第10話 果物

 さて、暫く島で畑を耕したりしているのだが……ようやく、果物の実がなった!


 なんだかんだでエレフォンを手に入れてから二ヶ月が経過している。


 この間に色々とイベントが過ぎ去っていった。



「とうとう収穫か……」



 この島は最初【テラゴラム】によってただの大きな大地だった。島を作り上げた時点で直径は10キロ。とても大きな島だ。



 島として成立はしているが生活は豊かではない。俺は4000を超えるエレモンが居るが全員にいい生活をさせてやりたい。


 この島でただ生活をするだけでは足りないのだ。その為に種子を埋めていた。



 本来普通に育てたらもっと時間がかかる果実を、この時点で収穫できるとはね。



『あら、随分いい感じに実ってるじゃない。土もちゃんと耕した成果かしら? ファームモンとかも頑張って世話してるし』



 クイーンも俺の頭の上で感心したように木々を眺めている。


 未だ全部が実っているわけではない。それに木々はまだ10本ほどしか育っていない。まぁ、10本でも凄いんだけどな!!



「おう、収穫だな!」

『アンタの頭の上から応援してるわ』



 ファームモン、ガーディモン、武者マルが収穫を手伝ってくれている。育てたのはほぼほぼファームモンやガーディモンだ。


『ファームモンやガーディモンがもっと良い種子だったらもっと育ったし、レベルもダウンしてるからまだまだ改良の余地があるってさ』

「なるほど。種子にも良いとか悪いとかあるのか。そんなのはゲームにはなかった……だが反対にレベルは上がるほど育てる質はスピードが上がるのゲーム通りか」



 ゲームとは違う場所とゲームとは同じ点が混在しているのがこの世界だ。そう言った違いもノートとかに纏めた方がいいのだろう。



 そして、今回育てた果物。量的にはまだまだ足りないと言っても過言ではない。種子だってもっとあれば大規模に育てられるし。


 しかし、種子を大量に仕入れるにはどうしてもお金がいる。お金をどこから引っ張ってくるかが問題だ。


 エレモンバーサスでテイマーから巻き上げるのも効率が悪い気がする。それに時間効率が悪い気もするしね。


 大会でお金稼ぎは良い感じがする。ただ、それだけでも足りないんだよな。



「今は頑張って育てた果物を収穫だな! この後のことはこの後に考えれば良い! 今は喜ぶ時だ!」



 今回実がなったのは【デカイチゴ】。日本にあるイチゴにそっくりな木の実だ。

 

 そっくりだが日本のイチゴと違う部分がある。先ずは木の実である点、そして大きさが8倍ほどになってリンゴくらいに大きな木の実なっている点だ。


 デカいイチゴが木の実としてなっているイメージだ。



『おお! やるじゃない! 一本の木にかなりの数がなっているわ!』

「だよな! 島全体に一個ずつなら与えられるかも……」

『大体一個の木に400くらいなってるらしいわ。まぁ、ギリギリ難しいくらいかもね』



 量だけで言えば思っていたよりも多かった。一本の木からこれだけのデカイチゴがなるだなんて。




『ふーん、美味しそうじゃない。アムダ、アンタが王なんだから最初に食べなさい。二口目はクイーンであるアタシによこしなさい』



 お、俺が最初でいいのか? そう思ってファームモンやガーディモンを見ると食べろと言っているようにこちらをじっと見ていた。



 一口食べると……



「旨いな! こう、何て言うか酸味が絶妙だ。でも甘くて食べやすい!!」

『あら、それならアタシも食べようかしら』

「ほい!」

『もぐもぐ、美味しいじゃない! うーん、種子が良ければもっと美味しくなるなんてこれからが楽しみね』



 武者マルやガーディモン達もデカイチゴを食べている。全員が満足げだ。



「むしゃ!」

『美味しいって言ってるわ』

「ふぁむ? ふぁーむ」

「がでぃ」

『まだまだ改良の余地あるって。もう少し熟した時にとれば甘さがあって良かったって言ってるわ』



 クイーンの翻訳便利すぎだろ!? 武者マル、ファームモン、ガーディモンが何を言っているのか全てわかってしまうんだが!?



 しかし、かなり大量に仕入れられた。売るのもアリだろうか?


