第4話 愛と心音


 彼は歩きながら、さっき出会ったばかりのご老人の心臓の音が、はっきりと彼の心に響いてくるのを感じていた。


 心臓の音というものは、その人の胸に手を当ててみなければ聞こえないようなものだけれど、彼は今はじめて、手を当てずとも相手の心臓の音が聞こえてくるような瞬間があることを、体感したらしかった。


 そうして彼は考え出した。……


 「愛というものも、こんな風に、手を当てずとも互いで互いの心臓の音を感じ合えるような、言わば強く相手の生の認識しあえる関係なのかもしれないなあ」

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秋の男 夢ノ命マキヤ @yumenoto

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