冒険243.コンティニューの思惑
====== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田誠警部補・・・警視庁刑事。あつこの夫。
久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。伝子をEITOにスカウトした。EITO前司令官。
愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
橋爪警部補・・・愛宕の相棒。普段は、丸髷署に勤務。
斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
日向(ひなた)さやか一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。高木と結婚することになった。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。
江南(えなみ)美由紀・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。入院中。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。
青山たかし・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。
渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
七尾伶子巡査部長・・・元警視庁ソタイ課。EITO出向。
大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。
藤井泰子・・・伝子のマンションの区切り隣の住人。モールで料理教室を経営している。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。
高坂一郎看護官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。喫茶店アテロゴのマスター。
辰巳一郎・・・物部が経営する喫茶店アテロゴのウエイター。
一色泰子(たいこ)・・・辰巳の婚約者。喫茶店アテロゴのウエイトレス。
中津敬一警部・・・元警視庁捜査一課刑事。今は副総監直轄のテロ対策室勤務。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。
中込新子・・・(新)ウーマン銭湯支配人。
芦屋三美・・・芦屋財閥総帥。EITOのオーナー。芦屋三姉妹の三つ子の1人。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午前9時半。喫茶店アテロゴ。
開店前で、物部と高遠がテーブルを挟んで話している。
「伝子シスターズ?何だ、そりゃ?」「たまたま、トイレに入っている時、聞いちゃったんだって。」「女子トイレは憩いの場でもありますからね、男子と違って。『心が女性』だからって、女子トイレに入りたがるのは、変態もいるだろうけど、その『憩い』に混ぜて貰いたい心理もあるかも知れませんね。」と、泰子が『おひや』を高遠の前に置いて言った。
「泰子ちゃん、違和感ないね。前からいるウエイトレスみたい。」「ありがとうございます。」
「伝子と、なぎさちゃんと警視とみちるちゃんのこと。で、EITOの仮眠室に『伝子シスターズ』が並んで寝てたらしい。仮眠室は、宿直室の予備の部屋で狭いんですよ、副部長。1人用だから。」「あれか。めんたいこみたいに並んでたのか、高遠。」「そうなんですよ。EITOの東京本部にはね、レストルームって言う、別の仮眠室があるんです。個別の、2段ベッドだけど、個別スペースの。ほら、秘密基地の宿泊施設みたいなやつ。」
「ああ。それなのに、か。」「なぎさちゃん曰く、倒れそうな伝子を介抱しながら、運び入れたら、皆グロッキーで寝ちゃったって。須藤医官が、何て言うか、寮監みたいな存在だから、風紀が乱れるって、怒ったらしいんです。丁度、理事官がやって来て、今朝の事件で会議があるからって、取りなしたらしんです。」「誰から聞いたんだ?詳しいけど。」「伝子、本人。メール。」
「なあんだ、高遠さんに愚痴りたかっただけじゃないですか。」「うん。午前3時過ぎに本部基地に戻ってきて、激しい戦闘の後だったから疲れ切っていたんでしょう。伝子は特に、少林寺の有段者が敵、『枝』3人と闘った後だったから。泥酔状態みたいな感じだったんでしょう。闘いの模様も、眠くなりそうだからってメール寄越したし。今頃、会議しているでしょうね。」
午前9時半。EITO東京本部。会議室。
「先ず、最初の事件からだ。河野君。警察からの伝達を。」と、理事官が言った。
「今朝、午前5時。ほぼ同じ時刻に、小規模ですが、爆発事故が5件ありました。工場、不動産屋、ブティック、土建業、スーパー。共通するのは、名前に『つづき』が入っていたことです。」
河野は、ホワイトボードに『都築』と書いた。
「経営者は、全て違います。共通するのは名前だけですが、連続テロ事件と認定されました。」
「ダークレインボーと関係あれば、いずれ声明があるだろう。昨日は深夜に出掛けて深夜に戻る、大変な任務だった。ご苦労様。ありがとう。立石兄弟から預かったメモの住所はやはり、アジトだった。棺に入れられ、きちんとドライアイスが入れられてあった。解剖が済み次第、西部警部補の菩提寺で供養するそうだ。みんなは、行かなくていいからな。それより、もう一度休め。体力ある者は、一旦帰宅しても構わない。『伝子シスターズ』は医務室で検査だ。進展があれば集合だ。以上、解散。」
