第3話厭な道
僕の心のどこかで、言葉が聞こえる。
厭な道を歩き、かの厭な建物に入り、厭な注射を打たれ、処方せんをもらい、かの厭な白い錠剤を服用する。
錠剤を飲むもうとすると、もう一人の僕が飲んではいけない!と言う。
片手いっぱいの白い錠剤を飲むと、どっと眠気が襲ってくる。
薬が処方された半年間は昼間も眠たくてしょうがなかった。
耐えられず寝ていると、家人から怠け者の烙印を押される。
クソ義弟は、僕に働かない事を説教するがこっちは病気。お前だって、働いていないではないか。
この結婚は失敗だった。だが、唯一良かったのは、優しい息子がいること。
僕は夢を見る。
会社の夢を。
いじめられ続けて、崖から身を投じる夢だ。
うなされて、起きる。
寝汗をぐっしょりかいている。シャワーを浴びて、ハローワークに行く。
探せど探せど、仕事は見つからない。
ハローワークの職員が僕に声を掛ける。
「あなたは、毎日いらっしゃいますが、障がい者の方ですか?」
「はい」
「専門援助部門があるので、そこでお話しされたら」
と、職員は障がい者専門窓口を案内した。
「仕事が無いんです」
「では、働きながら仕事を探されては。半日仕事ですが、A型施設はどうでしょうか?」
「A型施設?」
「はい。障がい者専用の職場です。ここで、半日働いて、仕事をさがされたら。ちょうど、オープンしたばかりのA型施設を案内出来ますが!」
「お願いします」
と、職員は「あさがおワークス」に電話した。
厭な道を歩き、厭な階段を駆け降り、厭な満員電車にのり厭な建物にはいると、若い男がいた。その人は、僕の履歴書を読む。
スーツ姿の僕は汗を拭きながら出されたお茶を飲んだ。
若い男はいくつか僕に質問して、即日採用。
翌日から働き出した。
最初は4人スタートだった。今は、30人の仲間がいるのだが。
僕は障がいを受け入れるのに大変時間を要した。
未だに納得していない。だが、夜ベッドの周りを少女が笑いながら走り回ったり、知らないオジサンが乗っかってきたり。
僕は病気であることを悟る。
そして、厭な錠剤の力を借りる。
それから、この厭な物語はじまる。
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