冒険290.総理殺人キャンペーン(前編)
====== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木[日向]さやか一佐・・・空自からのEITO出向。副隊長。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
青山[江南]美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
高坂[飯星]満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。
久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。伝子をEITOにスカウトした。EITO前司令官。
愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。
原田正三警部・・・新宿風俗担当の潜入捜査官だったが、EITO出向。
渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
早乙女藍・・・元白バイ隊隊長。EITOに出向していたが,娘の轢き逃げ以降、退職していたが、EITOに就職。
市橋早苗・・・移民党総裁。現総理。
志田前総理・・・移民党前総理。
姿前総理・・・移民党総理。
麻生島副総理・・・移民党副総裁。
大泉元総理・・・移民党元総理。
福山元総理・・・移民党元総理。
野口元総理・・・違憲異種党元総理。
外山元総理・・・違憲異種党元総理。
阿寒元総理・・・違憲異種党元総理。
林原官房長官・・・移民党官房長官。
村越警視正・・・警視庁テロ対策室室長
古市宗佑・・・社会評論家。以前は『社会学者』を名乗っていて、利根川と仕事をしていた。
神崎敬吾・・・学生活動家。エイラブ主義者。
利根川道明・・・TV欲目の社員コメンテーター。今はフリーのMCをしている。EITO協力者。
藤井康子・・・伝子のマンションの区切り隣の住人。EITO協力者。
藤井進・・・藤井の孫。大学生。
青木新一・・・LinenやSNSを使いこなす大学生。
中山ひかる・・・愛宕の元隣人。アナグラムが得意な大学生。
服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。シンガーソングライター。CDも出しているが、現在は妻のコウと音楽教室を開いている。
服部[麻宮]コウ・・・見合いの席で服部に一目惚れし、後に結婚。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
夜中の午前3時。
Tick Tackに、妙な動画がアップロードされた。
[総理を殺そう、総理を殺そう]
ラップのような歌い方で、流行のTick Tack用ダンスを踊っている男。
世間が騒がない筈が無かった。
早朝から、総理官邸や警視庁には、早朝から、問い合わせの電話が頻繁にかかってきた。
そして、人が大勢詰めかけた。マスコミだけではない。野次馬が沢山現れた。
午前9時。シネコン映画館。
総理の記者会見がリモートで行われた。「ご心配頂いておりますが、警備は強化しております。以上。」
会見は短かったが、市橋総理の行動は早かった。麻生島副総裁と林原官房長官と村越警視正に相談、EITOの案件として、EITOと警察と自衛隊の共同作戦を取るように、EITOの斉藤理事官に委託した。
Tick Tackでは、総理を殺そう、と言っていた。常識に照らし合わせると、現総理の市橋早苗のことを指すが、伝子は、敢えて、志田前総理、姿元総理、大泉元総理、福山元総理、野口元総理、外山元総理、阿寒元総理を『総理経験者』として、警護対象にすることを提案した。
「市橋総理以外に総理経験者7人ですか?おねえさま。守り切れないわ。こぶまんが挑戦して来たらどうするの?」と、あつこは不満を漏らした。
「現時点では仕方が無い。それに日時や場所も明確ではない。大掛かりにしないとマスコミが黙っていない。そういうことね、おねえさま。」と、なぎさが言った。
「一ノ瀬の言う通り、ここは『取り敢えず』の布陣で行くしかない。今挙げた元総理達も戦々恐々だろうしな。しかし、表だって、国賓館のSP隊とSATで各元総理を守るしかない。勿論、市橋現総理もだ。」
理事官が言い終えるのを待っていた、夏目警視正は、「こんな時に何だが、前回逮捕した『コブラチーム』だが、右腕にコブラのマークのペイントが塗られていた。大文字君、愛川隊員、天童準隊員が捕まえた連中だ。」と言った。
「タトゥーではないんですか?」と、葉月が言った。
「うん。連中は、闇サイトで応募して参加した素人だったが、おもちゃで、あの法人の脅しをすることを請け負っただけだった。面白半分で参加しているから、喜んで言いなりにペイントした。自分たちでね。問題は、そのマークだが・・・確認したら、中津興信所の所長夫妻が、後のひな祭り殺人事件の時に見たものに似ているようだ。」
「これで、はっきりしましたね、一つ。後のひな祭り殺人事件は、こぶまんのコブラチームの仕業じゃない。コブラを強調したいのなら、素人に任せないし、ペイントではなく、葉月が言う様に、タトゥーが妥当だ。」と、伝子は推理を話した。
結局、EITOとしては、『待機』ということになった。
伝子は、総理達の護衛をEITOから出さない訳にはいかないので、2人ずつ派遣して、向かわせた。
