第4話 首は苦しくないですか~?
(シャンプー台の椅子に主人公が座る)
(ぱたん、と後ろで軽く棚を閉める音)
(こつこつと、足音が近付いてきて、右斜め後ろで止まる)
「じゃあ、タオルを巻くわね~。
……首は苦しくないですか~?」
「そう? 良かった~。最初の頃は締めすぎて怒られちゃったの~」
「え? 私らしい? もう、昔から意地悪ね~」
「じゃあ、椅子を倒しますね~」
(ウィーン、とゆっくり椅子が倒れていく)
(女性が頭を支え、主人公の頭をゆっくりシャンプー台へと導いていく)
「頭の位置は大丈夫ですか~?」
「良かったわ~。
じゃあ、ガーゼを顔に乗せるわね~。……どうかしら~」
「ばっちり? よかったわ~。お墨付きをもらえたなら大丈夫ね~」
「最初の頃は、頭を洗っていくうちにだんだんズレていっちゃって、大変だったの~。だから、店長にコツを教えてもらったりしてね~。
店長は全然ズレないのよ~。すごいでしょ~」
「え? 私は今から結果が出る?
そうよね~。頑張るわ~。まず、軽くお湯で洗い流すわね~」
(じゃっと、シャワーからお湯が流れる音)
「お湯加減はいかかですか~? 熱くないですか~?」
「ちょうどいい? 良かったわ~。
最初の頃は、冷たすぎたり熱すぎたりして、店長や同僚さん達に笑いながら文句を言われたから~」
「……どうしたの~? やっぱり熱いかしら~」
「……え?」
「当たってる? 何がかしら~」
「……。胸?」
(数秒、水が流れる音だけが響く)
「……あら~。ごめんなさい」
「そっかあ。だからみんな、私には踏み台を使えって言ってたのね~。
……もう、みんなはっきり言ってくれればいいのに~」
(シャワーの音が止まる)
「ちょっと待っててね~」
(たんたんと軽く段差を降りる音。遠ざかっていく)
(また、たんたんと軽い足取りが近付き、主人公近くの下で、とん、と何かが置かれる音)
(少し離れた場所で水が流れ、手を洗う音)
(きゅっと閉められる音がして、水が止まる)
(少ししてから、たん、と主人公の下の方で女性が上る音がする)
「お待たせ~。再開するわね~」
(じゃ、と再びシャワーが流れる音)
(じゃばじゃばと主人公の髪を洗う音が聞こえてくる)
「今度はどうかしら~」
「大丈夫? 良かったわ~。……私、そんなに背が低いのかしら~」
「……え? 怒らないのかって?
いやね~。だって、わざと触ったわけじゃないでしょ~?
むしろ私が当てにいっちゃったから~。そんなことで怒ったら理不尽じゃない」
「え? 語弊がある?
そうね~。私も当てにいったわけじゃないものね~」
「でも、言ってくれて助かったわ~。
そうやって、怒られるかもって思いながらもちゃんと指摘してくれて、とても嬉しいわ~」
「そうよ~。……私にとってはやっぱり、あなたは一番信頼できる人ね~」
「って、あら? どうしたの~? 首が苦しかったかしら~」
「え? 違う?
あんまり動かれると、さすがに水が顔にかかっちゃうわ~。じっとしててね~」
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