冒険289.リマインダー
======= この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木[日向]さやか一佐・・・空自からのEITO出向。副隊長。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
青山[江南]美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
高坂[飯星]満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。
久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。伝子をEITOにスカウトした。EITO前司令官。
愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。
原田正三警部・・・新宿風俗担当の潜入捜査官だったが、EITO出向。
渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
早乙女藍・・・元白バイ隊隊長。EITOに出向していたが,娘の轢き逃げ以降、退職していたが、EITOに就職。
御池花子・・・東京都知事。
村越警視正・・・警視庁テロ対策室室長
新里警視・・・警視庁テロ対策室勤務。
藤井康子・・・伝子マンションの区切り隣の住人(区切り隣に住む区分所有者)。元料理教室経営者。
南部聡子・・・伝子の従妹。EITOエンジェルズのチーフ。南部興信所所長夫人。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
3月11日。東日本大震災記念日。EITO東京本部。司令室。
福島県では、13年目の式典が行われ、市橋総理も出席した。
昨年同様、有事に備えて陸自、空自、海自が周辺に配備され、警察官も他府県から増員された。
伝子は東京が一番狙われやすい、と考えた。
そこで、留守の筈の総理官邸、総理私邸、衆議院議員会館、副総裁麻生嶋邸、官房長官邸、警視庁、東京都庁、東京スカイツリー、東京タワー、東京駅、東京大学、自衛隊基地が危ないと考えた。警視庁と自衛隊を除いても、拠点が多すぎる。勿論、根拠はない。
敵が攻撃準備をしていても、先日のように、様子見をして黙って引き上げることも考えられる。しかし、配備すると抑止力になる。
今度の敵は必ず『意思表明』をしたり、『クイズ(アナグラムを含む)』で応答したりしない。厄介だ。
時間的に間に合うかどうかも疑問だが、EITO大阪支部に助っ人を依頼した。SATにも国賓館のSP隊にも高速の(女性)白バイ隊にも応援要請をした。
市橋総理にも、御池都知事にも了解は取ってある。テレビ局にも、何度か襲われているので、警察へのホットラインを敷いて貰っている。
地震発生時刻の午後2時46分になった。
伝子は、司令室の皆と、黙祷を捧げた。
3時間が経った。伝子は撤収命令を出し、河野事務官達は、警戒解除を連絡した。
大阪支部のEITOエンジェルズにも帰還要請をした。
「取り越し苦労だったな、大文字君。」と、夏目警視正は言った。
「ええ。」「我々も帰り支度をしよう。恐らく、昨日の今日だから、向こうさんも兵隊が足りなかったのだろう。」と、理事官は溜息をつきながら言った。
午後6批半。伝子のマンション。
区切り隣の藤井が顔を出した。後ろには、総子がいた。
「何だ、総子。帰ったんじゃないのか。」「うん。コマンダーに頼んで一泊して帰ることにした。三美ネエと二美ネエがオスプレイで帰るから、便乗させて貰うねん。」
「ちゃっかりしてるね、総子ちゃん。お好み焼き作るから、指導してよ。」
「オッケー、学兄ちゃんも覚えといてな。」
チャイムが鳴った。高遠が出ると、愛宕が立っていた。
愛宕は、伝子に平伏した。いや、土下座をした。
「先輩。申し訳ありません。みちるのしたことは・・・。」
伝子は、黙って愛宕を平手打ちした。そして、みちるも。
数秒後、伝子は言った。「見損なったぞ、愛宕。女房にどんな教育をしたら、甘酒で酩酊するまでからかうことになるんだ?もう、お前なんか後輩じゃない。仕事以外でツラを見せるな!!・・・って言って欲しいのか?私はナア、愛宕。どの後輩も可愛い。後輩のパートナーも同じくだ。血の通った人間なら成長する。信じなくてどうする。他の隊員達にケジメを見せる為に、みちる、お前を降格した。皆、言わなくても分かってくれているけどな。総子。藤井さん。アンバサダーが実は隊長の役目だと知って、私は辞退した。でも、理事官にこう口説かれたんだ。『君の様な後輩思いの人間は自衛官にも警察官にもそうはいない。隊員は後輩だと思って指導、引率して欲しい』、と。」
「エエ事言うヤン、あのオッチャン。」と総子は言った。
「みちる。隊長として、おねえさまとして命令する。ちゃんと子供を産め。流産したことは運命だったんだ。産んで、私達の子供の同級生を作れ。」
伝子の言葉に、皆、言葉を失った。
「とうとう、この時が来たのね。」と、言う声が聞こえた。「チャイム鳴らす前に聞こえたの、おねえさま。ぶってくれていいわよ。」と、なぎさが言った。
「突っ立ってないで、入れ。困った妹たちだ。」
「キャベツ、足りそうに無いわね、取ってくるわ。」藤井は、涙を拭きながら出て行った。
「最初から知ってたのは、学兄ちゃん、なぎさねえちゃん、藤井さん、理事官、管理官、あっと、夏目さん、三美ネエ。それと筒井さん。間違ってる?」
「間違ってはいない。後は、池上病院の看護師長の瞳さん、総看護師長の志津子さん。まあ、スタッフだからな。」
「いいの、おねえさま、今告白して。」と、みちるが尋ねると、「許すって言ってるのよ、みちる。おねえさま、実は、あつこには話しておいたわ。仕事に差し障りが出ないように。」と、なぎさは言った。
