第11話 髪を乾かしていきますね~


「じゃあ、最後の仕上げをする前に、髪を乾かしていきますね~」


(コンセントを嵌める音)

(スイッチの音と共に、ガーッと暖かい風の音が近くで鳴り響く)

「熱かったら言ってくださいね~」


(ゴーッという音と共に熱風が吹き、主人公の髪を乾かしていく)

「ふふっ。ドライヤーをかけている時って、会話が聞こえないことが多いわよね~」


「それを利用して、何か悪戯しないのか?

 ……もう、そんなことするはずないじゃないの~。

 むしろ、悪戯の方が、色々気付かれたり聞こえやすいんじゃないかしら~」


「でも、実際本当に何度か聞き返しちゃうことってあるのよ~。

 相手も、何度も聞き返されたら困るでしょう?

 どうしたら、もっと聞き逃したりしなくなるのかしら~?」


「……もっと近付けばいい?

 でも、それでさっき、胸を当てちゃったじゃないの~。さすがにもう気を付けるわよ~?」


「やってみれば良いって……もう。

 確かに、あなたなら危険を察知して回避してくれるでしょうけど。……それって本当にあなた限定よね~」


「それに、近付き過ぎたら、不快に思う人もいるわよね~?

 どれくらいなら大丈夫なのかしら~」


「聞き取れないのが普通なんだから、気にすることはない?

 それはそうかもしれないけど。

 ……あら、なあに? 何て言ったの?」


「……聞こえないわ~。本当に何て言っているの~?」


「……。……他の人には絶対にやるな?」


「どうして聞こえたのかって?

 もう、悪口言ってるのかと思って、鏡越しに唇を読んだのよ~。

 ……悪口じゃなかったけど、……何だか恥ずかしくなっちゃったわ~」


「……ある程度聞き取れないのは、諦めるわね~」


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