売っていたのは市場の端っこだった。
「あ、えと、その、その苗木買いたいです」
「うん? おう、何個欲しい?」
若めのお兄さんが苗木を並べている。うむ、買えるだけ買おう。
『バカ! 全部はダメよ! 少しはとっておきなさい!!』
「あ、うん」
ある程度は残して、お金の札束をお兄さんに差し出した。
「あの、これで買えるだけ……」
「えぇ!? あ、い、良いけど……多分、全部買いきれないぜ? あ、ちょっと待ってな……えと、これだけでいいから」
お兄さんはある程度札を貰うと、値段以上のお金に関してはお釣りとして渡してきた。
「お前、よく見るとこの間、デカイチゴ売ってたやつだな……俺も買いたかったんだよ」
「へへ、あ、ありがとうございます」
「買えなかったけどな。次売るときあったら買わせてくれ」
「へへ、な、並んでくれたら譲りますぜ、へへ」
苗木を大量に貰った。箱に詰められているのだが、一人では持ちきれないので武者マルの頭の上に乗せて俺も持っている。
「一旦、これは持ち帰ろう!」
『そうね。もうちょっと見たいし』
「むっしゃ!!」
「あぁ、ちょっと待ってくれ」
おや、若いお兄さんから呼び止められた。
「え、えと」
「さっき、【デカイチゴマスター】ってのがアンタのことを聞き回ってた。気をつけな」
「で、【デカイチゴマスター】!? し、知らない」
「あぁ、俺も知らんが聞き回ったぞ」
い、一体全体誰なんだ? ま、まぁ、あんまり関わりたくないからスルーしておこう。一度島に戻り、苗木を置いてきた。
『ちょっとアタシの買い物に付き合ってもらうわ』
「う、うん」
クイーンはどうやら欲しいものがあるようだ。再び、テレポートでエレ市場にやってきた。手を引かれて、エレ市場を歩き回る。
『ここよ』
「キャンプ用品を売ってる場所……?」
「へいらっしゃい!! 買ってくかい? 旅にも大事なキャンプ用品だぜ! 質のが良いのが入ってるぜ!! お得用セットが10万円だ!! 因みに俺が作った品質のいいやつだ!!」
「あ、そ、そうですか」
ゲームだとキャンプ用品とか無かったな。実際に主人公がどうやって夜を明かすのかとか、そこまで作り込まれてなかった。勿論、島クリエイトシステムで家とかは作れはしたけど。
『アンタ、島だと寝袋くらいしかないでしょ。買いなさい! 王なんだから!』
「え、え、でも、俺そんなにいらないって言うか」
「え? だ、誰と話してるの?」
『王でしょ! 買いなさい! アンタがこれから島を発展させるために導かないといけないんだから!』
「な、なら買うよ」
「だ、誰と話してるの!? おい、誰と話してるの!?」
あ、店主は俺がテレパシーでクイーンと話してる訳を知らないからびびっちゃってる。まぁ、それは置いておいて、買おうかな?
「か、買います、これで」
「ま、毎度あり」
『ほら、さっさと戻るわよ。テント立てて、作戦会議よ』
大きな荷物を持ちながら市場を後にする。かなりの量があるので再び武者マルの頭の上に乗せながら市場から離れて、テレポートで島に移動をする……
その瞬間に話しかけられた。
「其方、先日デカイチゴを売ってた少年だな?」
「え、は、はい」
「なるほど、拙者のことは知っていると思うが……拙者は【デカイチゴマスター】、其方に会うために【和ノ国】より参った。少々話いいだろうか?」
「こ、これから用事でして……」
「うむ、デカイチゴを一つ売ってくれ」
こ、この人、話を聞かないタイプの人間だ! ど、どうしよう。
「あ、あの、他のお客さんも、そ、その、ちゃんと並んでもらって買って貰ってまして……一人だけ、特別にとか無理でして……」
「そこをなんとか頼む! 拙者、デカイチゴを食べて30年、ここまで気になることはなかった、写真だけでわかる水水しさ、果肉が詰まってはち切れそうな見た目。あれは確実にうまい、故に頼む!!」
「で、でも、その、無理っていうか」
「そこを頼む!!」
そ、そこを頼むとか言われても困るって言うか……でもこの人ずっとこのままな気がする。
よくわからないけど、デカイチゴマスターって自分で言うほどなら、敵にしないほうがいい気がするし。
『どうするの? こいつ』
「多分、下手に対応もまずい気が……」
ちょっとエレフォンで調べたら、この人出てきた。それなりに有名な人らしい。下手な対応して怒らせて、変なことを言われたらせっかく積み上げたデカイチゴの評価が落ちかねない。
「それならば! 拙者と勝負しよう!!」
「あ、え?」
「拙者が勝利したらデカイチゴを貰おう!! 100個ほどな! 溜め込んでいるのだろう!」
「あ、えと、はい。で、でも俺には勝てない、ですよ?」
「むむ! 拙者を舐めるなよ!!」
この世界の人ってエレモンバーサスで負けたら大体の言うことを聞く。ちょっと前にバーサスを何人かしたことあるけど、どんでもない願いとかじゃなければ割と聞いてくれたり、逆に要求を引いてくれたりする。
『バカね、アムダと勝負だなんて……実質強制負けイベントじゃない』
よーし、勝負だ!!! ゲームではデカイチゴマスターなんていなかったから油断はしないようにしよう。
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