市橋総理には、早乙女と工藤、志田前総理には伊知地と葉月、姿元総理には結城と越後、大泉元総理には大町と下條、野口元総理には増田と小坂、外山元総理には江南と大空、阿寒元総理には稲森と仁礼、林原官房長官には飯星と財前、麻生島副総裁には安藤と静音。福山元総理は「あの人達とは違うんです」と固辞したので、SATに任せた。戦力の半分以上である。
エマージェンシーガールズで残ったのは、みちるを除く『伝子シスターズ』だけになった。
伝子は、闘いになった場合の細かい指示を与えた。
市橋総理は、総理私邸だが、国会議事堂や議員会館も警備が強化された。
利根川から、自称社会学者の古市と、自称エイラブテロ研究家の神崎から『日本の危機』を面白おかしくコメントしている、と伝子は聞かされた。
「外野のヤジなんか気にしていられるか!!」と、理事官が怒鳴ったので、渡や草薙、原田はビビった。
午後4時。伝子のマンション。
区切り隣の住人藤井と共に、孫の進がやって来た。
続いて、青木と中山ひかるがやって来た。
藤井と高遠が、それぞれを紹介した。
高遠は、伝子の原稿の下訳の作業をしていたが、手を止め、AVルームに3人を通した。3人は談笑しながらも、てんでにSNSを見始めた。高遠は、時代だな、と思った。
午後5時。
ひかるが、手を止め、顔を上げて、高遠を呼んだ。
「高遠さん、Redに、コブラ&マングースが『犯行予告』をしたよ。」
ひかるの声は逼迫していた。
高遠は、ひかるのスマホの画面を見た。
《
やあ、随分お待たせしたね。昨今、『人手不足』でね。君たちが言っている『幹』はアナグラムで勝負して、みんな負けちゃったらしいね。じゃ、私もアナグラムで勝負しよう。三日三晩かけたから、自信はあるよ。『お題』は『聞こえる腕時計』だ。解けたら、その公園で午後2時に会おう。ははっはっははっははは。
》
「自信たっぷりだね。アナグラムは、ひかる君の得意分野だね。」と青木が言うと、「そうなの?」と、進が目を輝かせた。
高遠は、電子メモパッドを、ひかるに渡して、夕食の準備を始めた。
藤井も、進の様子を見ながら手伝った。奥の部屋で仮眠をしていた綾子が起きて来た。
「なんだあ、賑やかだと思ったんだ。」
夕食作りは3人がかりになった。
午後6時半。
夕食の準備が出来た頃、ひかるは3人を代表して言った。
「高遠さん。アナグラムの解は、『けいこうとうできえる』だと思う。」
「蛍光灯が消える、じゃないの?」と、藤井が台所の天井を指して言った。
「おばあちゃん、それじゃ、アナグラムが成立しないよ。」と、進が言った。
「高遠さん。僕らも受験勉強して大学して入ったんだけど、参考書に『傾向と対策』ってあるよね。明かりのの蛍光灯なら、数年先に蛍光灯がLEDに切り替わって、『蛍光灯が無くなる』って話はあるけど、それじゃ、今進君が言ったようにアナグラムが形成されないから、『東京都 消える』で検索してみたんだ。すると、『豊島区が無くなる』って話が出てきた。『消滅可能性都市』っていう言葉があるんだ。これ、読んでみて。」
高遠は、タブレットで、青木が示している画面のURLを打ち込み、表示させた。
そこには、こう書いてあった。
[豊島区は、人口自体は増加傾向にあるものの(2018年3月現在)
・転出入が活発であり、定住率が低い傾向にある。
・単身世帯の割合が多く、その半数が若年世代。
これらの背景が「消滅可能性都市」に選ばれる要因となったと考えられます。
交通の利便性がよく、職住遊接近型の暮らしができる環境は子育て世代にも魅力的であるはずなのですが、建物が密集しているがゆえに大規模公園が少なく、、ファミリー向けの住宅供給も少ないというのも、少子化が加速するという予想の一因であったかもしれません。]
高遠は、EITO用のPCを起動させ、EITO本部に繋いだ。この資料は少し前のものだが、人口減少が解消している事も無いはずだ、と高遠は思ったからだ。
「詰まり、消滅する可能性がある、から『傾向等』で消える可能性がある豊島区、という訳か。草薙。豊島区のイベントを調べてみろ。」理事官は、側の草薙に命じた。
程なく、草薙が答を出した。
「3月18日、月曜日に東京音楽系大学卒業演奏会が午後6時から行われます。あ。浜離宮朝日ホールなんだ。大学でじゃないんですね。」
「午後6時?午後2時って、こぶまんは、言ってたぞ。」と、言って理事官は困った。
伝子はスマホで、服部を呼び出した。事情を話すと、服部に代わってコウが出た。
「先輩。いきなり本番は出来ませんよ。恐らくリハーサルの時間です。卒業生だから、午後6時に行く予定はしていましたが。」と、コウは言った。
「闘うとしたら、浜離宮恩賜庭園ですね、以前、闘った事がありますから、分かります。」と、画面の向こうの伝子が言った。
そして、「よくやった、婿養子。」と伝子は言って、画面は消えた。
「高遠さん、婿養子って、呼ばれてるの?何かしくじったの?」と、無邪気に進が言った。
「ああ、最近2人の間で流行ってるジョークさ。僕は『鬼嫁』って言っている。」
「婿殿。鬼嫁はないでしょう?」と、それまで黙っていた綾子が言った。
「あ。申し訳ない。」と、高遠はお辞儀をした。
「え、と。麻婆豆腐出来たし、皆で食べよう。ああ、そうだ、ひかる君と青木君は、今夜どうするの?」
「みちる姉ちゃんが迎えに来てくれる、って。今、『暇だし』って言ってた。」
高遠は暇な原因を知っていたが、さらっと流した。
―完―
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