冒険306.ダブルミーニング(後編)

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。


 斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。


 馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 高木[日向]さやか一佐・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁からEITO出向。


 ジョーンズ・・・オスプレイのパイロット。

 ロバート・・・オスプレイのパイロット。


 青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。フルーレの名手。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 原田正三・・・元新宿署警部。警視庁からのEITO出向。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。


 西部才蔵警部補・・・高速エリア署刑事だが、EITOの『片づけ隊』班長をしている。。

 久保田誠警部補・・・警視庁警部補。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事


 中津警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。

 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。

 中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。


 みゆき出版社編集長山村・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。

 鈴木栄太校長・・・高峰舞子の通う小学校の校長。EITO協力者。

 利根川道明・・・TV欲目の社員コメンテーター。後にフリーのMCになる。EITO協力者。

 中村浦野助・・・歌舞伎俳優。


 ※他にエマージェンシーガールズ。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午後4時半。花房寄席。

 利根川がMCをして、来場者に説明をしている。

「という訳で、本日が最後の公演となりました。支配人が入院療養中の為、準備は身内の方と有志で行いました。その有志のお一人が、中村浦野助さんです。どうぞお越し下さい。」

 浦野助が登場し、拍手が起った。

「いやー、麻生さんとも、支配人の花房さんとも、浅くない縁がありましてね。落語家さんじゃないので、上手くはないですが、場つなぎの世間話でもいい、ということなので、はせ参じました。よろしくお付き合い下さい。」

 午後5時。

 浦野助は、歌舞伎の裏話を30分、話した。

 幕間を挟んで、麻生海は登場した。

 約60分。麻生はマジックショーを熱演した。寄席最後の公演でもあったが、麻生の最後の公演でもあった。

 午後7時。花房寄席。楽屋。

 アンコールに応えて登場、そして退場してきた麻生が、アシスタントの妻と帰ってきた。

「お迎えに来てくれたんですね。」と麻生が中津達に言った。

 中津健二は言った。「村崎さんのこと、覚えておられますか?」「勿論ですよ、写真で存知上げていました、中津さん。」麻生はにっこり笑って言った。

「時限爆弾はどこですか?」「時限爆弾?何のことでしょう?」

「ここの分は解体処分したわ。聞きたいのは、全日本ヘル協会の建物内と消費者庁庁舎、つまり、財務省隣の合同庁舎以外に仕掛けた場所があるかってことよ。」と、登場した、あつこが言った。

「他にある筈が・・・あ。認めてしまいましたね。」

 伝子が入って来た。

「合同庁舎と協会建物は、徹底的に調べた。新子長官も、長妻会長も無事だ。事情は同情に値するが、ただ者じゃ無かったね、引退した筈の麻生さん。流石マジシャンだ。」と、伝子が言った。

「どこで知り合ったか、組織に入ったのはいつか。じっくり聞かせて貰うわ。」

 あつこの後ろから、新里が現れ、言った。

「観客が無関係のようだから、帰って貰ったわ。」と、なぎさが言った。

「痛み入ります。」と、麻生は土下座をし、その前に日向がスマホを差し出した。

 画面には、支配人の花房が映っている。「済まない、私の為に、寄席の為に・・・。」

 花房は嗚咽を漏らした。

 日向がスマホを切ると、麻生は、全てを語りだした。

「私は、借金が出来て、組織に入った。そして、消費者庁を潰せ、という指示が出ていた。ピースクラッカーは、他の『枝』にやらせる積もりだったようだ。花房さんの自転車交通事故を知り、ヘルメットに欠陥があることが分かった。全日本ヘル協会は、絶対欠陥品ではない、と言い切った。消費者庁に掛け合ったが、無駄だった。所詮はお役所仕事だ。自転車に乗る人は、ヘルメット着用しないからだ、とマスコミを通じてアピールしていた。ところが、電動キックボードは、2段階の緩い規制に改訂された。結果、全国で事故やひったくりが頻発している。国交省大臣にも手紙を書いたが、取り合って貰えない。組織に入った私は、調べた。協会と消費者庁次長が贈収賄で組んでいた。花房寄席を閉業することは、最後で最大のチャンスだった。組織に入った時は、既にがんが発覚していた。私は、ピースクラッカーに懇願した。なるべく少ない予算でやらせてくれ、と。私憤でも公憤でもあるが、それは、日本人としての気持ちからだろう。低予算であることと、『消費者庁を煙に巻く』という線で掛け合ってやる、と言ってくれた。で、結果は見事失敗。大人しく、余生を刑務所で送るよ。観客席の者達は、組織とは関係ない。調べれば分かるが、何の武器も持ってはいない。」

