第10話 次は眉を整えていくわね~


「じゃあ、次は眉を整えていくわね~。希望はあるかしら~?」


「……え? いつも通り? もう、カットについてもそう言ったじゃないの~。

 あなたの眉をいじるのは初めてなのよ~?」


「……整えるだけで良い? じゃあ、ちょっとだけ触らせてもらうわね~」


(ぱちん、と前髪をまとめて留める音がする)

「じゃあ、やっていくわね~。……って、あらあら、動かないでちょうだい」


「……え? くすぐったい?

 それ、さっきも言っていたわよね~。そんなに私の触り方、おかしいのかしら~……」


「……え? 違う?

 ……何だか恥ずかしい?」


「……。……そう言われちゃったら、私も恥ずかしくなっちゃうわ~。

 もう、こんな時に言うなんて、反則よ~」


「……変になったら、責任を取ってね~」


「え? 責任を取るのは私?

 ……確かに、そうよね~。

 もう、あなたが変なことを言うから、私まで変になっちゃったじゃないの~。

 ……そっちの責任は取ってね~」


(ざざ、ざざっと眉を剃っていく音)

「……間近で見ると、とても綺麗ね~。

 長さも、私よりもあるんじゃないかしら~」


「……え? くすぐったい?」


「……それに、吐息もかかって更にくすぐったい?

 ……あらあ、ごめんなさい。黙るわね~」


「……ミントの香りがした?

 ふふ、そうよ~。口臭ケアもちゃ~んとしているのよ~」


「えらい? まあ、褒め上手ね~。おだてても何も出ないわよ~」


(静かな空間に、眉を剃る音)

(合間に、しばらくほんの少しだけ二人の静かな息遣いの音も一緒に間近で響く)

「……うん。出来たわ~」


「変になってないかって?

 大丈夫だと思うけど~。……どうかしら~……」


(近くから鏡を取り出す音)

(そのまま、顔の近くに持ってきてくれる)

「……大丈夫? そう、良かったわ~。

 やっぱり顔は一番緊張するわね~。眉の整え方次第で、だいぶ顔が変わっちゃうもの~」


「そう? 気に入ってくれて良かったわ~。

 だって、あなたのこの凛々りりしい眉、私は好きなんだもの~」


「って、あら? どうして顔を隠すの?

 私の好きな眉が隠れちゃうじゃないの~」


「え? 恥ずかしい?

 ……顔がまた赤いわよ~。

 もう。……私まで何だか恥ずかしくなっちゃうじゃないの~」


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