第7話 ダンジョン文明とワタリモンスター
「マッピングってこんな簡単だっけ?」
「ううん、アーニャさんのドローンが優れてるからだと思う」
「んふふ~、測量とか色々ソフト組み込んでるからねー」
ルイ達とチームを組んで共にフィールドダンジョンのクリアリングを開始した真里花と京子。
最初は助けてくれたお礼に少しでも役立とうと張り切っていたが、アーニャのパトローラーと呼ばれる飛行ドローンが優秀すぎてなにも出来ないでいた。
「ルイー、ダンジョン文明の痕跡発見したよー」
「ヒュー、ボーナス確定か?」
草原のフィールドを探索していたアーニャはパトローラーの一台が建物を見つけて報告するとアステリオスが口笛をふく。
「ダンジョン文明? なんか聞いたことあるような?」
「京子ちゃん、企業学校の授業で習ったでしょ?」
アーニャの言葉を聞いた京子が真里花に質問すると、真里花は苦笑する。
「そうだっけ? どんな内容だっけ?」
「んもう、時折ダンジョンで見つかるこの世界とは別文明の痕跡のことだよ、京子ちゃん」
「どういう文明だったかはまだ研究中だが、遺跡などから発見された知識の欠片から世界はダンジョンによる滅びに耐えられたと言われている」
真里花がかいつまんでダンジョン文明について説明すると、教会で子供達に授業などをやっているルイがつい口を挟んでしまう。
「へー、そうなんだ」
「俺のサイバーパーツも、ルイの魔法も、
アステリオスは自分の体に埋め込まれてる皮膚下チタン装甲をカンカンと音を鳴らしながら会話に混ざる。
「アーニャ、方向は?」
「あっち! 徒歩で三十分ぐらい?」
アーニャが指す方向に一行が歩くと、永い年月放置されて自然に侵食されて蔦が巻き付いたと言うより、蔦で埋もれた塔が建っていた。
「よっ! ほっ! うっし、これで通れるはずだ」
アステリオスがその怪力を使って蔦を引きちぎり、塔の入り口を露出させる。
「アーニャ」
「御意ー!」
ルイがアーニャの名前を呼ぶと、アーニャはパトローラーの一台を塔に潜入させて、各自の
「なんか昔みたファンタジー映画みたいな内装だね」
「あの魔法使いの塔みたいですね」
塔の内部は石造りの部屋となっており、京子と真里花が内装を見てそんなことを話し合う。
「んー、みた限りでは問題なさそう?」
「あとは直接見てだな」
ドローンで塔内部を探索した限りでは問題がなさそうだと判断したルイは自分が先頭に立って塔に入る。
「そんな警戒しなくてもいいんじゃないの?」
「まあ、見てみな」
京子がルイ達が警戒しすぎと思い口に出す。
ルイは吸いかけの煙草を塔内に投げ込むと、ジャキンと巨大な振り子型のギロチンが通りすぎて煙草をまっぷたつにする。
「え………何あれ?」
京子は口をパクパクさせながら、ギロチンが通りすぎた道を指差しながらルイに振り返る。
「こう言うダンジョン文明の遺跡には、魔法の罠と言うミスティックにしか認識できないがある」
「ミスティックが罠を探せるとわかるまではめちゃくちゃ犠牲が出たらしいな」
ルイは種を明かし、アステリオスが思い出したように昔の話をする。
「死にたくなければなにも触らず俺が歩いた場所だけ歩け、いいな?」
「
ルイが周囲を見回しながら塔内へと足を踏み入れる。
アーニャが気を利かしてルイの足跡が見えるように
「どうやら魔法使いか錬金術の研究所だな」
「ポーションか何かレシピとか残ってないか?」
塔は二階建てで、一階が生活エリア、二階が研究室だったのか、魔女の大釜やレトロなフラスコやビーカー、読めない文字が書かれた書物が置いてある。
「まずは罠を解除する、離れていてくれ」
ルイはそう言って二階の研究室に足を踏み入れると、虚空を見つめたり、何もない空間を跨いだりパントマイムのようなことを繰り返す。
「あの、ルイさんは何をやっているのですか?」
「ん? ああ、アストラル知覚と言ってな。魔法使いの目で空間を認識してるらしい」
真里花が遠慮がちにアステリオスの腕を叩いて声をかけると、アステリオスがルイが何をしているか教える。
「ミスティック限定の
「うーん、なにも知らない人が見たら踊ってるみたいに見えるなあ」
アーニャが京子にルイの行動を伝えるが、京子は苦笑して感想を述べる。
「ふう………解除完了。持って帰るぞ」
罠を解除したのか、ルイは息を吐いて緊張を解くと、研究室にあった物を回収していく。
「お疲れ、幾らぐらいになる?」
「さあな、魔法や薬品関連の企業次第だろう」
