第74話 思わぬ相手からの電話
部活がない休日ほど気が楽なものはない。
なんたって、何時まで寝ていようがゴロゴロしていようが自分の好き勝手なのだから!
せっかくだし、目が覚めてもしばらくベッドの上でゴロゴロしていたい。だけど、そんな日に限って朝早くからパッチリと目が覚めてしまうのだ。
「……くそぉ。もっとゴロゴロしてたかったのにー」
こんな時は一度目が覚めてしまうと二度寝をするのが難しい。
学校がある日は「あと5分」「あと2分」とか言って無限に寝ていられるのに、なぜか休日に限ってそうはいかない。
ああ、なんと勿体ないことか…!!
「はあ〜。起きるかぁ〜」
ずっと起きるか寝るかの狭間を
「ふむふむ、5時半か。どうしようかな…」
壁の時計を見た俺は少し悩む。
朝から何かをするにはちょうど良さそうな時間だが、そもそも何かをするような気が起きない。
とは言え、いきなりネットサーフィンを始めるのも早起きした身として何か嫌だ。
「うーん………ん!そうだ!」
ちょっと考えた末、俺は風呂に入ることに決めた。朝風呂、普段からするわけじゃないけど今日みたいに肌がペタ付く日にはちょうど良さそうだ。昨日の夜は暑かったから、寝ている間に体が汗ばんでいたのだ。
よし、そうと決まればさっそく行動開始だ。
「ふんふふ〜ん」
俺は鼻歌を歌いながら一階に向かった。
* * * *
「ふぅ〜〜〜。イイネ〜〜」
俺は温かい湯船に浸かりながらおじさんみたいに息を吐く。
すりガラス越しの日光が風呂場を淡く照らしてくれる。更に、静かにしていると鳥のさえずりも聞こえてくる。
結構いいな、朝風呂。
ちょっと窓を開けてみてもいいかもしれない。
「ん、いいじゃんいいじゃん」
数センチだけ窓を開けてみると、さっきよりも鳥の鳴き声が大きく聞こえてきた。そして時々風も入ってきて、家の近くに生えている木の葉が揺れる音と相まってだいぶ雰囲気が出た。
「ふぅ〜〜」
俺は改めて浴槽に背中を預けて息を吐く。
早起きして、イイ感じの空気に包まれながらの朝風呂。思った以上に心地いい。この後に水シャワーでもすれば目も体もサッパリしそうだ。
だが………
「…まだみんな起きてこないよね?」
リラックスしてきたからか、無性にムラムラしてきた。そして、一度ムラムラしてくると一気にその欲求が強まってくる。いつの間にか呼吸も速くなってきた。
みんなまだ起きてこないだろうし、ここは朝イチで自慰と決め込んでもいいかもしれない。
「んしょっと」
俺は浴槽から出て椅子に移動する。流石に湯の中でする訳にはいかないからな。
「…ん………」
そして両手で胸を持ち上げるように触る。
クリでイクのは出来るようになったが、まだ乳首では経験がない。いつかイケるように、今のうちからコツコツ開発していこうと思うのだ。
「…ん……んっ…」
人差し指でなぞるように触ったり、先っぽをツンツンしてみたりと色々な触り方を楽しんでいるうちに、気分は本気モードになってしまった。
こうなってしまった俺を止められるものは何も無い…!!
こうして、俺の朝は心も体も気持ちよくなって始まった。
* * * *
「あー気持ちよかったー!」
少し久しぶりだったからか、随分と盛り上がってしまった…。
何時になっちゃったかな、と疑問に思いながら風呂から出ると、ちょうどお母さんが洗面所でうがいをしていた。俺の家は洗面所と風呂場が隣接しているのだ。
「…あ、起きてたんだ」
「今起きたところよ。おはよう」
俺はタオルで体を拭きながらお母さんと話す。
「シュンちゃん、朝からお風呂入ってたの?」
「そう。早起きしたからたまにはと思って」
「へぇ、そうだったの。じゃあ随分お風呂で寝てたのね?」
「…え?」
「だって今7時半よ。何時に入ったのか分からないけど、早起きして入ったなら結構長風呂だったんじゃない?」
「…ん、あぁ、そうそう!いやー、少し目瞑ってたら寝ちゃってたみたいなんだよー!」
「ふふふ、溺れないようにね」
「う、うん」
ニコっと笑うお母さんに俺は苦笑いで返す。
マジか…。1時間以上シてたのか…。
ま、いっか!!
