第2話過去

僕は23歳で、入社試験と2度の面接である会社に入社した。

テストの採点で配属先が変わる。テストの上位2%が配属されるの課に所属した。

最初は無我夢中だった。多少のイジメも我慢した。

僕の課は、K大学卒の1歳年上の人間と、D大学中退の僕しか配属されなかった。

送り先の新車の輸出の自動車に先輩の指示で白テープをワイパーに付けていた。

メモ帳には、韓国なら赤テープとメモしていたのだが、僕らは白テープを付けていた。

後から確認した先輩が、烈火の如く怒り狂う。

「韓国は、赤だろ?お前ら、何をメモしてんだ、馬鹿」

そいつは、高卒だ。だが、主任。

僕は大学1年で中退したから、身分は高卒だ。だが、大学受験の過酷さは体験している。

皇宮警察、警視庁、税関職員、全て落ちた。

地元の市役所は合格が決まっていたが、断った。

野心が働いたのだ。よそで成功すると……。


会社の朝は早い。

現場仕事が多かった。6時半に出社して、7時から仕事を始める。

FAXで来た書類と、メールで届いた作業書類を印刷して、現場に向かう。

金城ふ頭で、作業する。主に、中古車の輸出が仕事だった。昼の作業を終え、17時に帰社すると、夜の船が待っている。

今の世の中じゃ考えられない仕事内容だ。


仕事を終えて、その夜の仕事の親方が書類整理している間に僕は晩飯を食べる。

木戸と言う50代の男が夜の仕事の責任者だった。決まって、火曜日と木曜日は夜勤だった。若手も多かったが、皆んなが嫌がるこの仕事は神戸からの転勤族と新人の仕事だった。

それが、4年間続いた。

ある日、木戸さんが病気で倒れた。夜勤の仕事に精通した社員がいない。

そこで、僕に白羽の矢が立った。

僕は監督として、夜の仕事をした。

ランバーと呼ばれる木材や、パルプ、コンテナの上げ下ろしの書類を作成していた。

朝は早くて、夜が遅くなるといよいよ体調が悪くなってきた。

どんなに疲れても、眠れなくなったのだ。

睡眠薬を知ったのは、19年前の26歳の時。

仕事も1ヶ月間休む事もあった。

昔からの上司は、「考え過ぎるな」と、言ったが僕には耐えられなかった。

給料もピンハネされていた事も知った。体調があまりに酷いので、大学病院を受診すると、

「坪井さんは、統合失調症ですね」

と、若い女医に言われた。付き添いの彼女に入院セットを準備してもらい、その日に措置入院となった。

間もなく、会社は退職した。僕をイジメていた柴川係長は退職の挨拶の時に説教を始めたので、椅子を蹴り上げて会社を後にした。

最後、会社のビルに深々と頭を下げた。

仲の良かった社員は全員、退職の日は僕を無視した。腐った会社だった。

だが、一時はこの会社を恨んだが、この病気はどこにいても発症するわけで、睡眠薬とイジメとストレスだけで発症したとは言い切れない。

それでも、この会社が大いに病気発症の原因を担ったと言えよう。

そう言う理由で、僕は精神障がい者となったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る