「待って下さい。理事官。レッドサマーについては?」と、伝子が言った。
「午後からでいいだろう。」と、理事官は優しく言った。
午後4時。EITO東京本部。会議室。
「証拠固めに時間がかかったが、漸く全貌が見えた。レッドサマーこと世耕正和75歳は、『枝』になった立石兄弟とは、兄弟がイジメに遭っていたのを助けた縁で師弟関係になった。レディース湯の本社である小亀谷湯チェーンは、那珂国人の乗っ取りに遭った。コロニーで借金があった事も災いした。君たちが闘いだした午前2時。パチンコ屋きく象チェーンの各支店にショベルカーが突っ込んだ。パチンコ屋チェーンは、生前妻の智恵子が経営していたが、倒産した。」
「智恵子って・・・。」と、なぎさが言いかけた。
「そうだ、智恵子の名は智恵子抄の智恵子と同じだ。その辺が、大阪の高村光太郎と親しくなった謂われだろう。さて、借金の『かた』にダークレインボーの『幹』となった世耕は、道化を装ってレッドサマーと名乗った。世耕は、会社の人間には一切関わらせ無かった、『2つの顔を持つ男』になった。倒産したパチンコ屋の残務処理もあり、専務の金田は保険金詐欺を思いついた。レディース湯はボヤになってしまったから、本社に爆発物を仕掛けることにした。爆発物の入手先もいずれ分かるだろう。レディース湯の放火も本社爆発計画も立石兄弟のタレコミだ。社員の立石三郎だ。ウーマン銭湯に現れた自称『女性』男の正体は立石次郎だった。『タダの嫌がらせだ』と三郎は聞かされていたが、金田に利用されたのを知った一郎がタレコミをさせた。」
「世耕に、そんなに恩義を・・・。金田に大きな犯罪を起こさせたく無かった、ということですか。」と、理事官の話に割り込んで、あつこが言った。
「オクトパスの山下と、ちょっと共通していますね、世耕は。出来れば無駄な血を流したくない。少林寺の有段者なら理解出来ます。」と、伝子が言うと、「でも、立石兄弟と金田は刑務所行きだわ。」と、あつこは溜息をついた。
「理事官。世耕は、がんだったそうですが、妻の智恵子は?」と、飯星が尋ねた。
「コロニーだ。がんでもあった。」「コロニーは体の弱い人間には容赦無かった。若くてピンピンしている人間には、かかっても簡単に自然治癒したのに。」
「もう、お話していいかしら?理事官。」と、芦屋三美が割り込んで来た。
「どうぞ。オーナー。」
EITOは、今は芦屋グループの傘下にあり、芦屋三美はオーナーだ。
「レディース湯はね、小亀谷湯チェーンを那珂国人系企業から取り戻したから、事業清算した後、再開させるわ。ウーマン銭湯の中込新子を両方の社長にしてね。」
皆、驚嘆の声を上げた。
「あ。」と、あかりが叫んだ。「理事官。パチンコ屋に突っ込んだのは、突っ込ませたのは?」
「コンティニューですか?『つづき』って名前の施設を襲ったのも?」と、みちるが言った。
「うむ。金田が保険金詐欺に突っ込ませたのか?と久保田警部補が尋ねると、そんな手があったのか、って言ったそうだよ。」と、理事官は微笑んだ。
「オーナー。ウーマン銭湯とレディース湯は姉妹店になるんですね。楽しみだわ。」と、七尾が言った。
午後5時半。ウーマン銭湯。入り口付近。
伝子達を中込支配人が出迎えた。
「いらっしゃいませ。ちゃんと貸し切りにしてますよ。弁護士さんに事情聞いて納得しました。ウチは『男子禁制特別セキュリティ』。まだ知らない人いるんだ、と思ってビックリしましたよ、先日は。お芝居だったなんて。口コミで広がって、SNSで宣伝する必要もないくらいだと自慢していましたのに。あら、男子禁制ですよ、ウチは。」
支配人の中込の言葉に、振り向くと、中津興信所のメンバーがいた。
「お見送り、です。僕らはこれから、『男子会』に行きます。」と、高崎が言った。
公子と根津が、普段着のエマージェンシーガールズの後ろに並んだ。
「中津さんも男子会に?」と伝子が泊に尋ねると、「いえ、興信所で待機です。警部から連絡があるからって。」と泊は応えた。
午後6時。中津興信所。
ホットラインのシステムが稼働し、中津警部がマルチディスプレイに現れた。
「健二。Base bookを立ち上げろ。」
中津が、PCのBase bookを起動させると、妙な投稿が見つかった。
【
コンティニューから、お歳暮です。
】
動画が埋め込んである。中津は、動画を再生した。
《
ヤッホーい!!やっと、邪魔者がいなくなったわ。今度こそはアタイの番よ。アタイって言っても体もおんなよ。私ねえ、突っ込むの大好きなの。突っ込まれるのも嫌いじゃないけど。やっぱり、夜中はどこも開いてなかったわ。折角突っ込んであがてのにぃ。でも、懲りないのよねえ、アタイって。
》
「どう思う?」「どう思うって、パチンコ屋と『つづき』は私がやったのよ、って自慢しているように見えるけど。兄貴は?」
「同感だ。しかも、夜中にならない内に、どこかに突っ込む気だな。」
午後7時。伝子のマンション。
お好み焼きを食べながら、高遠と綾子と藤井はTVを見ていた。
Base bookに出てきた動画を、TVのニュースで伝えて来た。
「また、どこかに突っ込む気かしら?」と藤井が言うと、「下品だわ。突っ込むって連呼して、欲求不満の女ね、きっと。」と綾子が言った。
「確かに下品ですね。欲求不満かどうか分からないが、『せっかちな女』らしいですから。」と、高遠は言った。
「もう、そんなこと分かってるの?」「レッドサマーが教えてくれたんですよ。僕にじゃないですよ、EITOに。」
「冥土の土産?」「遺産よ、ねえ、高遠さん。」
2人の会話に頷く高遠だったが、コンティニューの思惑が理解出来なかった。
そして・・・。
午後11時59分。警視庁。
大型トレーラーが、正門前に『突っ込ん』だ。
そして、爆発音。
―完―
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