第5話 次はシャンプーをしていきますね~


「次はシャンプーをしていきますね~」


(わしゃわしゃと頭を洗う音)

(しばらく黙々と響く)


「力加減はいかがですか~?」


「ちょうどいい? 良かったわ~。

 これも、だいぶ色々指摘されたのよ~。

 痛い痛い痛い痛い、とか、触られてるのが全然わからない、とか」


「え? 昔から、力加減が下手くそだった? 怪力だし?

 そ、そんなことないわよ~。あなただって、何かをつかむ時の力、強かったじゃない」


「え? 私は次元が違う? もう、意地悪ね~。

 怪力も、女性に言う言葉じゃないわよ~」


「……え? でも、気持ちいい?」


「そっか~。気持ちいいなら良かったわ~」


「私、人に頭をこうして洗ってもらうのって好きなのよ~。

 だって、気持ちいいじゃない? 自分で洗うよりもずっと気持ちいいし、店長の洗い方なんかは最高なのよ~」


「だから、私の洗い方で相手が気持ちよくなってくれるのは嬉しいわ~」


「……え? 私の洗い方は最高?

 ……もう、そんなに急に褒めないで。照れちゃうわ~」


「あなたって、昔から意地悪だったり優しかったり、わからない時があるわよね~」


「でも、意地悪だけど、……優しいのは知っているわ~。

 ……美容師になりたいっていう私の夢、最初に応援してくれたのはあなただったから」


「嬉しかったのよ~。最初に、私は不器用過ぎるからって反対していた家族のことも、一緒に説得してくれて。

 ……ううん。私よりもずっとずっと、力説してくれていたわよね~」


「本当に嬉しかったのよ~。

 だから、何が何でもなってやる、って頑張れたわ~」


「あら? もしかして、照れてるのかしら~。

 ふふっ。たまには私も、意地悪できたわね~」


「あ。かゆいところは無いですか~?」


「え? かゆいところだらけ? もう、やっぱり意地悪なんだから~」


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