「困った妹たちだ。さ、みんな食べようよ。僕も少し肩が軽くなった。」と、高遠は言った。
和やかな宴は続いたが、翌朝、大変な騒ぎが起こった。
翌朝。午前9時。
早起きした総子が、テレビをつけると、アナウンサーが興奮してニュースを伝えていた。
「港区の『芝浦水再生センター』が、何者かによって爆破されました。上部の『品川シーズンテラス』には、商業施設がありますが、今の所は影響がない、と見られていますが、センターの見学予約は当面キャンセルし、復旧工事が始まっています。専門家によりますと、警備体制は、警備会社一社のみとなっており、侵入が容易だったのではないかとういうことです。」
伝子と高遠が着替えて起きて来た。昨日は、総子のみが宿泊した。
EITO用のPCが起動した。ディスプレイには、理事官が難しい顔をしている。
「おや。大阪支部のチーフに似た、可愛い女の子がいるぞ。」理事官は、わざと剽軽に言った。
「んちゃ。可愛い女の子の南部総子です。」と、総子は臆面もなく言った。
「ニュースはみたかね、チーフ。君は帰阪するだろうが、大変な事態だ。」
「水再生センターって、初耳ですけど、幾つくらいありますの?」「30カ所。警視庁は警備強化を、今日の記者会見で話すが、複数の水再生センターに傷害があると、下水道処理が停滞する。都庁は、天手古舞(てんてこまい)だ。記者会見は都知事も参加する。EITOにもテロの可能性はないのか?と、SNSで点いた火が燃え広がっているから問い合わせが殺到している。」
「脅しですね、理事官。こぶまんか、いつかのエイラブか分からないが。」
「理事官。『こぶまん』からのメッセージです。今度はBase bookの投稿です。」と、草薙の声が聞こえた。
「画面に出せ。」
《
水再生センター。そんなのがあるんだ。ALPS処理水にケチつけるなって、怒る筈だね。那珂国は全部垂れ流しだよ。『日本海』に向けて。詰まり、この騒ぎは、我々とは無関係。信じる信じないは、『あなた次第』です。はははっははは。
》
「ふざけやがって。」と言う、原田の声が聞こえた。
「原田、減点1な。」と、伝子が言うと、「減点制評価ですか。何点で・・・。」と原田が言い、「10点で免停、いや、免職だな。」と伝子が言うと原田は黙った。
「流石、伝子ねえちゃんやな。」と、総子はクスクスと笑った。
午前10時。シネコン映画館。
警視庁のリモート記者会見が行われた。
午前10時。警視庁。
同時に都庁ともリモート記者会見を行う予定だったが、予定時間が過ぎても。都庁には繋がらない。
村越警視正が新里警視に問い合わせをさせると、通信障害だと言う。都庁の記者会見は、急遽繰り下げられて,午前10時に都庁で開くことになった。
村越は、すぐに新里を向かわせた。村越のカンは当たっていた。
午前10時20分。シネコン映画館。
久保田管理官と村越警視正は、リモート記者会見のスクリーンに現れた。ありきたりの記者会見だが、仕方が無いので、台本通り行った。
「という訳で、襲われたセンターは、目下修理と原因調査中です。今分かっていることは、ダイナマイトに時限装置が設置された爆発であったということと、地上の施設には、何の影響もなく、死傷者はゼロということです。事故ではなく、事件です。修理の日程等は都庁の記者会見で都知事に伺って下さい。リモートで参加される予定でしたが、通信障害の為に午前11時に都庁で行われます。」
記者達は、時計を見、そそくさと席を立った。
午前11時。東京都庁。
従来の記者会見が、設けられた部屋で行われた。
「事件の詳細は、まだ警視庁で調査中とのことです。補修工事の日程ですが、3週間から1ヶ月と、業者から見積もりが出ています。下水処理に関しては、他のセンターと連携して乗り切れると水道局から報告が上がっています。それから、都民の皆さんにお願いです。上水道、下水道に異常があると感じた方は遠慮無く都庁にお知らせ下さい。間違っていても構いません。万全を期す為です。よろしくご協力をお願い致します。」
都知事の言葉を遮って、手を挙げながら質問をする記者がいた。
「下水道に『異物』が見入されたのでは?という声がありますが、どうなんですか?」
「そういう話は聞いておりませんが。」「では、こういう話はどうですか?」と記者と思しき人物は、スーツから手榴弾を取りだした。
新里は、素早くタックルをした。男は倒れたが、手榴弾は空中に飛んだ。
筒井が、近寄ろうとした時、いつの間にか来ていた老人が手榴弾をキャッチ、筒井に投げ返した。
老人は、「調子に乗るなよ。」と言って立ち去ったが、聞こえたのは、記者もどきと新里だけだった。
会場に駆けつけた、女子警察官姿のあつこ、あかり、下條、小坂、結城、七尾。
オスプレイからではなく、パトカー出動だった為、交通渋滞で遅れてしまった。
あつこ達は、会場の側で、不審な老人とすれ違った。
救急隊員がやって来た。筒井達がきょとんとしていると、「骨折らしいと救急要請があったのですが。」と、救急隊員が言った。
記者会見は強制終了した。結城やあかり達は、緊急逮捕した犯人を護送することになった。何か薬を飲もうとしたが、筒井が阻止した。
新里からあつこは報告を受けた。聞くまで経緯は分からなかったが、あの老人はやはり不審な人物だった。記者会見は終了したが、村越警視正の要請で、記者達は足止めされ、持ち物チェックが行われた。
正午。伝子のマンション。
あつこから報告を受けた伝子は言った。
「都知事を襲撃しようとしたのは、エイラブ系のマフィア。水再生センターを襲ったのもだ。そして、その老人は、『こぶまん』、即ちコブラ&マングースの『枝』か『幹』だ。また、三つ巴の闘いか。どう出るかな、敵さんは。」
タラコを焼きながら、高遠は歌った。「ぴーひゃら、ぴーひゃら。♫」
―完―
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