冒険245.危機何髪?(後編)

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田誠警部補・・・警視庁刑事。あつこの夫。

 久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。伝子をEITOにスカウトした。EITO前司令官。

 愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 橋爪警部補・・・愛宕の相棒。普段は、丸髷署に勤務。

 斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 日向(ひなた)さやか一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。高木と結婚することになった。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 江南(えなみ)美由紀・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。入院中。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 青山たかし・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 七尾伶子巡査部長・・・元警視庁ソタイ課。EITO出向。

 大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。

 藤井泰子・・・伝子のお隣さん。モールで料理教室を経営している。

 大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

 高坂一郎看護官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。喫茶店アテロゴのマスター。

 中津敬一警部・・・元警視庁捜査一課刑事。今は副総監直轄のテロ対策室勤務。

 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 新里芽衣子・・・警視庁警視。あつこの警視。警視庁テロ対策室勤務。

 田尾美緒子・・・白バイ隊隊長。

 名越撤兵・・・MAITOのC班班長。

 みゆき出版社編集長山村・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。

 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。今は建築デザイン事務所社員。社会人演劇を主宰。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。宅配便ドライバーをしていたが、やすらぎほのかホテル東京の支配人になった。

 山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。今は海自臨時職員。

 利根川道明・・・TV欲目の社員コメンテーター。後にフリーのMCになる。EITO協力者。

 南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。元高校の国語教師。今は妻の文子と学習塾を経営している。

 服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。妻のコウと音楽教室を経営している。

 市橋早苗・・・移民党総裁。総理。

 坂哲夫・・・農水相。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午後7時。EITO本部。司令室。

 ディスプレイには、オスプレイの中の伝子となぎさが映っている。

「迂闊だったのは、私も同じだよ。今、草薙に言われたところだ。コンティニューが動画にせずメッセージにしたのは、こういう『先入観』による誘導をする為だったんだ。『さかさま』は倒立している状態や順番が違うことじゃない。坂という名前の人物のことだったんだ。ケンが言う『坂様』は、今度農水相になった、坂哲夫が政府要人として狙われやすかった。家人から、誘拐されたと連絡が入ったと総理から相談の電話が来た。恐らく、大文字君が眠っている間に着信があった筈だ。」

「申し分けありません、隊長。いや、アンバサダー失格です。」

「自分を責めてる場合じゃない。敵に合せて迎撃するだけだ。」

 午後7時。警視庁。裏門。

 磯部真紀子が、証拠不充分で不起訴になり、釈放された。

 中津興信所の高崎が尾行を始めた。全くの無防備だ。

 真紀子は、地下鉄半蔵門線に乗った。高崎はICカードで自動改札機を通った。

 昔は、ターゲットがいきなり電車に乗ると、尾行者は慌てたものだが、ICカードを持っていれば、自動券売機に走らなくて済む。高崎達は、常時、複数枚持たされている。

 電車を乗り継いで、真紀子が向かったのは、葡萄館だった。看板を見ると、アイドルのコンサートだった。流石に簡単には入れない。高崎は、中津に電話を入れた。

 午後8時。葡萄館。坂真美の楽屋。

 ディレクターが呼びに来て、坂真美は舞台袖に向かった。今日は相馬渥美のコンサートだが、仲のいい真美が『サプライズゲスト』いう演出で登場することになっていた。

 MCの利根川が、「ここで、渥美ちゃんにスペシャルプレゼントがありまーす。出てきてー。」と舞台袖に声をかけた。

 すると、出てきたのは真美だけではなく、覆面をした、無骨な集団だった。

 集団の1人が天井に向かって、銃を撃った。利根川は、携帯しているDDバッジでSOS信号を送った。

 DDバッジとは、元々は陸自が災害救助用に開発したバッジだが、更に汎用性を持たせた。物部が名付け親である。

 午後8時。EITO本部。司令室。

「理事官。利根川さんからSOS信号です。」と、渡が言った。

「どこだ?」「葡萄館です。葡萄館では、相馬敦美のデビュー1周年のソロコンサートが開催されています。」

「テレビAの中継が入っているようです。リポーターがテレビに映っています。観客が逃げ出しました。舞台スタッフもです。舞台には、相馬敦美と利根川さんと・・・誰かな?」