 それをまた種子の代金にすれば大きく島を発展させることも可能かもしれない。



「流石は俺のエレモンだな。さて、せっかくだからスイーツでも作ってみるか」



 ゲームでもスイーツを作ると言う要素があった。エレモン専用に【エレスイーツ】を作りエレモンに渡す。


 これをすると特定のエレモンは進化したり、高ランクのエレモンが言うことを聞いてくれる場合があったり、色々とある。


 ただ、一番大事なのはエレモンが単純に喜んでくれると言うこと。


 ならば作ってみるか。デカイチゴを使って!!



「ゲームだったらコマンド操作で全部できたけど、そうもいかないからな」

『アンタの家から器具とか持ってこないと難しいんじゃない? 料理って簡単じゃないわよ』

「だよな。それで家から持ってきた器具がこちらです」

『用意がいいわね。流石は王よ』



 まぁ、作ると言ってもそんな凝ったのは無理だけどな。だが、頑張ってみるか。


 デカイチゴだと……デカイチゴのタルトかな?



『イチゴ以外の材料は家から持ってきたのね。火は武者マルの火を使うなんて……アウトドアね』



 頭の上で解説をしてくれるクイーン。彼女の予想通り、俺は淡々とタルトを作ってみた。


 イチゴの材料ではなく、家から持ってきた材料の事情で10個しか作ることができないのが残念な点だ。



『使い終わった食器は水系統のエレモンに洗ってもらいなさい』



 お、おう。本当に心強いなぁ。この島では水系統のエレモン、ウォーターエレモン系に特にお世話になっているとっても過言ではない。


 4000体の現在の食糧は海の魚なのだ。この島は海の上に【テラゴラム】が作ってくれている。周りは海なのでそこで魚などをとってもらってそれを分配している。



 これもこの世界で気づいたことなのだが、豚や鶏、牛、魚が存在している。日本で生息していた食用の動物はそれなりに居る。


 しかし、それらとエレモンの違いは【魔素】の有無らしい。アクティブスキルを使う際に消費する【魔素】。


 これが存在する動物を【エレモン】としているとか。


 エレモンは知能がかなり高いらしい。人間よりも高い、または独自の言語に近い泣き声を持っていたりするらしい。


 まぁ、後は【魔素】を【炎】や【水】に変換する器官があったりする。


 謎が多いらしいけど、そう言うのを研究するのを【博士】って言うらしい。ゲームとかだと主人公をサポートするのが博士だったなぁ。


 未だにこの世界だと会ったことないけど。





「さて、お皿に盛り付けて実食だな。先ずは武者マル!」

「むしゃ!」

「どうだ! 食べてみよ!」

「むしゃむしゃ! むしゃー! む、むしゃ!!」




 おお、喜んでくれている気がする!! 次はクイーンに食べてもらおうかな



『いらない』

「え? なんで? ま、まずそう?」

『……クイーンであるアタシが最初に食べるべきなのに! なんで武者マルなの!』

「む、むしゃ?」




 お、おう俺も対応が困るけど……武者マルもなんか困ってしまってる。



「そ、そう言うなよ」

『いらない!』



 そう言うけど眼線はタルトに向いている。食べたいんだろうなぁ。でも、口元に持っていくとそっぽを向いてしまう。


 か、かわいい。なら、もう一回武者マルにあげようかなと思うが、またムッとする。



「ほれほれ」

『むむ』

「なら、俺が」

『あ、だめ!』

「じゃ、クイーン食べるか」

『いらない! い、いや、やっぱ食べる!』




 なんだかんだここまで長かったが食べさせることに成功した。



『んん! 美味しい!』



 おおう、なんだかんだでクイーンを満足させるのが一番大変だった。



 イチゴタルトはファームモンやガーディモンからも大盛況だったらしい。




『アンタには料理の才能があるんじゃない! 流石は王ね』




 うーむ、料理はコマンド操作だけだけどゲームでも沢山作ったからな。


 その経験値が俺に残っていた!?



 ……そんな訳ないな。単純に俺には【エレスイーツ】を作る才能があっただけか。



 スイーツ作るには果物以外にも材料費がかかるかぁ。


 やばい、何かをすればするほど課題が出てくる気がするんだけど



 だが、俺がやるしかない!! やっぱりお金がまずは必要だな。


 

 果物をどこかで売れれば……お金も稼げるか? よし、まずはやってみるのが大事か!

 

 どっか売れる場所がないか考えてみよう!










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る