冒険288.呪縛(後編)

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 高木[日向]さやか一佐・・・空自からのEITO出向。副隊長。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 青山(江南)美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 高坂[飯星]満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。

 大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。伝子をEITOにスカウトした。EITO前司令官。

 愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 原田正三警部・・・新宿風俗担当の潜入捜査官だったが、EITO出向。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 早乙女藍・・・元白バイ隊隊長。EITOに出向していたが,娘の轢き逃げ以降、退職していたが、EITOに就職。

 高坂一郎看護官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。飯星と結婚した。

 須藤桃子医官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。天童と事実婚。

 天童晃(ひかる)・・・かつて、公民館で伝子と対決した剣士の一人。EITO東京本部武術顧問。須藤とは幼馴染みで、須藤と事実婚。

 御池花子・・・東京都知事。

 阿久根宏明・・文科省大臣。

 東山英一・・・SAT隊長。

 木更津源太・・・SAT副隊長。

 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。

 中津公子・・・健二の妻で、所員。

 芦屋三美・・・芦屋グループ総帥。EITOのオーナー。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 中津健二さん夫妻は預かったよ。中津さんは興信所の所長で、警視庁中津警部の弟だってね。中津警部さん。『知り合い』に頼んで、身代金用意してよ。5億円にまけといてあげるね。助けに来なかったら、中津夫妻でなく、パンピーが死ぬよ。身代金用意したら、ああ、警察官だから助けるのね、ってネットに拡散するだろうな。そうだ。EITOに相談してもいいよ。お金持ちらしいから。それと、僕は平和主義でね。

 》

「ふざけやがって!!」と、声を上げたのは、ディスプレイの向こうの原田だった。

「下品な子は嫌いよ。」と言って、芦屋三美がディスプレイに映った。

「理事官。『見せ金』は引き受けたわ。大文字さん、いえ、伝子さん。作戦は?」

「先ず、今回はアナグラムを含んでいなさそうだから、『平和主義』から2つ分かりました。明日は『東京都平和の日』です。ターゲット候補は東京都庁、文科省大臣、そして、式典会場の3種類。草薙さん、式典はどこですか?」

 少し間が開いてから、草薙は答えた。

「え、と。式典会場は東京都庁ですが、今年は。3月10日午後2時から、となっています。今日ですね。」「そうなんですか。では、都庁と文科大臣を守りましょう。なぎさ、班分けしてくれ。あ、都庁だとすると、闘う場所は庁内か。」「いや、新宿中央公園があります。」

 原田が草薙の横から応えた。

「そうか。なぎさ、念頭においてくれ。私は別口を当たる。それが2つ目。静音、ついて来てくれ。というか、迎えに来てくれ。あ、忘れてた。渡さん、中津さんはDDバッジ持ってましたっけ?」

「はいはい。とっくに割り出してますよう。DDバッジを含む3種類の追跡装置は、参議院の議員会館を指しています。」と、草薙は応えた。

「じゃ、さやかの班は、中津さん救出に議員会館に向かえ。こちらは、すぐに出発して構わない。理事官。SATに応援要請願います。」

「了解した。大臣と都知事には連絡しておこう。大臣は、早乙女君と工藤でいいかな?」

「はい。よろしくお願い致します。」

 リモート会議が終ると、伝子は『正式』に着替えると、「学。先日、コブラを勝手に開放した自称動物愛護団体の名前、何だっけ。」

「『にゃんこからスタート』。地図、プリントするよ。」

 午前10時。足立区。とあるビジネスビル2階。『にゃんこからスタート』事務所。

 男が10人。なだれ込んで来た。

「一足遅かったな。コブラチーム。」と、言って現れたのは、エマージェンシーガールズ姿の伝子と静音。そして、天童だった。

「車は使えないようにしておいたよ。次は、君たちの自由を奪わせて貰うよ。」と、伝子は言い、素手で彼らのナイフを落して行った。静音も天童もそれに習った。

 20分もかからず、男達を倒し、天童が長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛に似た、通常の人間には聞こえない音を出し、主に『作戦終了』の合図に使う通信道具である。