ルイが回収したものをアステリオスが労いの声をかけて受けとる。
「エクスプローラーギルドに売るのではないの?」
「チッチッチッ、わかってないなー。こう言うのはねー、ギルドに売るより企業に直接売った方が高く売れるよー」
京子がルイを指差してアーニャに質問すると、アーニャはフフンと指を揺らして先輩風を吹かすように教える。
「あっ! 入り口に置いてたドローンがこっちに向かってくるエクスプローラーを発見したよー」
「おいおい、さっきの奴らじゃねえか」
「人数が増えてるな、仲間と合流したか?」
京子と話していたアーニャが
ドローンから送られる映像には真里花と京子を襲おうとしていたエクスプローラーの集団が武装して塔に近づいていた。
「っ!!」
「………」
真里花と京子は襲われてた時の事を思い出したのか、震えて身を硬直させる。
「待って! 上空からアンノウンの接近を感知! なにこのサイズ!?」
アーニャのドローンがさらに別の反応を感知して、アンノウンの姿を確認しようとカメラを向ける。
カメラが捉えたのは急降下してドローンに迫る猛禽類のような足。
「あー! 僕のドローンがー!!」
ドローンが破壊されたのか映像が途切れて
「うわああああっ! もっ、モンスターだーっ! 射て射て!!」
「きゃあっ!?」
「うわっ!?」
外から怒鳴り声と共に聞こえてくる発砲音。
荒事に慣れてない真里花と京子は悲鳴を上げてその場に伏せる。
「くそっ! 石みたいな体のせいか効いてねえぞ!」
「こっちの口径が小さすぎてダメージを与えられん! ミサイルとかないのか!」
「んなもんFやEランクのエクスプローラーに売ってくれるかっ!!」
塔の外の外にいたエクスプローラー達とアンノウンが戦闘を始めたようだが聞こえてくる怒声からエクスプローラー達の攻撃がアンノウンには通用していないらしい。
「空を飛んでて当てにくいぞ!」
「あ………あれはガーゴイルだ!!」
「はぁ? ガーゴイルなんてD以上のダンジョンに現れるモンスターだぞ! なんでEランクに!!」
「うわあっ! 浅木が捕まって空に連れていかれた!!」
「よせっ! 射つな! 浅木に当たるぞ!!」
外からは銃声と怒声に悲鳴。
聞こえてくる叫び声からアンノウンがガーゴイルであることがわかった。
「おいルイ、今回は奴に通用する武器持ってきてないぞ」
「全員壁際に隠れて息を潜めろ。アーニャはドローンを一旦停止だ」
「え、あの………」
「いいからルイに言われたように壁に張り付く」
ルイが指示を出すとアステリオスとアーニャはは壁に張り付いて息を潜める。
真里花と京子はどうしたらいいのかわからずオロオロしていたが、アーニャに引っ張られて壁際に潜り込む。
「止めろ止めろ止めろっ! 頼むっ! 離さな───うわああああああっ!!!」
「浅木が殺されたああああっ!!!」
「よせっ! 離れるなっ!!」
悲鳴の後、鈍い水音の混じった激突音。
それが恐慌状態を作ったのか、応戦していたエクスプローラー達がパニックになったように銃を乱射したり、逃げ出したり、リーダーと思われる人物が統制を取り戻そうと叫ぶが、手遅れのようだった。
暫くすると銃声や怒号に悲鳴が聞こえなくなり、静寂が支配する。
ルイが視線でアーニャに指示すると、アーニャはパトローラーの一台を制音モードで起動して外の様子を伺う。
「ちっ、去ったふりして待ち構えていたか!」
ドローンから送られる映像には大きく黒曜石のような輝きを持つ鉱石の体のガーゴイルがドローンを待ち構えていた。
「グレーターガーゴイルか………仕方ない、あいつは俺がやる。アステリオスはアーニャと彼女達を守れ」
「OK!」
「そんなっ! 危険すぎます!」
「そっ、そうだよ…………ここに籠ってれば帰ってこない私達を心配して助けがくるよ!」
ルイが外に出ようとすると、真里花と京子が必死の形相でルイの服を掴んで止める。
「心配してくれてありがとう。だか待っても助けはこない。ギルドの輸送トラックは時間になれば人数が揃ってなくても都市に帰還するし、別途捜索依頼でもなければ助けもこないさ」
「まあ、ルイに任せれば大丈夫だって」
「うんうん」
ルイは笑みを浮かべて真里花と京子の頭を撫でると塔を出る。
アステリオスとアーニャはルイを心配していないのか真里花と京子を宥めていた。
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