冒険244.危機何髪?(前編)

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田誠警部補・・・警視庁刑事。あつこの夫。

 久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。伝子をEITOにスカウトした。EITO前司令官。

 愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 橋爪警部補・・・愛宕の相棒。普段は、丸髷署に勤務。

 斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 日向(ひなた)さやか一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。高木と結婚することになった。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 江南(えなみ)美由紀・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。入院中。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 青山たかし・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 七尾伶子巡査部長・・・元警視庁ソタイ課。EITO出向。

 大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。

 藤井泰子・・・伝子のお隣さん。モールで料理教室を経営している。

 大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

 高坂一郎看護官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。喫茶店アテロゴのマスター。

 中津敬一警部・・・元警視庁捜査一課刑事。今は副総監直轄のテロ対策室勤務。

 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 新里あやめ・・・警視庁警視。あつこの後輩。警視庁テロ対策室勤務。

 田尾美緒子・・・白バイ隊隊長。

 名越撤兵・・・MAITOのC班班長。

 みゆき出版社編集長山村・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。

 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。今は建築デザイン事務所社員。社会人演劇を主宰。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。宅配便ドライバーをしていたが、やすらぎほのかホテル東京の支配人になった。

 山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。今は海自臨時職員。

 利根川道明・・・TV欲目の社員コメンテーター。後にフリーのMCになる。EITO協力者。

 南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。元高校の国語教師。今は妻の文子と学習塾を経営している。

 服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。妻のコウと音楽教室を経営している。

 市橋早苗・・・移民党総裁。総理。

 坂哲夫・・・農水相。

 ケン・ソウゴ・・・かつては『死の商人』を名乗っていたが、実はイーグル国のスパイだった。死の商人が壊滅した後も、陰になりひなたになり、伝子を支援している。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午後11時59分。警視庁。

 大型トレーラーが、正門前に『突っ込ん』だ。

 そして、爆発音。

 午前2時。放置されたショベルカーやトレーラーがレッカー車で取り除かれた。

 警視庁中庭。臨時に設けられた記者会見場で、副総監が記者会見を行った。

「思えば、あの挑戦状めいたメッセージの動画は、アバターとボイスチェンジャーを使っていましたが、宣戦布告であり、ヒントを残した積もりだったかも知れません。ただ、『夜中』『突っ込む』では、どこで事件を起こすか、いつ起こすかは不明でした。すぐに対処出来なかったことは事実です。」

「副総監。辞意される、ご予定は?」「コンティニューを殲滅した後で考えます。善後策は、これから練ります。」副総監は去って行った。

 進行をしていた、村越警視正が言った。「副総監には、帰っていただきます。会議がありますので。ご不満な方は、指定の線に出て、ご芳名、会社名、ご意見をどうぞ。撮影をします。暗いようなら、照明を足しますよ。ご意見は10分以内に願います。ご意見に質問事項があった場合、御社宛に『簡易書留郵便』で、係の者が送付します。

 最前列の女性記者が叫んだ。「横暴だわ。権力の濫用よ。ダークレインボーって、本当にいるんですか?いつも、『幹』とやらがヒントを出して、EITOや警察が動き出す。八百長よ。」その瞬間、村越の横にいた、新里警視がキッチンタイマーを押した。

