第42話 ルガール
「ここがスニッフが言っていたレイダーの縄張りか」
「確かに縄張りだな」
ルイ達がやってきたのは、ウェストランドに良くある廃墟ビル郡。
アステリオスは廃墟ビル郡の所々に人間の体の一部で作られたトーテムが飾られている。
「ここから連れ去られた社員さんを見つけるのは骨だな」
『そこのキャンピングカー、あんたらもエクスプローラーかい?』
運転席から廃墟ビル郡を見上げていたルイの
「誰だ?」
『こっちはCランクエクスプローラーチーム雷電だ』
ルイが応答すると、相手側はホログラム画面に顔を表示させて会話を続ける。
ホログラムに表示されたのは軍服姿の金髪の眼帯をした女性。
企業軍上がりのエクスプローラーかとルイは予測する。
『私の名前はカロン。エクスプローラーナンバーも送るから照会してくれ』
「こっちはDランクエクスプローラーのルイだ、こちらもナンバーを送る」
エクスプローラー同士がウェストランドやダンジョンで出会った場合、敵意かないことを証明する一環で自分の登録ナンバーを提示する暗黙のルールがある。
これをしないと相手側に敵意ありとみられてり、ナンバーを提示して襲ったことが発覚すればエクスプローラー界隈では色々と不都合が多くなる。
『我々は依頼を受けてここのレイダー達に捕まった人物の救出依頼を受けている』
「こっちも似たり寄ったりだ。アホなオフ会に参加したバカ社員をつれ戻してくれと言われてな」
『ほう、奇遇だな。我々も呆れたオフ会に参加したお嬢様を助けるために白馬と王子さまを用意しているところだ』
ルイとカロンはお互いに依頼内容を話し合い、同じ目的であることを確認しあう。
『目的が一緒なら協力しあわないか? 敵の数が多くてな。こちらは五人、構成はサイバーサムライ四、ハッカーが一だ』
「こっちはサイバーサムライ、ウィザード、ハッカーの三人だ」
『把握した、情報を共有しよう。我々のマイクロンドローンで偵察した結果、レイダー達はあのビルで儀式を行う。 航空写真を送る』
カロンが言うには廃墟ビル郡の中でも運良く倒壊してないビルにPINをさして表示し、ドローンで偵察した内容を教えてくる。
「ちっ、厄介だな」
「入り口は一つしかなく、屋上は儀式会場なのかレイダー達が集まっているな」
カロンから送られてきたデータをみてルイとアステリオスは渋い顔になる。
レイダー達はあのビルで儀式の準備をしているらしく、数が多い。
屋上に繋がる出入り口は一つしかなく、こちら側が人数を展開させにくい。
そして両チームの救出対象である社員とお嬢様は廃材で作られた祭壇に寝かされるように縛り付けられてる。
「ビルのセキュリティは?」
『こっちのハッカーが言うには警報装置ぐらいしかなくて張り合いがないだそうだ』
「うん、向こう側が言ってる通りだよ~」
ルイがビル事態のセキュリティを確認するとカロンは自分のチームに所属するハッカーに調べさせたと言う。
ルイが目線でリコリスをみると、ハッキングを終えていたのか肯定する。
「そっちのハッカーはドローンは使えるのか」
『勿論。あなた達が来なければドローンを犠牲にして突っ込む予定だった』
「こっちも出す。飛行用ドローンで背後をついて、奇襲でどうだ」
『OK、こちらのIFFと現在地を送る。背中を撃たないでくれよ』
ルイとカロンが軽く作戦を相談しあうと、ビル近くの廃墟で合流する。
「改めて紹介しよう、私がカロン、彼らがブリッツ、オーガ、ホーネット、ワームだ」
カロンは合流したルイ達に自分のチームを紹介する。
ブリッツは二十代後半の男でアサルトライフル片手に会釈する。
オーガはその名前の通りの角の生えたデミヒューマンでオートショットガンを持って笑みを浮かべる。
ホーネットは女性のレプラコーンで、こちらに視線を向けることなくピアーサと呼ばれる短針を飛ばす特殊銃を整備していた。
ワームは黒人のアメリカンデブで、トゥインキーと呼ばれるスティックシュガー菓子を食べながらドローンから送られてくる映像を監視している。
「入り口には見張りが二人。見張りの
「ん~? 見張りのサイバーパーツ、穴だらけだね~。過電圧かけちゃおっか」
ドローンから送られてくる映像を共有し、カロンの説明を聞いていたリコリスはそう言うと、一瞬で見張り達のサイバーパーツにハッキングを行い、過電圧を発生させる。
ドローンから送られてくる映像では見張りの耳や目、サイバーパーツ部分が突如スパークしたかと思うと、煙を吹き出して倒れる。
映像を監視していたワームは唖然とした顔でリコリスをみて、食べてたお菓子を落とす。
「なかなかやるな。我々も仕事が出来るところを見せなくてはいけないな。先頭はこちらがやろう」
