第3話 これってパラドックスでは?

 あ、あぁ、やはり前世からの対人能力が影響しているのだろう。舌がうまく回らない。



「あぁ? 誰だてめぇ? ガイア帝国、パリパリの二等兵の俺に逆らうのか?」

「ふふ、二等兵の中で一番美人と言われた私にもね」



 言っていることは子供みたいだが両方とも成人を超えている。それに帝国と言ってもあくまで組織名として使われているだけで実際に国があるわけじゃない。



 だからこそ、二等兵も等級区分として言ってるだけで、彼等の組織内でしか意味を持たない肩書きだ。



 ──ガイア帝国。大地を支配したとされるエレモンを入手したい連中だな。まぁ、【テラゴラム】、俺の島を作ってくれたエレモンのことなんだけど。


 

 彼等は世界に一体しか居ないはずなのに、俺のとこの世界と合わせると二体になるのか。中々にパラドックスだね。




「あ、あぁー、えと、人のエレモンは勝手に奪っちゃいけな、い、って、てて、テイマーの、き、きしょに、基本にな、なってまして」

「あ?」

「何この子。あら、武者マルこの子も持ってるのね」

「よーしなら、バーサスだ。二対一で負けたらお前の武者マルももらう。まさか、卑怯って言わないだろ?」

「あ、はお、はい」




 ゲームの時だと一人ずつ戦っていたんだけどな。一人勝ったら、その後にもう一人戦う順序だったけど。


 でも、二対一だったから負けたのかね? 







 ──主人公【モエ】は?







「俺は【ブラックトカゲ】」

「私は【ローズマン】」




 うむ、エレモンの構成は同じなのか、こう言う場所はゲームと同じなんだなぁ。戦う場所も美次みつぎの町だし。



 使うエレモンは【ブラックトカゲ】と【ローズマン】。両方ともランク【E】なんだよね。


 武者マルは【D】基本的にランクで強さ決まるから、やはり二対一だったんだろうね。



 【ブラックトカゲ】四足歩行でデカいトカゲ、【ローズマン】は薔薇が頭、ツタが足と手を型取り、二足方向で歩くエレモン達だ。




「俺は、むむむ、武者、マルで」

「むしゃ!」



 【武者マル】頼むぞ! まぁ、勝つのは余裕なんだけどね。



 【エレモンバーサス】初めて生でするぞ!! やっぱり興奮してきたぜ!! 【エレモンバーサス】端的に言うとエレモン達を戦わせることだ。



 ゲームだと互いに一ターンに一回行動権利が与えられる。俊敏が高い方が先に動く、そして、【アクティブスキル】を使い相手を倒す。



ルール自体はよくある感じというか、途轍もないオリジナリティのある訳ではないが面白いっちゃ面白い。面白くないわけがないのだ!!



 結局王道だよね。





「ローズマン! アクティブスキル【ローズスプラッシュ】!!」

「ブラックトカゲ! アクティブスキル【暗黒ミサイル】!!」

「あ、武者マル。無効化して……スキルは使うな」

「むしゃー!」



 デカい薔薇と暗黒物質で形成されたミサイルが俺の武者マルに放たれた。しかし、武者マルは自身の刀を抜きそれを軽く払う。



「うあぁああ!? あ!? す、スキルが無効にされた!?」

「はぁぁっぁあ!? す、スキル使ってないのに!?」

「むしゃ!」




 【エレモンバーサス】はターン制のバトルゲーム。そう、ターンに一度ずつ攻撃するのがゲームでのルールだった。


 だが、一ターンに一回はゲームの話。現実でこれを行う場合ターン制バトルシステムは無くなっているようだ……


 ターン制がなくなってしまっているだなんて……! ゲームとは違うやり込み要素みたいで興奮するな!!




 おやおや、帝国の二人がびっくりしているぜ。武者マルもちょっとドヤ顔している。



「す、すごいぜ!? こ、この武者マル!!」

「な、なんてスピード!? 俊敏のステータスが高過ぎる!!」

「むしゃむしゃー!」





 【朗報】再度武者マル、褒められる



 敵のガイア帝国のテイマーに褒められて嬉しそうだ。可愛いぜ! あとでもふもふしながら抱っこしてあげたいぜ! 俺が誰よりも褒めてあげないといけないからな!!




「やぁるじゃねぇかぁ!! 流石武者マルだーーー!!」

「むしゃーーーーー!」




 そして、最後に俺が一番大きな声で褒めるぜ!!!!!