「代表の方は?」伝子が問うと、隅に逃げた女達の1人が手を挙げた。

「あんたらも過激だったが、こいつらはもっと過激だった。あんたらを誘拐して、虐殺する予定だった。爆発物も車に積んであったよ。あんたらを連れ去った後、ここを爆破する積もりだったのだろう。動物愛護も結構だが、世間に受け入れられないような活動は自粛すべきだと思うがな。」と、伝子は苦言を呈した。

 午前10時。東京都庁。

「ここがですか?」御池都知事は、電話の相手の理事官に言った。

「あのメッセージ。私も見ましたが、『平和主義』って言ってたと思うんですが。」「悪党の理屈ですよ,知事。『平和を維持するとか守るとか言っていない』。それが、理屈です。詰まり、平和を壊すぞ、という脅しです。午前11時には、SATが到着します。正午には、EITOが到着します。推測の元での作戦です。先日の事は、『空振り』ではなく、予行演習的なことと我々は考えています。また、『空振り』だったとしても、抑止力と考えればいいと思います。」「では、予約で来る都民には、明日に振り替えて貰いましょう。」

「いや、それなら、明後日の方がいいでしょう?知事、明日は何の日でしょう?」「明日は・・・東日本大震災の・・・。明日も狙われるんですか?」「可能性はあります。去年は、各県警と警視庁が一体となって、守りました。今年も油断出来ません。悪党に『休日』はありません。」

「おっしゃる通りね。職員には伝えていいかしら?」「スパイがいないとは言い切れませんが・・・避難誘導はSATやEITOに従うよう言って頂ければ幸いです。」「了解しました。」

 午前10時半。阿久根大臣の家。

「総理から、外出を控えてくれ、と連絡がありましたが、そういう事でしたか。では、警備は?」「先日のEITO隊員と国賓館のSP隊です。」「それは、心強い。読みかけの本でも読んでいましょう。」

 斉藤理事官からの電話を切った阿久根大臣は、庭に人影を見た気がしたが、気にしないことにした。警備は万全だ、秘書達には出来ない仕事だ。

 午前10時。参議院議員会館。

 SATの木更津副隊長以下3人が、日向達を出迎えた。

「職員達は既に避難させてあります。何で今頃、と思いましたが、今日は日曜日でしたね。休日出勤している人は僅かでした。ダークレインボーは、議員にコネがあるんですかね。」「あるいは。」

 2人が冗談を言っていると、中津健二と公子が歌を歌っているのが聞こえた。

 恐らく、誰かが救出に来た時、『物音』が分かり難いうようにしたのだろう。

 それと、人数を教えているようだ。馬越は素早く暗算をした。「10人前後ですね。」

「よし、一気に行きましょう。」と、日向は決断、日向、馬越、大空はSATの3人と突入した。銃は持っていたが、あっと言う間にねじ伏せた。

 大空が長波ホイッスルを吹いた。警官隊がやって来て、彼らを逮捕連行した。

「一応、持って来る予定はしていましたけどね、身代金。中津さんご夫妻は、5億円だそうですよ。」「俺って偉いんだあ。」「何で、こんなことに?」「ひな人形殺人事件のことを喫茶店で話していたから尾行したら、途中で彼らの仲間にタックルされましてね。面目ない。迷惑かけて。」「ご無事で何よりです。」と、日向は笑った。

 午前11時。EITO東京本部。司令室。

「アンバサダーの班と、日向副隊長の班、それと、大臣警護の早乙女隊員、工藤隊員から『平定』の連絡が入りました。理事官。」

「都庁班以外は一旦帰還するように言ってくれ。式典は午後2時からだったな。」

 正午。新宿中央公園。

「成程な。どうやら、隠密行動が得意なようだな、マングース班は。不審人物の往来がある、と地域住民から通報があった。そこに、ミサイル誘導装置を設置しても、都庁にはミサイルは届かないよ。アレを見ろ。」