「何してんの?もう始まってるの?押し直しなさいよ。」村越も新里も黙って見ていた。

「ショベル・・・。」「ご芳名、会社名をどうぞ。」「何言ってんの?記者証で分かるでしょ。」「録画しています。では、カメラに向かって見せて下さい。」

 カメラは固定で、女性記者は背が低い。女性記者は諦めて名乗った。

「親東京新聞の磯部真紀子です。質問は・・・あ、ショベルカーは何故突っ込んだんですか?トレーラーは?」新里が冷然と言った。「あと5分です。」

「コンティニューって、何の『つづき』ですか?レッドサマーとどんな関係ですか?何で、あちこち突っ込んだんですか?また、どこかに突っ込むんですか?」

「あと1分です。」と、新里は言った。

「10分じゃ足りないわ。もっと時間を下さい。最前列なんだから『権利』・・・。」

「5,4,3,2,1.」キッチンタイマーは、けたたましく鳴った。

 村越の合図で、応援に来ていた、結城とみちるが、強引に彼女の両腕を掴んで退場させた。

 他の記者達は、要領よく質問をし、横にいる相棒に時間を計らせた。

 午前2時。物部のアパート。

 分岐イヤホンで、PCで記者会見を見ていた物部と栞が笑った。

「流石だな、警視庁のナンバー2は。沈着冷静だ。」「ナンバー2は久保田管理官じゃないのね。」「久保田管理官はナンバー3だな。ナンバー4が、あつこ警視。」「あ。キッチンタイマーガールは、誰かしら?」「さあ、明日、大文字に聞いてみるよ。」

 赤ん坊が起きて愚図ったので、栞はあやして、物部はPCを閉じ、Linenで高遠にメッセージを送った。「おやすみ。」

 午前3時半。警視庁。記者会見場。

 職員と警察官達が慌ただしく会場を撤去した。

 去ろうとする新里に、あつこが声をかけた。

「新里。昇進おめでとう。ごめんね、代役頼んだりして。」「いいえ、先輩の為なら。会議、何か決まりました?」あつこは、首を横に振った。

「分かっているのは、コンティニューが予告したことを実行したことと、レッドサマーの言った通り、せっかちな性格な敵だってこと。あとは、EITO案件になった事くらい。間違い無くテロだし。私はEITOに一旦戻るわ。また仮眠。子供を抱く暇もないわ。」

「お子さん、男の子でしたっけ?」「うん。順調に育っているわ。じゃ、あなたも仮眠しなさい。」

「はい。」新里は、あつこに敬礼をした。

 午前8時。伝子のマンション。

「じゃ、婿殿、出掛けるわ。伝子は今日もあまり眠れないわね。」綾子が高遠に言った時、チャイムが鳴り、ドアのところには、愛宕と橋爪警部補が立っていた。

「ボディーガード?愛宕君。」「はい。VIPですから。ロールスロイスでなく、パトカーで残念ですが。」「そんな冗談言うようになったんだ。」綾子は感心した。

 家が火災にあった時のみちるや愛宕を見ていたからだ。

 午前9時。

 高遠は、息子いさむに会いに行けなくなったが、かえって良かったと思った。

 実は、深夜に高遠と伝子は別々に池上家に行く予定をしていたのだ。

 息子が生まれた事は、一部の人間しか知らない。公には流産したことになっている。身の安全を守る為、家の中にも医療設備がある、池上院長の家に匿って貰っている。

 EITO用のPCが起動した。このPCは、こちらからも操作できるが、EITOからもリモートで操作できる。正にホットラインだ。

「おはよう。高遠君。眠れたかね?記者会見は見たかね?」「はい。最初の方だけ。あの磯部って記者、危ないですね。」

「うむ。密かに警備を付けている。いつかの例があるからね。」

 いつかの例、とは、リモート記者会見になる前の記者会見で、しつこく食い下がった女性記者が、宿泊していたホテルから、投げ出され、殺されたことである。世間では、酒酔いで落下したことになっているが、組織に消されたのだ。

 正午。高遠が、缶詰とラーメンで食事をしながら、TVを点けた。

 とんでもないニュースが飛び込んできた。高遠はボリュームを上げた。

『逮捕された磯部真紀子記者は、容疑を否認している模様です。繰り返します。午前7時頃、大阪に本社がある、みやねや新聞東京支社の米田啓介記者の死体が、目黒川で発見されました。米田記者は背中にナイフで刺された跡があり、磯部記者の名刺とICレコーダーが米田記者の身に着けていたホルダーの中から見つかっています。逮捕された磯部真紀子記者は、容疑を否認している模様です。』

