冒険305.ダブルミーニング(前編)
===== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木[日向]さやか一佐・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁からEITO出向。
ジョーンズ・・・オスプレイのパイロット。
ロバート・・・オスプレイのパイロット。
青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。フルーレの名手。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。
原田正三・・・元新宿署警部。警視庁からのEITO出向。
渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
西部才蔵警部補・・・高速エリア署刑事だが、EITOの『片づけ隊』班長をしている。。
久保田誠警部補・・・警視庁警部補。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事
中津警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。
みゆき出版社編集長山村・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。
鈴木栄太校長・・・高峰舞子の通う小学校の校長。EITO協力者。
利根川道明・・・TV欲目の社員コメンテーター。後にフリーのMCになる。EITO協力者。
中村浦野助・・・歌舞伎俳優。
※他にエマージェンシーガールズ。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午前9時。EITO東京本部。会議室。
「みんな、よく眠れたかな?原田以外。」と、伝子は開口一番言った。
「今度は、パワハラか。」と、高木が呟いた。
「高木、聞こえたぞ。理事官と夏目さんは、リモート記者会見中だ。昨夜、また、ピースクラッカーから、アナグラムで挑戦してきた。今。学が解析中だ。お題は、これだそうだ。草薙さん。」
草薙が、マルチディスプレイに、ピースクラッカーの動画を再生した。
「怪人 酔うな お城」
「わかんない。」と、小坂が言った。
「小坂。そのままの意味じゃないんだよ.」並べ替え問題だ。」と、あかりが優しく言った。
「いえ、そうじゃなくて・・・。」横から結城が助け船を出した。
「小坂は、何で敵がアナグラムに拘るのかって言いたいのね。」「はい。」
あかりは、鼻白んだ。
「最初に、自信があるって言ってたけど。うちのエーアイは、すぐに解くけど、今までの『幹』は、悩み悩んで出題していたんだと思う。うちのエーアイもしくじったことあるけどね。難しい問題には、違いない。一見、普通の文章みたいに『見せる』のは、難しい。もう一度、検討だな。」と、今度は、伝子が援護した。
午前9時。シネコン映画館。
EITOのリモート記者会見が行われていた。
「アナグラムの解析の結果、『ミニチュア』と出てきたので、ミニチュアのイベント会場に急行させたのです。それまでは、その会場が正解だったのです。ところが、敵のメッセージが届いて、会場から移動したのです。揶揄されるように、コスプレパレードをした訳ではありません。徒歩の方が早かったからです。現場は、『映画撮影』の目的で届けが出ていました。銃火器を敵が使わなかったのは、敵の都合です。八百長と、断定している会社は、証拠を見せて下さい。」
理事官は、憤慨していた。
「それと、脱獄計画を事前に推測し、阻止したこともお忘れなく。反論のある方には、『別室』でお伺いしますよ。」
リモート記者会見は終った。
午前9時半。EITO東京本部。会議室。
「『怪人 酔うな お城』は、『世直し老人会』って解を出したけど、少し自信がない。草薙さん、そんな組織ある?」と、高遠は言った。
「私に振られてもねえ。組織はともかく、日時に関するヒントがないと、イベントとかも探せないし・・・。」
「老人会は、日本中にある、小規模組織だしなあ。」と、馬場は腕を組んで考え込んだ。
「老人会または老人クラブは、馬場隊員がおっしゃる通り、全国の町内会の一環として存在していますね。私が以前聞いた話では、参加年齢は、60歳以上だそうです。前期高齢者ですかね。」と渡が言った。