カロンはそう言うと、アサルトライフルを構え、仲間を率いてビルに突入する。
「俺達も行くか」
「おう!」
その後を追うようにルイとアステリオスもビルに向かう。
『ビルの中には人はいないな』
『見張り以外は屋上の儀式に参加か?』
レイダーのアジトであるビル内部には人の気配はない。
奇襲がバレないようにルイ達は
『配置についた。ワーム、リコリス、ドローンで派手に暴れてくれ』
『御意~!』
『オッケー』
屋上に通じる扉の前に到着したルイ達。
カロンが外で待機しているワームとリコリスに合図を送ると、飛行用ドローン達が上空から儀式会場に攻撃を仕掛ける。
オーガとアステリオスは扉を蹴破り、強化反射神経装置を起動させてレイダー達を撃ち殺していく。
奇襲を受けたレイダー達は浮き足だった状態で混乱しており、ホーネットとカロンが幹部クラスや指揮を取り戻そうとしているレイダーを撃ち抜いていく。
ブリッツとルイが人質が拘束されている祭壇に駆けると、その進路を塞ぐように一人の大柄なレイダーが立ちふさがる。
「ワオオォォォンッ!!」
「んなっ!?」
「ちっ、ルガールかっ!」
大柄なレイダーは獣のような雄叫びをあげるとさらに体か膨張して人狼になる。
それはルガールと呼ばれる食った人物に化けることができるモンスターだった。
「これでもくらえっ!」
「よせっ! ルガールは銀か魔法以外には耐性を持っている!」
ブリッツが手にしていたアサルトライフルで攻撃を仕掛けるが、ルイが叫ぶようにアサルトライフルの攻撃を受けたルガールの体には傷一つなく、逆に銃弾が押し返されていた。
「ウオオォォン!」
「
お返しとばかりに鋭い鉤爪でブリッツを切り裂こうとするルガール。
咄嗟にルイが魔法による衝撃波でルガールを吹き飛ばし、ルガールの攻撃は空振りに終わる。
「グルルル………」
「こいつは俺に任せて、生け贄を頼む!」
「わかった!」
吹き飛ばされたルガールは空中で一回転して体勢を整え直して着地すると、ダラダラと口から涎を滴しながらルイに向かって唸り声をあげる。
ルイが叫ぶと、ブリッツは祭壇に駆け寄りアーミーナイフで生け贄達の拘束を解こうとする。
「アオオォォンッ!!」
ルガールは雄叫びをあげると獣のように四肢を駆使して駆け出し、ルイを噛み殺そうと口を開けて飛び付いてくる。
「おっと!」
「ギャアアアア!!」
ルイはスライディングでルガールの噛みつきを回避すると、ルイの背後にいたレイダーの一人が運悪くルガールの犠牲になって噛み砕かれる。
「オオオオオンンっ!」
「
味方のレイダーを噛み砕いたルガールはその血肉を堪能するように咀嚼して飲み込み、口の端しから血を溢しながら雄叫びをあげ血に酔いしれる。
ルイは血に酔いしれるルガールに向かって十字架を握ると、魔法を唱えて魔法の矢を放つ。
ルガールは素早い動きで右へ左へと跳び、ルイが放つ魔法の矢を回避して肉薄しようと迫っていく。
「
「ギャン!?」
己の首筋に噛みつこうと大口を開けるルガールに向かってルイは魔法によって銀の塊になった拳でアッパーカットする。
銀の塊となった拳がルガールに命中すると、ジュバッと高温の金属に水をかけたような音が響き、銀の拳が触れた部分から煙が吹き出てルガールの皮膚が焼けただれ、ルガールは激痛に悶絶するようにその場に転がる。
「うおおおらぁぁっ!!」
「ギャンッ!?」
ルイはそのままルガールに追い討ちをかけるようにその胸元に銀の拳を押し付ける。
ルガールは悲鳴を上げて、陸に上がった魚のように手足をバタつかせて悶え苦しむが、ルイの腕が肘近くまで皮膚を焼き裂いてめり込むと絶命する。
「君がいてくれて助かったな。我々だけではおそらくルガールには勝てなかったか、多大な被害をだしていただろう」
ルイがルガールを倒した頃にはカロン達はレイダー達を片付け終え、生け贄を解放していた。
「しかし君達は本当にDランクか? 手際をみているとC………いや、Bはあってもおかしくない」
「そう言われてもギルドからは俺達はDランク相当、Cランクに昇格は認められないといわれてるからな」
その場に座り込んだルイは煙草を取り出す。
「ギルドはみる目がないな」
「その代わり気楽にやらしてもらってるよ」
カロンは懐からジッポライターを取り出し、ルイの煙草に火をつけた後、自分も煙草を取り出して吸いだす。
「取りあえずあとはネオトウキョウに送り届ければ依頼完了だな」
煙草を吸いながらルイは地平線から上る夜明けの太陽をみていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます