第2話 原作主人公、遭遇する!?



  前世でプレイしていた【エレメンタルモンスターズ・パラダイス】、通称エレパラには【島クリエイトシステム】が存在していた。

 これは主人公が島を所有しており、その島を開拓したりする事ができる要素である。植物を育てたり、家を建てたり、エレモンを放って遊ばせたり、オープンワールド要素も含んでいた。



 なぜ、島を主人公が持っているか……初めてプレイした時は謎であったが後々、主人公の両親は有名なエレモンテイマーでありお金持ちだったと言うのがオチである。


 まぁ、島なんて普通は持ってないからね。やはり親のコネは最強なのか!? と思っていたのを思い出した。なんだかんだでこの【島クリエイトシステム】は人気だったので初作から次回作、最新作まで引き継がれていた要素だった。


 それゆえ、主人公の親は金持ち親だったり、別世界出身だったり、宇宙から来たりなど設定が盛られているんだけどね。まぁ、主人公だし、それぐらいは問題ないんだけどさ。


しかし、俺はそうではない。


じゃあどうするか?


答えは1つ!



 島など用意できん! ならば、使おうエレモンの力を!!






「──いくぞ! テラゴラム!!」

「GAalalalaaaaaaaaa!!」



 テラゴラムの頭の上に座って海を見下ろす。


 ふは!? す、すごいぜ!!



 怒号だけで海面が揺れてるぜ!! くはぁ! 流石は大地の神とか言われてるだけはある。



 ゲームでも一体しか捕まえられないレアエレモンだもんなぁ。





「──島を作ってくれ!!!」




 俺がそう言うと再び、大地……いや、世界そのものに訴えかけるような怒号が響く。




「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️▪️ッ!!!!!!」




 先ほどとは比べものにならないような雄叫びが響くと、




 世界が揺れた!!!!



「うぁ!? まじか!? じ、地震……いや、大地が盛り上がってるのか!?」





 テラゴラムを中心に大地が広がっていく。世界が揺れ続け、それと呼応するように島ができていく。



 丸く形作られ、気づくととんでもないほどの大きさの大地になっていた。





「──まじかよ……す、凄すぎるだろ……」






 暫く、唖然としているエレフォンに電話がかかってきた。


 母親からだった。




「もしもし?」

「今、すごい地震が海の方であったらしいけど大丈夫!? さっき海行くって言ってたわよね!?」

「あ、ごめん。大丈夫……心配ありがと」

「そう……まぁ、ニュースでも何の心配もないって言ってしね。よかったわぁ、でも気をつけてねぇ」





 親から心配されるのって嬉しいな。前世だと心配とかされたことないけど……




 それはそれとして……




「テラゴラム! ありがとうな!」

「GAalalalaaaaaaaaa!!」




 多分、俺のありがとうに対して、どうしたしまして! と言っているんだろう。テラゴラムのおかげで島の広さが十分確保できた。流石に今世の俺の親はいたって平凡だからね。まぁ、心配とかしてくれるから最高の親だけどね。





 この島に俺の4382体のエレモンを放っているわけだが……これではだめだ! もっと発展をさせなくては!! ゲームの追体験でわくわくしているが、それ以上に俺のエレモンが過ごしやすい環境にしなくてはと言う使命感が強い!!


 さて、先ずはテラゴラムが作ってくれた島の発展を進めていかなくてはならない。


 テラゴラムの頭から島に降り立つと……本当に立派な広い島だと分かる。凹凸はあるが、広く雄大な場所である。


 しかし、少し殺風景な気もする。



「先ずは植物とかを充実させたいな。ゲームの時は植物グラス系エレモンが島を発展させてくれてたけど……種子とかが最初は必要だし。そもそも4000を超えるエレモンの餌はどうしようか……島の周りは海だから魚取れるか」




 取り敢えず、種子とかはパパに頼んで買ってもらったし。これを植物系に渡してくるか。





「ファームモン! ガーディモン!!」

「ふぁむ!」

「がでぃ!!!」




 ファームモンは、果物や野菜を育てる力を持つエレモン。見た目は植物と動物のライオンが融合したような姿で、体のあちこちに果実や野菜の一部が生えている。




 顔は優しい表情をしており、背中には小さな畑のようなスペースがあり、そこからも様々な植物が育つ。




 ランクは【C】。



 ガーディモンはファームモンの進化系と言うこともあり、姿は似ている。大型ライオンが二足歩行で歩いて、背中に大きな枡みたいなの背負っており、そこに土が詰まっており野菜が生えている。


