第7話 流していきますね~


「じゃあ、流していきますね~」


(じゃあっと、シャワーからお湯が噴き出す音)

(じゃばじゃばっと、頭を洗う音)


「熱かったら遠慮なく言ってくださいね~。

 耳に入ったりしても言ってくださいね~」


「……え? 何だかくすぐったい?

 そう言われても~。耳の裏も流さなきゃならないから、少し我慢していてね~」


(耳元でぱしゃぱしゃっと、手で丁寧に洗われる音)


「昔はカットしかしてなかったから、こんな風にあなたの髪を洗うのは初めてよね~」


「もし洗うところまで練習していたら、耳の中に水が入ったりして大変だったかも~。やらなくて正解だったわね~」


「……もう。その通りって。

 少しは優しい言葉をかけてくれてもいいのよ~」


「……わかっているわ~。

 昔、初めてあなたの髪をカットした時も、散々だったもの~。

 きのこカットだって言われて、笑われちゃったわよね~。

 私はあの髪型も好きだったんだけど~、……でも、失敗したとは思っていたわ~」


「……あの時は、本当に悪かったと思っているの~」


「私が切ったって言えば良かったのに。

 あなたは、最後まで私には何も言わせなかったわよね~」


「……本当、普段は意地悪なのに、変なところで優しいんだから~」


「でも、あなたのおかげで、失敗を恐れないで頑張れたのよ~。感謝しているわ~」


(もぞもぞっと、主人公が動く音)

「って、あら? どうしたのかしら~。もしかして、耳に水が入っちゃった?」


「え? 違う? じゃあ、動かないでね~。

 私、まだ見習いなんだから、水が入っちゃうかもしれないわよ~」


「店長だったら、どんな相手でも神の如く対応できるんだけどね~。

 私はまだまだあの領域にはいけないわ~」


「ほらほら、じっとしてね~。最後まで洗い流しますからね~」


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