 誘導装置を設置していた集団は、ぎょっとした。

 都庁の上空に、夥しい空自戦闘機、オスプレイ、飛行船が浮かんでいたからである。

 声をかけてきた男は、そこにはもういなかった。

 トラックが数台、やって来た。

 最初の集団のリーダーが、トラックの一団のリーダーに言った。トラックの一団は、銃火器で武装していた。

「先手を打たれた。覚悟を決めた方がいい。」

「何の覚悟だ。自爆していい覚悟か?」と、声がして、あちこちからブーメランが跳んできた。

 なぎさを先頭にした、エマージェンシーガールズがやって来た。

「都庁の方は心配しなくていい。SATが守っている。」なぎさが言うと、武装集団の何人かが、ガトリング砲でエマージェンシーガールズを撃ち始めた。

 エマージェンシーガールズは散開し、あつこ達は、ペッパーガン、胡椒弾。ウォーターガン、フリーズガンで応戦した。ペッパーガンとは、胡椒などの調味料を主成分にした丸薬を弾丸状にしたもので、胡椒弾は、その丸薬を大きくした、手榴弾である。

 また、その間隙に、あかり達はシューターを、田坂達は弓矢を用いて攻撃をした。

 シューターとは、先端に痺れ薬が塗ってある、うろこ形の手裏剣である。

 EITOガーディアンズの面々は、誘導装置を解体し始めた。

 ホバーバイクで登場した、伝子はホバーバイク上から、水流ガンでグミ弾を撃った。

 ホバーバイクは,民間開発の『宙に浮くバイク』で、EITOが採用、運搬や戦闘に使用している。水流ガンから発射した水は、空気中に射出すると、グミ状に変化して銃火器の使用を困難にする。

 30分もしないうちに、爆弾男が現れた。上着を脱いだ男達は、腹にダイナマイトを巻いている。伝子はインカムで、あつこと井関に指示を出し、稲森が爆弾男達をネットガンで爆弾男達に撃った。ネットガンとは、陸自が開発して使用している、クマやイノシシを網で捕獲する為の道具である。

 伝子は、ホバーバイク上から、リーダーと思しき男をハープーンで押し倒し、数十メートル押し出した。ハープーンとは、銛のことで、大怪我をさせない武器である。

 公園の時計が午後2時を指した。

 闘いは終った。

 午後3時半。東京都庁。

 式典は終った。SATの東山隊長と御池都知事は、エマージェンシーガールズ姿のみちるに礼を言った。

 都庁の利用者に化けた男女は、SATに捕縛されていた。

「副隊長補佐代理さん、どうして、彼らだと気づいたの?」「目つきが違ってて、他の人と動きが違っていたから。これでも、『ひとを見る目』はあるんです。」

 胸を張って言う、みちるに、「成程。」と、東山は感心した。

 翌日。午前9時。東京都庁。知事室。

 10人の男が侵入した。結城、下條、小坂、越後、葉月、伊知地が簡単に倒し、伊知地は長波ホイッスルを吹いた。

 隠れていた副知事が姿を現わした。「アルバイトが犯人?空き巣までやるとはね。ダークレインボーは何でもありなんですね。」

「隊長と副総監からの伝言です。東京都庁は都民のもの。都民で無い外国人は基本的に雇わないこともセキュリティ保全です。そう、都知事にお伝え下さい。」

 副知事は、苦虫を潰した顔で、「了解しました。お伝えします。」と応えた。

 庁舎を出た、結城は言った。「都民のもの、か。日本は日本人のもの。偉い人達は忘れてるのね、きっと。」

「我々は、EITO。EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationのエージェンシー。何が『平和主義』よ、こぶまん。こっちは、『平和への案内人』の軍団よ。」と、伊知地は結城に言った。

「それ、報告書には書かなくていいからね。」と、結城は言った。

 翌日。午後2時。EITO本部。司令室。

「アンバサダー。各班、配置についたようです。」と、渡が報告した。

「筒井と白藤。この処分で良かったのか?大文字君。」

「元カレと妹、ですか。『お仕置き』はまだ始まったばかりですが。」

「今の言葉は、聞かなかったことにしよう。」と、斉藤理事官は呟いた。

 ―完―

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