 ファームモンの進化個体なのでランクは【B】


 この世界でもエレモンにはランクが存在している。【E】、【D】、【C】、【B】、【A】、【S】、【G】、【L】の順でだ。ここはやはりゲームと同じなんだよな。


 因みに武者マルは【D】、この島を作ったテラゴラムは【L】だ。


 





「よーしよし! この島を発展させるため、お前達の力を借りたい! 他の植物系からも力は借りるが先ずはお前達だ! この種子を預ける! 沢山植えてくれ!」

「ふぁむ!」

「ふぁむふぁむ!」

「がーでぃ!」




 うむ、やはり何を言っているのかわからんが肯定はしてくれているらしい! ファームモンとガーディモンはゲーム時代でもお世話になった。


 島を発展させる際、エレモンの力を借りるのだが植物を育てる際は植物系エレモンの力が必要不可欠なんだ。植物は育てると売ったり、エレモンに持たせてネット対戦で使ったり、色々と出来る。


 だからこそ、植物系は重宝していたのだ。高レベルになるほど植物を作るスピードが上がったり、純度が高いのが実ったりするからね。


 ファームモンは殆どが70から90レベルで一体は120にしてる。ゲームのストーリーなら70レベル一体だけでもクリアは余裕だ。それが50体いるのだから圧巻の光景だ。


 ガーディモンも同じように50体。一体だけ120レベル。他個体のレベル帯も似たような感じだ。



 ゲームでは、個体それぞれに役割が与えられていた。例えば、ファームモンは植物を育てるのが得意なのだが、種子から苗までが特に顕著なのだ。


 逆に進化系のガーディモンは苗から先、実をならしたり、花を咲かせるのに特化している。


 なので、ファームモンに先に苗まで育ててもらった後、ガーディモンに育ててもらうのが純度の高い植物を育てるのが通例である。




「がでぃ」

「ふぁむ」



 まぁ、今回は本当に未開拓の島なので耕したり色々あるので両者の力を同時に借りるのだけどね。


 【テラゴラム】が作った島は思っているよりも大きい。だが他にも植物系のエレモンは居るしな。なんとかなるだろ!!


 俺のエレモンは強いしな!!




「だが、お前達だけに働かせ、主人の俺が手伝わないわけにはいかん!! 俺も種子を蒔くぞ! その前に土を耕す!!!」




 ──俺は島を発展させるために駆け出した!!!!







◾️◾️




「う、うぅ、体が痛い……き、筋肉痛が……くっ、所謂引きこもりの弊害がこんなところで出てしまうとは」

「アムダ、起きなさい。まったく旅に出るって言っても一週間に一回は帰ってきて、お昼まで寝るなんて。お父さんと私を見習いなさい! お父さんと私は家に帰るなんて一年に一回くらいだったわ」




 そういえば、ゲームでも10歳を超える頃には、テイマーの資格を持っている子供は旅に出ると言う設定があったな。


 初代主人公は12歳だったか。



「むしゃ!」

「あら、武者マルちゃん! アムダを起こしに来てくれたのね! こらアムダ、武者マルちゃんの方がしっかりしてるじゃない! 朝なんて庭の雑草を炎で焼いてくれたのよ。それなのにあなたは寝てるし」

「はいはい、うるさいって。もういいから」

「全く……それにしてもアムダ。武者マルなんてどこで捕まえたの? これって他の国の近辺に生息してるエレモンじゃない」

「……あー、なんか。居たわ」




 武者マルって、生息地域はこの辺じゃないんだよなぁ。初代主人公は最初に三体の中から一体エレモンを親から授かるんだけど、それって両親がすごい有名で強いから他の国の持ってるんだよねぇ。


 でも、俺の両親は普通の庶民だし。庶民の息子、しかも駆け出しテイマーが武者マルを持ってるのは不自然かもしれん。




「へぇー、住む地域が変わったのかしらね? カツタマ博士に報告してみたらどうかしら?」

「いいよ、面倒だし」

「報告したりして有益だとお金とか貰えるわよ。旅のお役立ちグッズとか」

「いいよ、いらんし」




 下手に報告して目立ったりしてもねぇ。武者マルは俺がゲーム時代に丹精込めて育てたエレモン。しかも、この個体は初めて俺が手に入れて、入念に育てまくった限界突破強強強個体だ。



 普通と違うからね、研究対象とかにされても困る。



「それじゃ、アムダ。次帰ってくるのはいつ?」

「そうだね。一週間後かな」

「また!? 旅してるのよね!?」

「いいじゃん。別に。可愛い息子が帰ってくるんだよ!」

「確かに可愛いけど……わかったわ。カレー作って待ってるわね」




 まぁ、島に行ってテレポート出来るエレモンの力で往復するだけなんだけど。さて、また島に行って植物の栽培を……あ、その前にまた種子を買いたい。



 隣町に行って買ってくるか




「ついてこい! 武者マル!」

「むしゃー!」




 やはり武者マル。可愛さにお前に右に出るのはいないぞ!!