 おお、こっちの方に振り向いて褒められて嬉しそうにしている武者マルはかわいいなぁ。これで強いんだから無敵だよね。




 うーむ、それにしても俺はエレモンには堂々と話せるんだなぁ。それがよくわかった!!




「スキル使わず、そのまま攻撃! 弱めにね」

「むしゃ!」




 ゲームの時代だとターン制で【アクティブスキル】を交互に出し合うバトルシステムであった。だが、これが現実になるとターン制だなんてもんは消えてしまっているらしい。



 あまりにレベル差、ステータスに差があり過ぎると【複数回行動】をいともたやすく達成ができてしまうのだろう。こちらの武者マルは隠しステータスを上げ、レベルも限界マックス。



 スキルを使わず、ただの【攻撃】を弱めにするだけで勝負が決まってしまう。それほどまでに俺のエレモンが強いと言うことだろう。




 それに指示も細分化出来るのも発見だ。なんてもすることができる。



 アクティブスキルを使わない攻撃でも、ステータスに差があり過ぎると相手のエレモンが怪我ですまないだろうしな。ゲームならそんなの気にしなくてもいいんだろうけどね。




「……うそ、ワタクシの武者マルと俊敏が桁違い過ぎますわッ」




 あ、主人公である【モエ】が俺の武者マルを褒めてくれてる。確かに速度が全然違うのは俺にもわかる。手加減している、にしても武者マルは残像があり、動いた後にソニックブームが発生しているからだ。




「ちょい待て! ただの攻撃でそんな威力出るわけないだろ!」

「そうよ! おかしいわ! ズルしたわね」

「こんな奴に負けられないぜ! ブラックトカゲ、やってしま……なに! 既に倒されている……?」

「ローズマンまで……う、嘘ヨォ?」




 武者マルによって、ブラックトカゲとローズマンは既に倒されている。まぁ、こっちはゲームでも何回も倒してるから、スキル構成とか全部知ってるしね。


 それに単純にステータスが違うだろうし。



「おおおおい!? あぁああ!? そ、そ、入国以来負けなしだったのにぃぃぃ」

「あ、ありえない! わ、私のエレモンがぁぁぁぁ!!?」

「──負け台詞はゲームと同じなのか」





 あぁ、エレモンバーサスに負けるとこんな感じで敵キャラは捨て台詞を吐いて逃げていくよね。



 ガイア帝国の二等兵である二人は、大急ぎでエレモンをエレフォンに格納すると走って逃げていく。逃げ足の速さは流石だ。





「あ、あ、あなた、テイマーですの?」

「え、あぁ、あえ、ああ、は、はい」

「そう、ワタクシは【モエ】といいますわ。宜しくお願い致します。それと助けて頂きありがとうございました、助かりました」




 くっ、ここでコミュ障を発生させてしまった。ゲームのキャラとかどうだと関係ないんだよね。エレモン以外とは基本話せない系男なんですよね。



 で、でも、別に問題ないよね? 俺からしてもエレモンが一番大事だし、これからも一番大事だし、エレモンと楽しく暮らせれば問題ないわけだし?


 前世からの生粋のぼっちだし? て言うか、病弱で外出れてなかったし?


 でも、画面の中にエレモンがいたわけだし? 画面の中には4000体を超える友達が居たわけだし? 



 おお! これもうボッチじゃないね! 俺には友達がたくさん居たんだよね!





