第18話 ルイ、車を買う
「まさかクエストタイプのウェーブダンジョンだったとは………」
未帰還者が多発してるダンジョンの調査を終えて、エクスプローラーギルドに報告をするルイ達。
報告内容を聞いたエクスプローラーギルドの職員がアーニャが編集したダンジョン内のゾンビが殺到するウェーブ動画をみて絶句している。
「依頼は完了です。皆様は本日より二日間都市の外には出ないでください」
報告を聞いたエクスプローラーギルドの職員は依頼完了の手続きを行い、ダンジョン汚染に関する注意事項を伝えて報酬を支払う。
「ゾンビの魔石は安いけど数はあったからねー」
「ボス扱いのホーカーが一番良い値段だな」
「しかし弾代もだが、ルイの結界も結構高いな」
報酬を受け取り、今回のダンジョンアタックにかかった経費を計算していると、アステリオスが呟く。
「
「ダンジョンからしか産出しないし、大半は新素材、研究素材として
ルイは煙草を吸いながら、今回使用した結界について話すと、アーニャがマトリクスで素材の値段を確認したのかそんなことを言う。
「それじゃ、車買ってくるよ」
「所で何を買うんだ?」
「ウエストランドでの長期活動を視野に入れたキャンピングバスコンだ。あれこれ改造を入れる予定だから実際に乗れるのは少し先だな」
報酬を三等分に分けると、ルイは買い物に向かおうとする。
アステリオスがルイに声をかけると、ルイは目を輝かせて
「ヒュー、フジショー社の御殿か!」
「おー、結構大きな車だねー!」
カタログを見たアステリオスはルイが購入予定の車を知っていたのか軽く口笛を吹く。
アーニャはあまり車の種類やメーカーに興味がないのか見た目の感想を述べる。
「二人はどうする?」
「俺はサイバーパーツのメンテ」
「んー………ドローンの整備かな? ダンジョンの戦闘で幾つか反応にラグがあったから」
「そうか、何か用事があったらいつでも連絡してくれ」
ルイは二人と別れて行きつけのカーショップへ向かう。
「いらっしゃいませ。カーショップ【カウンティング]へようこそ。本日のご用件は?」
ルイが店内に足を踏み入れると、ホログラフィックAIの店員が
「フジショー社の御殿と言う車を購入予定だ」
「ありがとうございます。こちらの車でお間違いないでしょうか?」
ルイが来店目的を伝えると
「運用目的は決めていますか?」
「エクスプローラー活動としてウエストでの長期運転を目的にしている」
「ウエストランドでの活動目的ですと、オフロードタイヤをお勧めします。少々速度が犠牲になりますがブロックタイヤ、少々値段が高くなりますが、スパンダータイヤもございます」
ルイが車の運用目的を伝えると、AI店員はタイヤの説明をする。
それと同時に
「スパンダータイヤ? 聞いたことないな?」
「スパンダー社が独自に開発した形状記憶樹脂タイヤで、路面状況センサーから受けた電気信号に従って形状を変化させてあらゆる路面に対応できます」
「凄いけど、タイヤだけで安い車二~三台は買える値段は流石に手が出せないな」
AI店員は
ムービーではスパンダータイヤが悪路にあわせて変化して踏破していき、同乗者と飲み物に振動を伝えてないことを見せる。
ルイは興味を示すが、プロモーションムービーの最後に値段が表示された瞬間、その金額に驚く。
「取りあえず今は一般的なオフロードタイヤで」
「かしこまりました」
ルイの注文にあわせてホログラムのキャンピングワゴンのタイヤがオフロード仕様に変わる。
「車体フレームも変更してみませんか? お勧めはガンドッグ社のヘビークロームOMEGAです」
「いや、戦車並みのフレーム強度とか求めてないから。標準フレームで」
「残念です」
AI店員が頑丈なフレームをお勧めしてくるが、ルイは苦笑しながら断る。
今はダンジョンから産出される金属などで一般的な車両でもそこそこの強度がある。
車両で大型モンスターとの戦闘を考えない限り戦車並みのフレーム強度など求めることはない。
「エンジンは如何いたしますか? いまならこちらのガソリンV32エンジンがお買い得ですよ」
「標準の魔石エンジンでお願いします。ガソリンエンジンとか環境税払えねーよ」
エンジンも電気やガソリンに魔石と種類があり、都市内部では電気、ウエストランドでは魔石エンジンが好まれる。
ガソリンはネオトウキョウが定めた環境に関する法律で規制対象にされ、ガソリンエンジン搭載しているだけで税金がはね上がる。
それでも一部のセレブやマニアが好んで搭載して走って、庶民が羨望の眼差しを向けている。
「装甲を搭載しますか?」
「取りあえず全面にハイ=チョバムを頼む」
ハイ=チョバム装甲は複数の素材をハニカム状に蓄積させて対弾、対衝撃性能を確保した装甲で、ウエストランドを走る車両なら標準装備とも言われている。
他にもチタン合金やスチールなど用途に合わせた装甲があり、中にはダンジョンから産出される素材で作られたナノマシン装甲なんてものもある。
「武器を搭載しますか? 搭載する場合該当する免許の提示を求めます」
「ライトマシンガンをプロップ式で」
「免許を確認しました。搭載箇所はどこに致しましょうか?」
「天井に頼む」
ルイが武器の搭載を注文すると、ホログラムのキャンピングバスコンの天井部分に支柱とライトマシンガンが搭載される。
「メカニックアクセサリーは如何致しましょう? 緊急脱出用の射出シートは如何ですか?」
「それは興味が惹かれるが、高すぎるから今回は見送る」
AI店員が勧めてきた射出シートとは従来戦闘機に搭載されている物を地上車両でも使用できるように改良されたアクセサリーだ。
ルイ個人はロマンを感じたが、値段と言う現実に購入を諦める。
「トイレとシャワールームと寝台………それから全部の座席をデラックスシートに」
「了解しました」
ルイがメカニックアクセサリーの注文をすると、ホログラムのキャンピングワゴン車内に注文したアクセサリーが搭載されていき、値段や工期、車両事態の重さや速度やハンドリングの変化を表した数値が表示される。
「予算ギリギリだな………ダンジョンクリアしてなかったらやばかったな」
「お支払方法は………お客様はエクスプローラーなので一括払いのみとなります」
ルイは表示される値段をみて予算の範囲内で収まったことにほっと胸を撫で下ろしていると、AI店員が支払方法を一括払いのみと限定してくる。
エクスプローラーと言う業種は安定せず死亡率が高いために、ローンなどの社会信用が低く、今回のように支払を一括で求められることが多い。
「俺の口座から支払う」
「着金を確認致しました。三日後に納車予定となります。引き渡しはどこにいたしますか?」
「運転したいからここで受け取るよ」
「かしこまりました、お買い上げありがとうございます」
マトリクス上で売買契約を終えるとルイは上機嫌で店を出る。
AI店員はルイが店を出ていったあともしばらく頭を下げて見送り続け、そのまま消えて店内は無人になった。
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