「あー、そういえば武者マルはエレモンバーサスしたい?」

「むしゃ!」

「したいのか」



エレモンバーサス、エレモン同士を戦わせる事だけど。俺の武者マル、隠しステータスも与えて、強過ぎると思うんだよな。



ゲームなら倒した! で終わるけど、現実だとどうなるか分からん。強過ぎて大怪我させる可能性もあるしさ。




「あ、美次みつぎの町に着いたぞ。花屋で種子を買って……」

「ガイア帝国が出たぞ!!!」

「ん?」




 ガイア帝国って言ったか? あれだ【エレメンタルモンスターズ・パラダイス】、最初の作品に出てくる敵のグループの名前だ。




「へぇー、ちょっと見てくるか」

「むしゃ!」

「お前が覚えてるか分からんけど、俺とお前、この町で一緒にガイア帝国の下っ端をここで倒したんだぜ?」

「むしゃー!」

「ううむ、ゲーム時代を覚えてるのか?」

「むしゃむしゃ!」



 へぇー、ゲームの時代を覚えてるのか。ゲームなら俺の姿は【男版主人公】だったはずだけど……まぁ、なんとなくわかるのか? 


 ゲームでも名前は【アムダ】でやってたし。



「ククク、負けたな。エレモンテイマー。お前のエレモン。武者マルはもらっていくぞ」

「ふ、ふざけるなですわ! 誰が渡すもんですか!」




 あれ、もしかして……あれは主人公ではないか! 男版と女版が選べるようになってたけど、この世界では女の子版になっている。



 へおー、本当に主人公は存在したんだ。



 

──女の子版主人公はゲームだとデフォルトネームで【モエ】だったかな?




「懐かしいなぁ。ここでガイア帝国倒したの。さて、武者マル。島の発展に戻ろうか」

「むしゃ!!?」

「あー、うん。助けてあげたいんだなぁ? うーん、まぁ、俺からしたら俺のエレモン以外はどうでもいいんだけど」




 よーく見ると主人公エレモンバーサス負けちゃってるのでは? ゲームだとゲームオーバーでセーブ後に戻るだけど……あー、このままだと武者マル取られてしまうのか




「ううむ、しょうがない。一応、今回だけ助けるか。懐かしいし」

「むしゃ!」

「久しぶりに一緒にガイア帝国と戦おうじゃないかぁ!」

「むしゃあああああああ!!!」

「あ、そんなに嬉しいのね」




 ──よーし、どうせならカッコよく登場してやる




「あ、あ、ま、待てぇー」

「あ?」

「だ、誰」

「そそそそs、その、武者マル、か、返して、もも、貰おうかぁあ?」





 あ、しまった、前世ではずっと病弱。今世でも引きこもりでテイマーの資格勉強。


 ずっとぼっちであったせいで、対人会話能力が途轍もなく落ちている。エレモンと家族なら問題ないけど。


 ──ほ、他の人間だと緊張で舌が回らない!!






◾️◾️




 負けた……負けた。




 お父様とお母様から貰った武者マルも取られて……



 ワタクシは……お父様とお母様みたいにゴッドリーグで活躍して、世界一強いテイマーになるって……決めてたのに




「あ、あ、ま、待てぇー」

「あ?」

「だ、誰」

「そそそそs、その、武者マル、か、返して、もも、貰おうかぁあ?」



 ──その日、ワタクシは運命と出会う。



 

 ボサボサの銀髪が目元まで伸びている男。歳は同じくらい、伸びている髪からは青い瞳が見えた。


 黒いジャージで黒いマスク。オドオドしている弱そうな男。




 ──だが、彼が持っているエレモンを見て戦慄する




「武者マル……?」




 ──彼は駆け出しテイマー、に見える。だが、ワタクシと同じ武者マルを持っていた。この辺だと生息してないのに。



 偶々、持っているだけの少年なんだろう。




 だが、この後に思い知る。ワタクシの、いやワタクシと武者マルの遥か先をいく




 ──もしかしたら、お父様やお母様よりも強いテイマーとエレモンの力を











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