ホワイト・タブレット

羽弦トリス

第1話夜中

僕は決まって、夜中の1時半付近で目が覚める。

歯磨きして、ヒゲを剃り、小説サイトに文章を載せるのがルーティンになっている。

睡眠薬は決まって4時間しか保たない事に最近気付いた。小説サイトには、底の浅いミステリーや日記の様なエッセイしか書いていない。今日は月曜日。土日明けの1番気怠い日。

エッセイを書く。

少ししてから、昨夜買っておいたアイスコーヒーを飲む。冷たい苦水が喉を流れる。

タバコに火をつけた。

狭い賃貸マンションの一室で喫煙するので、部屋はヤニだらけだ。

1時間程執筆して、夜中の3時前に友達の小林紗千に電話する。

小林は僕の友人で大阪に住んでいる。僕は出身は鹿児島県だが、仕事の都合で名古屋に引っ越し、今の生活を送っている。

20代、頑張り過ぎた。働き過ぎた。結句、統合失調症を発症させて、人生が大きく変わった。会社は、恨んでいない。20年前の会社は相応の理不尽がある事は知っている。だから、6年間我慢した。

だが、その前に僕の精神が瓦解した。

これでも、結婚している。だが、別居。

それは、嫁さんの賢い選択であった。


電話に小林が出る。

音楽を聴いているらしく、煩かった。彼女は、トランスジェンダーの女性だ。

僕はハイライトに火をつけて、話し出す。 

下らない話しばかり。

向こうは、昼夜逆転の生活をしている。音楽を聴きながらゲームをしているようだ。

彼女は僕の事を『先生』と呼ぶ。それは、彼女なりの遠慮であり、また、意味の分からない知識を豊富に持っているので、そう呼ぶのだ。

僕は45歳だが彼女は50代後半。

1時間程話して電話を切る。そして、朝の薬を飲む。

精神安定剤が20錠、その他の疾患で朝は40錠ほど飲む。

いつか、薬剤師に尋ねた。

「こんなに、薬を飲んで病気は治るんですか

?」と。

薬剤師は、

「あなたは、薬を飲まないと病気が酷くなりますよ」

と。その薬剤師は、今年の7月亡くなり、薬局は閉店した。

まだ、60代と言っていたが、薬を処方している人間が早逝とは。

僕は6時半になると、着替えた。黒のスラックスに長袖のワイシャツ。長袖のワイシャツは夏でも着ている。

職場の冷房は効かない日はとことん効かないが、効く日は寒い。

この温度調整は、色んな人間がいるから温度調整が難しいのだ。

着替えてから、1時間ぼーっとして8時半のスマホのアラームが鳴ると家を出る。

マスクをしてイヤホンを耳にして出勤。

目が悪いので、サングラスをかける。サングラスは必需品で、糖尿病の症状は目にも来る。

仕事中も、サングラス。

会社は、電車と徒歩で45分の場所にある、「あさがおワークス」。

障がい者の施設だ。通称、″A型施設″。 

ここで、4時間の仕事をするのだ。出勤すると、いつものメンバーと話す。

これが、僕の日常だ。

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