第26話 ブラックドック狩り
「あの二人弟子にしてそれなりにたったが、どうだ?」
真里花と京子を弟子にして一月ほどたったある日、アステリオスから二人の育成状況の進捗を聞かれる。
「京子は運動神経がいいから斥候として育ててる。真里花は運動はからきしだが、頭と手先がいいから後方支援で育ててる」
「僕がプログラムしたチューターソフトとか使って勉強してるよ」
ルイがアステリオスに二人の状況を伝えると、訓練に必要なソフトは自分が作ったとリコリスがアピールする。
「最初の頃は銃の分解や組み立てにも右往左往してたのにな」
「外す順番まちがえて外れなくなった銃口を覗いたり、リコイルスプリング飛ばしたり、部品が余ったりとか大変だった」
二人の護身用に購入した22口径のスモールピストルの分解組み立てやメンテナンスの方法を教えた時、二人は銃の分解組立時のNG行為のアレコレをやって右往左往してた。
「そんな二人もダンジョンデビューか」
「俺たちも付き添うけどな」
「楽しみだねー」
色々あったがルイ達の基準でダンジョンに挑んでもいいレベルになったと判断して、真里花と京子と一緒にダンジョンアタックを行うことにした。
「すいません、お待たせしました」
「前回みたいなことにならないように、汚名挽回名誉返上するよ!」
エクスプローラーギルドで待ち合わせしていると、真里花と京子がタクティカルベストにヘルメット姿でルイ達に駆け寄る。
「名誉挽回してどうする」
「あれ?」
ルイはあきれ顔で京子に突っ込みを入れる。
「それでルイさん、私達は何処に向かうのですか?」
「今日はタウンからの依頼でブラックドック退治だ」
真里花に今回の行き先を聞かれてルイは
依頼内容はウェストランドの荒野を開拓して集落を作った
「都市の外で本当に人が住んでるんだ………」
「話は聞いてましたけど、通ってるとかじゃないんですよね?」
真里花と京子を含むネオトウキョウの中流層の市民にとってウェストランドというのはダンジョンとモンスターが闊歩する人が住めない死の大地と言う印象があり、
「それがネオトウキョウに住む一般人の反応だよな」
「真里花、京子、間違えても
「実際何処かのテレビレポーターか、動画配信者がそれ聞いてボコられてたもんねえ」
真里花と京子のリアクションを見てルイ達はそんな反応になるよなと思い、注意事項を伝える。
「うわぁ、また輸送トラックにのるの?」
「………」
依頼内容には複数のエクスプローラーが参加することになっており、現地まではギルドの輸送トラックが送迎することになっている。
真里花と京子の二人は以前輸送トラック内で痴漢にあったことを思い出して顔をしかめて、助けを求めるようにルイを見つめる。
「安心しろ、俺の車で送る」
「あ、でもそうするとアステリオスさんが………」
ルイが自分の車で現地まで送迎すると伝えると、真里花と京子の顔が明るくなるが、真里花がはっと気づいてアステリオスの方を申し訳なさそうにみる。
「そいつはルイの車をみてからだ」
「何かサプライズがあるとみた!」
「それは見てのお楽しみ。 こっちこっち」
アステリオスは何時ものように缶ビールを飲みながらニヤニヤと笑う。
アステリオスの反応を見て京子が何かサプライズがあると指摘すると、リコリスが手招きしてエクスプローラーギルドの駐車場に向かう。
「あれ、ルイさんのバギーは?」
「今日は置いてきた。今回はこいつでいく」
真里花はいつもルイが乗り回してるバギーが見当たらないことに気づくと、ルイは一台のキャンピングバスコンに向かう。
「うわ、新しい車ですか!」
「ああ、ウェストランドでの長期活動を視野にいれて買った」
「おおー、中も広い! 座席も凄い! マッサージまでついてる!!」
ルイは真里花と京子のリアクションを見て満足げに頷く。
京子はバスコンの中に入ると広さと内装に目を白黒させ、座席に座るとその座り心地に驚く。
「はしゃぐのはいいが、さっさと席に座れ。すぐに出発だ」
「はーい。 あ、輸送トラックに乗る人達がこっちを羨ましそうに見てるよ」
「気のせいでしょうか、残念そうなか押してる人達も見受けられます」
ルイが真里花と京子を席に座るように促すと、席に着いた真里花と京子が窓の外を見て、輸送トラック側のエクスプローラー達の反応を見ている。
「大方先輩風吹かしてナンパとか邪なこと考えてたんだろ」
「ルイさんと出会えて本当によかった………」
「本当、ありがとうございます」
「礼なら仕事を覚えて働きで返せ」
アステリオスが窓越しに睨みを利かせると輸送トラック側のエクスプローラー達は視線を反らしてそそくさと輸送トラックに乗り込んでいく。
真里花と京子の礼を背中に受けたルイは振り替えることなく車を出発させる。
「ここら辺緑がありますね」
「嘘………自然なんて映像でしかみたことない」
ネオトウショウを出て二時間ほどウェストランドの荒野を走ると、比較的自然の残るエリアに到着する。
「ここら辺のエリアは過去にダンジョンブレイクが起きて土地が上書きされたからな」
「学校の授業で聞いたような?」
「砂漠のど真ん中に極寒の土地や、空に浮かぶ島があるって聞きました」
アステリオスがそういうと、京子と真里花は自分達が通う学校での話をする。
「目的地に着いたぞ。全員装備忘れるなよ」
ルイが運転するキャンピングバスコンが停車し、チームメンバーが降りていく。
輸送トラックから降りてきたエクスプローラー達は思い思いに体を伸ばしたり、仲間内で集まったりする。
車を降りてしばらく歩くと、進行方向に大規模な農園が広がる。
警備用のドローンが巡回し、オートメーション化された農作業ロボが畑を手入れしている。
「天然物ってこんな風に作られてるんだ」
この
初めてみる農場に真里花や京子だけでなく、一部のエクスプローラーもその光景に見とれていた。
中にはうっかり近づいたせいで警備用のドローンから警告と警報、そして物陰に隠れていたタレットが姿を表して威嚇する。
「エクスプローラーか。不用意に畑に近づかんでくれ。人体は肥料に適してないからのう」
鍛えられた体躯の矍鑠とした老人が農園からやってくる。
「わしがこの
代表者と名乗るタウロは仕事の話を始める。
「仕事はいたって簡単、裏手の山にブラックドックが住み着いた。お前らはそれを殺せばいい。真面目に働けば金はやる。じゃが、サボったり他のエクスプローラーを妨害したりすれば………まあ、わかるじゃろうて」
「ひっ!」
「うわっ!?」
タウロはそう言って威圧の籠った眼光で気当たりを放つ。
タウロの気当たりを受けた真里花や京子、数人のエクスプローラーがその眼光に恐怖を抱いたのか悲鳴をあげたり、一歩下がったりする。
「ふむ、それなりに実力がある奴もいるようじゃな。一人三匹がノルマじゃ。四匹目からはボーナスを出そう。巣を見つけた奴にもじゃ」
タウロがそう言うと、エクスプローラー達が色めき立つ。
「全員にはこの監視用のドローンが追従する。故意に破壊したり、ハッキングして映像記録を改竄したら報酬はなし、場合にやっては修理代を請求するからな」
タウロが
「それじゃ良い狩りを期待しておるぞ」
タウロはそう言うと畑に戻っていった。
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