「公子。皆とタクシーで帰って来れ。俺は、兄貴と『護送』する。手錠は、警察署に入ってからでいいだろ?兄貴。」

「お前、たまには、いいこと言うな。」「たま、かよ。」「いいですか?警視。」

「兄弟で、さっさと決めて、確認するの?いいだろ?新里。」と、あつこは確認、した。

「EITOの案件ですからね。私も中津警部の車に・・・あ、無理か。」と言い、新里は「パトカーで帰ります。」と行け加えた。

 中津兄弟は笑い合った。笑いながら、村崎さんのことを思い出していた。今、護送することにした、この老人も村崎さんのように虐待された結果、『幹』になったのだ。

「間に合った?」と、女子警察官姿の、みちるがやって来た。

「遅いわよ、みちる。」と、あつこが言った。

「遅いわよ、みちる。」と、なぎさが言った。

「確かにな。何か分かったか。」と、伝子が尋ねると、「消費者庁長官は、ヘルメットの欠陥調査依頼自体知りませんでした。地検特捜部が捜査に入りました。」と、みちるは応えた。

「麻生さん、これで安心出来ましたか?奥さん・・・。」

 麻生の妻は、スマホを取りだし、床に叩きつけた。

「盗聴は出来なかったと思いますけどね。楽屋にEITOが細工したから。」と、愛宕が入って来て、言った。

 浦野助と利根川は、異口同音に言った。「勿体ない。」

 伝子は、自分のスマホを取りだし、電話した。「もしもし、総理・・・。」

 なぎさは、自分のスマホを取りだし、電話した。「もしもし、ジョーンズ・・・。」

 みちるは、自分のスマホを取りだし、電話した。「もしもし、ミニパト帰ります。新里さんも一緒です。」

 あつこは、自分のスマホを取り出し、電話した。「もしもし、まこっちゃん・・・。」

 愛宕は、自分のスマホを取りだし、電話した。「もしもし、西部さん・・・。」

 午後8時。オスプレイの中。

「ジョーンズ、2号機は?金森班は?」「既に帰路に、帰路ですよね。」

「合ってるわ。直帰の指示が出ている。こちらも、それぞれの都合のいい場所で降ろして。」「了解しました。珍しいですね。バトルは無かったのですか?」と、ジョーンズは尋ねた。

「確かに、珍しいわね。」なぎさは、待機していた、大空、仁礼、大町、田坂、ジョーンズに事情を説明した。

 午後8時。久保田警部補の車の中。

 新里、あつこ、下條が同乗している。「先輩。これで良かったんですか?」新里はあつこに尋ねたのだが、応えたのは久保田警部補だった。

「逃亡する気配はないからねえ。中津警部の知り合いの友人だからね。」

 久保田警部補は、運転しながら、中津警部と中津健二達が関わった事件を、ざっと説明した。「虐待ですか。それにしても酷い医者だなあ。」と、新里は言った。

 下條は、しきりにメモをしている。それを、それとなく見て、あつこはニッコリと笑った。

 午後8時。中津警部の車の中。

「いいんですか?私は『悪者』ですよ。」と、麻生は言った。

「笑えないジョークだな。ダークレインボーに関わったとはいえ、あなたは、村崎さんと同じ匂いがする。逃亡はしない。署で、詳しく話を聞かせて下さい。」中津健二は言った。

「同じ匂い?」「善人の匂い。」と言って、中津警部は笑った。

 午後8時。伝子のバイク。

「今時分、おでましか。面白い。」追走してきた車が、煽り運転を始めた。

 マセラティとランボルギーニがその車に追いついて来た。

 伝子は、急ハンドルを切り、ターンして、マセラティとランボルギーニ組と挟み撃ちにした。

 マセラティから田坂と安藤が、ランボルギーニから浜田が降り、弓矢を構えた。

 煽り運転の車から、両手を挙げて、男が二人、降りて来た。

 どこかから、サイレンの音が聞こえた。

 午前0時すぎ。

 フリップだけが映っている、リール動画がBase bookに投稿された。

 そこには、こう書かれていた。

「Good Job!!」

 ―完―

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