「坂真美ですね。一日署長をやっているのを見たことがあります。」と、結城が言った。

「先輩。今、何ておっしゃいました?」と七尾が結城に尋ねた。

「ん?坂真美ですね・・・あ。」と、結城が気づいた。

「さか・・・さま。」と、小坂が言った。

「こさかは、こさかさま、ね。」と下條が言った。

「大臣だけじゃなかったのか。」と、夏目警視正が呟くと、筒井が「姿元総理のお孫さんもアイドルでしたね。」と言った。

 午後8時。警視庁。テロ対策室。

「警視正。今、坂農水大臣のスマホに犯人から電話があったそうです。今、大臣を連れて向かっている。着いたら連絡するから、EITOに連絡をしろ。坂大臣の命は、EITO隊長の命と交換だ、と。」

 新里の報告に村越警視正は首を捻った。「どういうことだ?」

 午後8時半。坂真美の楽屋前。

 高崎は、中津所長から中津警部に連絡して貰い、警備員室に寄って、真美の会社のスタッフという名目で楽屋にやって来た。

 中に人がいる気配を感じて、高崎が覗くと、真紀子がいた。

「そこで、何してる?」高崎が問うと、呼びかけられた真紀子が振り向き、脱兎のごとく駆けだした。

 警備員と一緒に高崎は真紀子を取り押さえたが、真紀子は笑ってこう言った。

「もう遅いわよ。舞台では、どうなってるかしらね。こっちの用事は済んだわ。」

 高崎は、DDバッジを押して、EITOにSOS信号を送った。

 午後8時35分。EITO本部。司令室。

「理事官。また、DDバッジからSOS信号です。今度は中津興信所の高崎さんからです。」と、渡が理事官に報告した。

「先発隊は、もう到着しているな。近くにいるエマージェンシーガールズに急行させろ。」理事官の指示に、渡はマイクを取った。

「エマージェンシーガールズ各位。中津興信所の高崎所員からSOS信号。近くの隊員は向かって下さい。場所は、坂真美楽屋。あ。渡辺隊員の班が一番近い。1階分上がって階段横の部屋です。」

「了解。」

 午後8時40分。葡萄館。坂真美楽屋。

 入って来たエマージェンシーガールズ姿のあつこに、高崎が言った。

「これです。」と、高崎はテーブルに固定されているダイナマイト時限爆弾をさした。

「あんた、自爆テロする積もりだった?」と、あつこが言うと、「冗談。こいつらが勝手に拘束したのよ。警察じゃあるまいし、逮捕は違法だわ。んぐぐぐぐぐ。」と言った。

 あつこが、テーブルの近くに転がっていたガムテープで真紀子の口を塞いだ。

「高崎さん。警察に連絡を。」「え?・・・はい。了解しました。」

 午後9時。舞台。

 利根川と、アイドル2人は椅子に座らされ、両手両脚を縛られていた。

 そして、連れて来られた坂農水相が両手両脚を縛られたまま、横たわっていた。

「真美。ゴメンね。」「おじいちゃん。」

 集団の男達は覆面をしたまま、その光景を見ていた。

「待たせたな。」と、やって来たのは、日向を含めたエマージェンシーガールズだった。

「人質を開放して貰おうか。」

 日向の言葉に、リーダーらしき男が言った。「ああ。力ずくで奪ってみろ。」

「奪う?おまいう。奪ってるのは、お前らだろうが。」

 銃や機関銃を持った者は数人いる。あとは、ナイフかバットだ。

 日向は、梅コースだな、と思った。

 大空が、こしょう弾を集団目がけて投げた。

 金森、馬越、仁礼、飯星が現れ、利根川達を舞台袖に連れ去った。

 増田がインカムで合図を送った。

 客席の陰から矢が飛んで来て、何人かの男達は腕を押えた。田坂、安藤、静音、七尾の新生弓矢隊だ。

 ホバーバイク隊が現れた。ホバーバイクとは、民間で開発した『宙に浮くバイク』をEITOが採用、戦闘や運搬に用いている。

 高木、青山、馬場はホバーバイク上から水流ガンでグミ弾を発射した。水流ガンとは、グミ状に変化する水を発射する銃である。エマージェンシーガールズも装備として持っているが、ホバーバイクのものは、それより多くの量を発射出来る。