「世直し、って言うのも時代がかった言い方ですね。『正義の味方』を気取っている団体かなあ。」と、青山は言った。
「敬老の日、って9月15日でしたっけ?あ。今はハッピーマンデーで移動するかな?いずれにしても、先だなあ。」と、馬越が言った。
「鈴木先生に、『老人会』のこと、聞いてみます。」と、伝子は理事官に言った。
「ああ、校長先生か、顔が広いだろうから、それはいいかもな。そうだ、みゆき出版の山村編集長は?」「いいですね。打診してみます。何かリクレーション運動している老人クラブでヒントが出てくるかも知れない。私は『世直し』が引っかかります。何かを行っていて、大袈裟に『世直し』って言う団体がいてもおかしくはない。」
理事官の気遣いに伝子は感謝した。
「じゃ、おねえさま。仮眠はしたけれど、一旦解散させますか?敵の動きがあるまで。」と、なぎさが尋ねた。
「そうだな。再招集があるまで、自由行動にしよう。解散!!」
午前11時。伝子のマンション。
珍しく、伝子は、鉄板焼きそばを焼いていた。料理があまり出来ない伝子の『定番』料理だ。区切り隣の藤井も来ているが、口を出さず、見ていた。
「いい匂いね。ラー油入れた?」「分かります?」「分かります?私を誰だと思っているの?」
三人は笑った。
午後2時。
高遠が、「あ!!」と大声を上げた。
「伝子。こういうのもありかも。」
高遠は、スケッチブックを見せた。普段は、高遠は電子クリップボードを使うが、スケッチブックを使うこともある。
『押しなよ カイ老人』『愚かな異人仕様』
「前に間違ったこと、まだ引きずっているのか?」
「いや、今度は、ひかる君や青木君にも確認して貰った。『ダブルミーニング』の場合も無くはない、って言ってた。『押しなよ』の『オシ』は、推薦や応援っていう意味で今時は使うから。
翌日。午後1時。みゆき出版社。
山村編集長が、直接応接室に出向いてきた。
「ゴメンね、大文字くぅん。昨日は、法事でバタバタしてたの。老人会で珍しいことやってるグループって、探したけど、無かったわ。でもね、無くなって行く寄席が勿体ないからって、私財なげうって寄付した老人の記事、ウチで取材したから覚えてたの。これ、資料。それと、これ。」
山村が差し出した資料は1冊のリーフレットと新聞記事のスクラップブックだった。
リーフレットの記事には、こう書いてあった。
「消えゆく寄席。惜しまれつつも。そこに、救世主登場。」
写真には、寄席支配人らしき人物と老人二人が写っていた。
そして、新聞記事には、支配人の写真だけが映っている。
『暴走する電動キックスケーター。自転車に乗った人を撥ねた。撥ねられたのは、花房寄席支配人、花房伝助さん、50歳。花房さんはヘルメット着用。一方、電動キックスケーターは、ノーヘルだった。自転車のヘルメット着用義務は、施行されて幾久しい。そして、電動キックボードの着用義務は、2段階に別れていて、通称『軽段階』は努力義務、通称『重段階』は義務となっている。後者の違反者には科料(罰金)が課せられる。花房さんのヘルメットは、内側の部品が破損しており、日本製と言われているが、部品は海外製造ではないか?と疑われているが、販売元会社はあり得ない事故、と発表している。』
「その中央が花房さん、左側が出資した、マジシャンの麻生海(あそうかい)、右側が先日、ある事件で亡くなった、村崎さん。確か、中津興信所所長の知り合いの人よ。」
「編集長。これ見て。」「なあに?」高遠が解いた、アナグラムの『解』をスマホの画面で見せた。
「『押しなよ カイ老人』『愚かな異人仕様』・・・これが本命じゃない?老人会の活動で目立つのは、これよ。」
山村は黙って壁のポスターを指した。
『花房寄席。最後の公演。司会に特別MCとして、利根川道明氏。開場:午後4時半。開演:午後5時。出演者、麻生海、他。』
伝子は、思わず時計を見た。花房寄席と、みゆき出版社は都内の反対側だ。伝子はバイクで来ていた。
伝子は、急いでEITOに電話をした。
「渡さん、私は間に合わないかも知れないが、間に合う者だけで先発隊で向かわせて下さい。場所は花房寄席。何かが起こるかも知れないんです。」
「了解しました。」
続いて、中津興信所に電話をした。
「中津さん。大文字です。村崎さんって方をご存じですか?先日亡くなられたそうなんですが。」「ええ。」「至急、EITOに資料を送って下さい。」
伝子は、かいつまんで事情を説明し、推理を話した。
―完―
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