第84話 ポム式短期間ダイエット術
ポムこと山谷紗夜。山谷紗夜ことポムは朝5時に起床し、ボサボサした髪に櫛を入れながら運動着に着替えていた。
というのも、ポムは文化祭までに何としてもウエストを細くしたいと思っているからだ。
それはひとえに、宿敵桃山京香に打ち勝つため。
友人であるシュン程とは言わないが、ポムのウエストは平均的な細さをしている。細すぎず太すぎず、どちらかと言えば細い寄りの筋肉質な腹周りだ。だが、それでは足りなかった。桃山京香に勝つには足りないのだ。
ポムは中学生の頃から男女問わず「あの子のおっぱいデケー」という視線を浴びてきた。それは高校生になっても同じで、グラビアモデルをしている身としてその視線を嬉しく感じていた。中学の修学旅行では風呂の時間にクラスメイトから全身を揉みしだかれたが、同姓だろうと異性だろうと、自分の体に魅力があるのだと感じられるような反応をされるのはポムの大好物だった。
だからポムは努力した。体型の維持のために定期的に運動し、食事も日常的に意識していた。その結果、今のようなメリハリのある体を手に入れたのだ。それはポムの誇りであり、自信であり、人生である。そんな自分の体をポムは誰より愛していたし、同年代なら自分に勝てる人間はいないとさえ信じていた。
そう、桃山京香が現れるまでは。
一体どんな神の悪戯か。宿敵桃山京香がクラスメイトになってしまったあの日から、クラスメイトがポムに向けていた視線は桃山京香に向けられるようになってしまった。
実際、彼女が初めてクラスに入ってきた時は、ポムも含めクラスの全員の視線が破壊的なその胸に吸い込まれていた。
「山谷さんえっちだなー」から、「桃山さんえっちだなー」に変わってしまった瞬間だった。
それは、全くもって許せない事態だった。
とりわけ負けず嫌いというわけでもないが、自分が自信を持っていることに関しては1番でありたかったポム。
勿論、桃山がクラスにいようがポムに対するクラスメイトの評価は以前とあまり変わらないだろう。だが、いくら「山谷さんえっちだなー」と思われていようと、ポムの上の存在として桃山京香が君臨している事実は悔しくてたまらないのだ。
「山谷さんもえっちだけど、桃山さんはもっと凄いなー」ではいけない。「桃山さんも凄いけど、やっぱり山谷さんのがえっちだなー」こそ目指すべきカタチだ。
確かに桃山京香は凄い体をしている。
性格こそ気に入らないが、彼女の体の魅力についてはポムも認めているのだ。
本当に高校1年生なのかと疑ってしまう巨乳。綺麗なカーブを描くくびれ。プリっと引き締まった尻。
どんな物を食べたらあんな体になるのか心底疑問であるが、確かに写真集が爆売れするのも納得な体をしている。
だが、そこで勝てないと諦めてはいけない。
これは越えなければならない壁、いや、山なのだ。
そのように打倒桃山を掲げているポムの作戦こそ、ウエストを引き締めることにあった。
文化祭で男装をするポム。それは、クラスメイトに自分の魅力を再認識させるための絶好のチャンスである。
そしてそのチャンスを最大限に生かす為に思いついたのが、乳テントを張っている桃山に対抗し、ワイシャツで乳袋を作るということだった。
これは電子の海を泳いでいるときに偶然見つけたモノだが、乳袋やら乳テントやらの概念を知った時、ポムは「これ考えたやつ天才だろ!」と大いに興奮した。
そしてそれを実践しようと思いネットショッピングで検索した所、ピチッとしてストレッチの効く白ワイシャツが見つかる見つかる。
ポムはそれをすぐにポチって注文した。
そしてそれが届くまでの間に家にあった服で乳袋づくりを試した時、「あ、これウエスト細い方がエロいわ」とポムは気づいた。
乳袋を作る時は体に服を密着させるため、当然胸だけでなく腹回りのラインも強調されてしまう。だからこそ、ウエストを細くしておくことで胸の大きさが贅肉からくるものではないと強調でき、同時に、体を横から見た時に突き出した胸と引き締まった腹との差がエロさを増幅させるのである。
だからこそ、ポムは文化祭までに出来る限りのことをしてウエストを引き締めたかった。
そこでポムが行うことを決意したことこそ、
過去に2週間で3キロの体重減を達成したキツいダイエットである。
その内容はこうだ。
毎朝3キロのランニングをし、朝食はバナナやリンゴなどのフルーツと牛乳のみ。昼食には小さなおにぎりと梅干し数粒を食べ、当然お菓子やジュースなどの甘いものは一切食べない。
夕食までの間には動画投稿サイトにある脂肪燃焼運動を1動画分行い、それに続けて、腕立て系、腹筋系、スクワット系のトレーニングもそれぞれ1動画分行う。もちろんプロテインも欠かせない。
そして風呂では全身をマッサージし、夕食では野菜スープと、千切りキャベツを白米代わりにして肉を食べる。
これこそ、効率的に痩せるにはランニングだけでなく筋トレも必要なのだと感じたポムによる短期間で痩せるためのダイエットメニューだ。
今から5日間、文化祭がやってくるまでの期間これをやり続ける。そうすれば今より少しはウエストを引き締められるはずだ。
「頑張れアタシ。アタシは凄いんだから」
ランニング用の服装に着替え終えたポムは、両頬をパチンと叩いて気合を入れた。
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