 敵の銃や機関銃は使用困難になった。

 日向は、あかり、浜田、伊地知にシュータで足止め攻撃をするように指示し、自分は、増田、財前、稲森とともにブーメランで敵を先制攻撃した。

 江南、工藤、大町、結城が避難誘導を始めた。

 シュータとは、うろこ形の手裏剣で先端にしびれ薬が塗ってある。

 殺傷用ではなく、敵の動きを止める為に開発された。

 そこへ、物部、依田、南原、服部、山城、青木が到着して、避難誘導を手伝い始めた。

 そして、集団の援軍が到着した。あつこも駆けつけ、合流した。

 午後9時。墨田区。十間橋付近。

 逆さスカイツリー撮影として最近有名な『十間橋(じゅっけんばし)』。伝子となぎさは、草薙が検索してヒットした『さかさま』で有名な場所として、念の為、マセラティで警戒に来ていたが、真美のコンサート会場に賊が現れという情報を受け取った。

「ここは、『はずれ』だったみたいね、おねえさま。」と、なぎさが言うと、「急ごう。うな電を打っておく。」と伝子は応えた。

「おねえさま。夜ご飯はまだ無理よ。」と、みちるが言ったが、伝子は助手席から小型ディスプレイを起動させ、言った。「大文字です。出前、お願いします。」

 画面から、MAITOの名越の声が聞こえた。「了解しました。」

 なぎさは、マセラティを加速した。途中白バイが走ってきて、先導した。

 田尾の白バイだった。「可能な場所まで先導します。マセラティのディスプレイに田尾の顔が映り、声が聞こえた。

 実は、田尾の白バイにはCCDカメラが搭載されており、警察無線を通じて、警視庁、EITO経由でマセラティに通信が繋がっている。マセラティの通信は、MAITOにも繋がっている。高速に乗ってから、MAITOのオスプレイが飛来、UFOキャッチャーのようなアームが降りて来て、マセラティをキャッチ、空中から搬送した。

 午後9時40分。葡萄館。コンサート会場。

 マセラティは直接MAITOのオスプレイから降ろされた。

 戦闘中の集団から、逃げ出した男がいた。集団のリーダーらしき男だった。

 伝子となぎさとみちるは、車を降りて、ブーメランを男に投げた。

 男は、気絶した。

 午後10時20分。

 闘いは終った。伝子は長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛のような笛で、通常人間の耳には聞こえない、信号を送ることが出来る。

 待機していた警官隊が、橋爪警部補、愛宕警部、久保田警部補、西部警部補、松添警部補に連れられてやった来た。

 あつこがやって来て、言った。

「おねえさまも、なぎさも、みちるも、ずるーいい!!いいとこ取りして。」

「まあまあ。2人のアイドルは利根川さんと一緒に帰りました。利根川さんの話では、今回の観客全員に次回コンサートの無料チケットを配るそうです。」と久保田警部補が言い、後から来た久保田管理官が「大臣も無事保護した。総理からだ。」と、自分のスマホを渡した。

「大文字さん。いつもありがとう。あなたの事だから粛々と任務を遂行したのね。坂大臣がとても感謝していました。お孫さんの真美ちゃんはね、『内緒の孫』だったの。『おじいちゃんの七光り』って言われたく無かったんだって。マスコミに嗅ぎつける前に公表するそうよ。またね。」「ありがとうございます。」

 電話を切ると、伝子はスマホを久保田管理官に返した。

「大文字君。紹介しておこう。松添警部補だ。今回から『片付け隊』に入った。」

 片付け隊とは、実は、久保田管理官自身の命名で、EITOには公人逮捕権も連行する権利も無い為、倒した敵の逮捕連行を警視庁選抜で行う任務の警察官を指す。

「その節は、どうも。」と、なぎさはマスクを取って松添に挨拶をした。

「転勤されたんですね。」「あなたもエマージェンシーガールズでしたか。タダの観光客ではないと思っていましたが。よろしくお願いします。」

 午後11時過ぎ。伝子のマンション。

「あなた。今夜は、たっぷり愛して。」「勿論だよ、伝子。」

 風呂場から声がした。「伝子。婿殿。石鹸ないわよ。」

 2人は顔を見合わせた。「忘れてた!!!!!」

 ―完―

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