「被害者でなく、加害者?」高遠が呟いて、ぼーっとしていると、「休憩している暇はないな。あつこ、とんぼ返りだ。」と言う声に我に返った。

「着替え取ってくる。」と言って伝子が奥に消えると、「信じられないことが続くわ。高遠さん。今朝彼記者会見場にいた新里は、警察学校の同期でね、先日警視になったばかりでね。今回の事件でEITOとの連絡係をします。直接じゃないけど、高遠さんにも紹介しておきます。」「了解。」

「コンティニューと別件とは思えない。どういうケースが考えられるか検討してみておいてくれ。行って来る。あ。行って来ます、ダーリン。」

 最後の方は、にっこり笑って、甘えた声で言った。

「おねえさま。いつの間にか演技、バージョンアップしたの?」

 伝子は、あつこの問いには答えず出て行った。

 入れ替わりに、藤井が入ってきた。「大丈夫?」「え?」「箸、逆さまよ。」

 午後1時。とうとう、コンティニューのメッセージがBase bookに流れた。今回はアバターでしゃべっていない。

 ちょっと、懲らしめてやったわ。何のこと?何のことかしら?ひ、み、つ。

 でね。やっぱりただ攻撃するって退屈よね。『アタイも』ヒントをあげて楽しむことにしたわ。1日や2日で東京を征服なんて、映画みたいで嫌よね。第1ヒント。『さかさま』。考えてみて。警察よりEITOの宿題かな?ああ、そうそう。警視庁の正門。来月改修工事の予定だったのよね。だから、ならしただけだから、大袈裟に騒がないで。

 》

 午後2時。EITO本部。会議室。

 皆で、Base bookのメッセージを観ていた。

「オカマさんなんですか?」と、まだ三角巾の取れない下條が言った。

「振り、してるだけよ。そうですよね、警部。」とあかりは結城に言った。

「多分ね。ヒントくれたのはいいけど、いつ仕掛けてくるか分からないわ。」と結城が言った。

 会議は1時間続いたが、皆の疲れた顔を見た理事官は言った。

「大文字君。一旦解散しよう。皆、体力の限界を超えている。」「その方がいいな。みんんな、ビタミン剤を用意したから、持ち帰れ。高坂、飯星。配ってやれ。」理事官の隣に来た須藤医官が言った。

 午後4時。伝子のマンション。

「で、また仮眠?」「そう。姉妹仲良くね。」「やっぱり若いのね。細切れで眠るなんて。麻婆豆腐でも作りましょう。」「藤井さん、教室は?」

「恐いことが続くとね、引きこもっちゃうのよ。欠席者が多いから、今日は『休講』。

「確かにね。」と、入って来た、山村編集長が言った。

「藤井先生。見学していいかしら?」「編集長。一緒に食べましょうよ。」

「あら、悪いわね。」山村は、高遠の提案にすぐに賛成した。

 午後6時半。4人で麻婆豆腐を食べていると、固定電話が鳴った。

 高遠は、すぐに出ないで、留守番電話の応答を聞こうとしたら、留守番電話と知った相手は、すぐに切った。

 伝子達が不思議に思ってると、伝子の予備のスマホが鳴動した。ケンのホットライン用だ。伝子はスピーカーをオンにした。

「大文字。今の固定電話は俺だ。こっちの方がいいと思ってな。コンティニューはもう動いている筈だが、坂大臣の警護はいいのか?」「え?」「え、って手配していないのか?やられるぞ。実は、官邸の動きが慌ただしい、って情報が入ったから、確認したんだ。誘拐とかで済めばいいけどな。」

 電話が切れ、高遠と伝子となぎさは「あ!!」と声を上げた。

「さかさまって・・・。」と伝子が絶句していると、「どこの坂、様?」と綾子が聞き返した。

 ―完―

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