 俺の武者マルだって……あ、そういえばやっぱり主人公モエって名前なんだな。容姿も似てたし、武者マル持ってたしで察してたけど。


 それにしてもゲームと似てる容姿とシルエットだ。




 ──まぁ、それは置いておくとして彼女の武者マルは【戦闘不能】じゃねぇか。




 【戦闘不能状態】、バーサスにて負けるとエレモンがなってしまう状態。この状態になると戦闘をすることが不可能となり、回復をさせないといけない。



 細かいが単純に回復ではなく、一度【復活措置】をしなくてはならない。具体的にはエレフォンに【格納】をし、時間を置くこと。具体的に時間で一時間は必須。



 これをした後、回復のスキルなどを使って全快をするんだけど……




「あ、えと、武者マル。お、俺ので」

「え?」

「【ホーリーマジックマン】」

「っ! お父様と同じエレモン!!」




 【ホーリーマジックマン】ランク【S】。ランクも上から数えた方が早いので文字通り強力なエレモンだ。



入魂ソウル・ノウズ、から全快ライフ・オーバーで……」

「む、武者マルを一瞬で……よ、よかったぁ。ちょっと待て、【戦闘不能状態】って、回復のアクティブスキルって無効ですわよね?」

「あ、えええ、えと、一度【復活措置】が必要で、その、エレフォン格納の場合と、スキルで出来る場合もあって……そ、その」

「えええ!? あ、いや、お父様のホーリーマジックモンもそんなスキルは」

「あ、えと、本来なら覚えない、す、スキルで……え、映画のダウンロードコンテンツの【秘伝書】で覚えさせたって、言うか……そ、その」

「え? どういうことですの?」

「あ、いや、き、昨日はカレーを食べたって、言って、ました」

「嘘つくの下手ですの?」






 やっぱりエレモンじゃないと話せないなぁ。



 まぁ、放っておいても格納してれば時間経過で、彼女の武者マルは全快をしたんだろうけどさ。


 一応、主人公の武者マルって、言って終えば俺の武者マルと個体としては同じって言えるんだよね。


 だって、



 主人公である彼女が貰った【武者マル】。それは両親からのプレゼント。旅の門出を祝う新たなる友の出会い。


 俺もそうだ。これは彼女の両親からもらっている。細かいことを言うと【エレメンタルモンスターズ・パラダイス】は男主人公、女主人公を選べて、男を選ぶとオスの武者マル、女だとメスの武者マルが貰える。



 俺のはオス、彼女のはメス。性別的には違いがあるけど、なんて言うか同じ個体ともいえなくはない。



 ──その証拠に……両親から持った武者マルは特別なスキルと、特異な容姿をしている。



 武者マルは保持しているネコジャラシが刀身の刀。これの柄の部分が通常個体では緑なのだが、




 俺と主人公モエの場合は黄金色なのである。



 だからまぁ、変に俺の武者マルと彼女の武者マルを重ねてしまったわけで……治してしまった。


「むしゃ!」

「むしゃむしゃ!!」

「むしゃぁあ!!?」

「むしゃー」



 うむ、何を話しているか知らんが、彼女の武者マルが俺の武者マルに対して、何やら興味を持っているような感じがするな。



 同じ匂いがするのだろうか。まぁ、並行世界の性別違い同一個体みたいな? 最早別個体とも言えるような親戚個体だから、何かを感じるのか。


 そんなことがどうでもなくなるくらい、二匹が可愛い。


 


──エレフォンで撮影をしておこう。




 かしゃかしゃ!! 可愛いねぇ! かしゃかしゃ!! うむ、パソコンが欲しくなってきたな。このペースで撮影をしまくっていると、どうにも容量が足りなくなりそうだ。




「貴方様は、駆け出しテイマー……なのですわよね? 服も新品、て言うかジャージ……指示も辿々しいたどたどしいって言うか……何より年齢も同じくらいですの?」

「あ、え、あえと」

「名前は?」

「い、いや、あ、えと、しょ、初対面だし。知らない人に、個人の素性って言っちゃ、ダメだって、ま、ママと、パパが……」

「いや、旅出てる癖に何言ってるますの? 色んな人とこれから話してエレモンを知ったり、テイマーとしての成長のために競ったりする為に外に出たんですわよね?」

「え、えと僕は、し、島をは、発展させて、エレモンパラダイスを……」

「え? なに? 聞こえないですわ」




 あ、問い詰められてきた。




「あ、えと、そろそろ、帰らないと」

「あら、そうそうですの。今日はどこに泊まりますの? お礼に夕食出させてください。色々お話ししてみたいし」

「あ、えと、俺、一人が好きって言うか」

「武者マル一緒ですわよね」

「う、嘘でした。エレモンと一緒が好き、って言うか」

「ふーん、愛情たっぷりなんですわね」




 あ、あれ? 俺結構話せてね? おいおいおいおいおい、これはコミュ障を脱してしまったのでは?


 ふっ、やはり生粋の【エレパラユーザー】。この世界への適応力は凄まじかったんだろうなぁ?


 コミュニケーションに難があったのは俺のせいじゃなくて、日本の環境だったわけだ!!!



「まぁ、たっぷりって言うか?」

「そうですのね」

「クリームパンくらいたっぷりって言うか?」

「え、なにそれ、おもんな……ですわ」




 なるほど、やはりコミュニケーションに難があったのは俺の方だな。うむ、よくよく考えると日本の企業が【エレパラ】を作ってくれたわけだしね。


 日本のせいにするのは良くなかった。


 うん、やはり俺はエレモンと話す方があっているんだろうな



「じゃ、じゃ、帰ります」

「ちょと、もっと話を」

「あ、は、はい」

「……ちょっと! はいって言いながら距離をなんでとるんですの! ちょ、待て!」




 【ホーリーマジックモン】が背中に乗せてくれた。そして、俺は種子などを買い漁り、島に戻ったのであった。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る