第8話 リンスをしていきますね~


(きゅっと、シャワーを止める音)

(ぱんぱんと近くでタオルを叩く音)

(その後、棚の開閉の音がし、足音が近付いてくる)

「一回、軽く拭きますね~」


(ぱんぱん、と軽い音と共に主人公の頭をタオルが包み込んでいく)

「……うん。これくらいかしら~。じゃあ、リンスをしていきますね~」


(きゅぽっと、何かを開ける音)

(そのまま、手をこすり合わせる音)

(その後、わしわしっと、頭を揉む様に全体に音が広がっていく)

(しばらく、その音だけが室内に響き渡る)


「……冷たい?

 ふふ、そうね~。私もリンスをしてもらう時、ちょっぴり冷たいって思ったりするもの~」


「……え? 何かしら~?」


「……もしかして、背が低いのが問題じゃなくて、かがみすぎる癖があるんじゃないかって?」


「……確かに~。言われてみれば、そうかも~」


「……だから、台が無いと胸が当たっていたのね~。気を付けなくちゃ~」


「でも、よく気付いたわね~。

 ……え? そういえば、昔から近すぎるって思ったことがある?

 そうだったの~。言われないと気付けなかったわ~。ありがとう」


「でも、どうして今?

 ……考えてた? そこまで背が低くないはずなのに、どうして台が必要なのかって?

 ……もう、真面目ね~(嬉しそうな声)」


「ふふっ。それだけ私のこと考えてくれてたのよね~。

 ありがとう。嬉しいわ~」


「……って、あら? またくすぐったいかしら~?」


「え? 違う?

 じゃあ、動いちゃ駄目よ~。リンスを今から洗い流しますからね~」


(しゃあっと、シャワーの音)

(かこん、と栓をする音が頭から聞こえる)

(しゃあああっとお湯が溜まっていく音)

(きゅっとシャワーを閉じられ、ぱしゃぱしゃっと、頭にお湯がかけられていく音が何度も響き渡る)


「顔にかかったら言ってね~」


「大丈夫? 良かったわ~。じゃあ、このまま続けるわね~」


(しゅぼっと、栓が抜かれる音が頭でする)

(ごぼごぼっと水が流れていく間にも、ぱしゃぱしゃっと何度もお湯が頭にかけられる)


「……ふふふ。気持ちいい? 良かったわ~。

 リンスの時にまでそう言ってもらえるなんて、光栄よ~」


(ぱんぱん、とすぐそばで軽く何かを叩く音)

「じゃあ、蒸しタオルをしていくわね~。首の裏に置きますから、頭をちょ~っと失礼しますね~」


(ごそごそっと頭を持ち上げられる音)

(首の下に柔らかな熱を感じる)

「じゃあ、目の方も蒸しタオルしていくわね~。熱かったらちゃんと言ってね~」


(ガーゼを取られ、主人公の目元に蒸しタオルが置かれる)

(視界が暗い中で、棚の開閉する音)

(手を拭く音がした後に、また棚の開閉する音)

(わしゃわしゃっと髪を拭かれていく音が響く)

「痛かったら言ってくださいね~」


「……大丈夫? じゃあ、ここまで完璧に力加減は出来てるわね~」


「……え? 昔のことを考えると信じられない?

 もう、またそんな意地悪を言うんだから~。私がわざと手元を狂わせるって考えないの~?」


「……私はそんなことしない? ……それはそうなんだけど~。

 ……何だか、すごく信頼されてるのね~。悔しいような、嬉しいような……。ずるいんだから~」


「……それに、マッサージも最高だった?

 ……本当にずるいんだから~。……でも、ありがとう。自信が持てそうだわ~」


「じゃあ、椅子を起こしますね~」


(ウィーン、と椅子がゆっくり起き上がる音)

(わしゃわしゃと、髪を拭く音)

「お疲れ様でした~」


「……ふふっ。そんなに気持ち良かったかしら~? 顔が緩んでいるわよ~」


「え? 気のせい?

 もう、あんなに気持ちいいって言ってくれたのに~」


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