「ところで、お母さん今からパン焼こうと思うんだけど、シュンちゃんも食べる?もう朝ごはん食べちゃった?」
「いや、まだ食べてないから私の分もよろしく」
「はーい」
ちょうどお腹も空いていたところだ。
ナイスだぜお母さん。
よし。さっさとドライヤーなり化粧水なりを済ませて朝ごはんを食べるとしよう。
* * * *
「ぬぁー、どうすっかなー」
朝食を終えて時刻は8時ちょい。もうとっくに外も明るい。まるで俺に『何か行動しろ』と訴えかけてくるような明るさだ。
でもなぁ、結構暇なんだよなぁ。
宿題は出てないし、今の所勉強で行き詰っているところもないから勉強の必要はなし。
もちろんやりたいゲームや読みたいラノベはあるが、逆にありすぎて何からやろうか迷ってしまう。
「…ん、そうだ」
何をしようかとベッドに倒れて天井と相談しているうちに、俺の頭には1つのことが思い浮かんだ。
約1ヶ月後に行われる文化祭に向けて計画を立てるのはどうだろうか。
実は、夏休みに入る前に文化祭で何をやるかは話し合っていた。うちのクラスはメイドカフェをやることになっている。悪くないし、むしろ楽しみだが、俺立案の『バニーガールポールダンス劇場』が通らなかったのが悔やまれる。
…まあ何はともあれ、そんなメイドカフェに向けて、今後の作業が楽になるように少しでも計画を考えておこうと思うのだ。俺は文化祭実行委員じゃないけど、手伝って悪いということはないだろうしな。
そう思い立った俺は机に向かい、ノートを開いてシャーペンを手に取る。
そして概要を箇条書きにまとめていくことにした。
「うーん、衣装は何色がいいかなぁ…。ピンク、黒……赤もアリか?提供するものも考えないとか。やっぱりジュースは基本で———」
取り掛かってみると、結構考えないといけないことが多いということに気付かされる。
けど、楽しいことのためならいくらだって頑張れるし、時間もたっぷりあるから気楽に進められる。
——そうして作業すること十数分。
「…ん?」
いきなりスマホから着信音が鳴り始め、俺はびっくりしてビクッと体を震わせながらスマホを手に取った。
なんと、相手はアリスんとこの龍也だ。
時々メッセージのやりとりはしていたが、電話をするのは初めてだ。
『もしもしー?』
『ああシュン、悪いね朝から』
『いやいや、私も暇してたし良いんだけどさ、どうしたの?』
『ああ。早速で悪いんだけど、今流行りのコスメグッズを教えて欲しいんだ』
『はい???』
龍也がコスメグッズを?
一体どんな風の吹き回しだ?
『実は、手に入れたい女の子がいるんだよ。だから君に手伝ってもらいたくてね。生憎、僕は女子高生に流行りのものには疎くてね』
『ああ、そういうことね』
〝手に入れたい〟とかいう終わった表現がすんなり出てくる辺り、あいつの人間性がありありと窺える。だけど、龍也の場合はそれがあからさますぎて寧ろ清々しいまである。
『んー、じゃあ私が付き合ってあげるよ。どうせどっかに買いに行くんでしょ?その場にいた方が力になれると思うし、私もあんまり詳しくはないけどそこそこ分かるはずだからね』
『おお!本当かい!? それは頼もしいよ。君の言う通り、この後買いに行こうと思ってたんだ。一緒に来てくれるかい?』
『いいよ。その代わり、なんか奢ってよね』
あいつは金持ちだからな。少しくらいワガママ言ってもいいだろう。
『勿論さ。喜んで奢らさせてもらうよ。じゃあ、場所はこの後スクショを送るから確認してくれ。そう遠くない所だと思うし、10時に現地集合でどうだい?』
『どれどれー』
トーク画面を開いていると、程なくして龍也からショッピングモールの写真が送られてきた。この前ルカたちと映画を観に行った所だ。
『ああ、ここね。オッケー。10時に現地ね』
『大丈夫かい?じゃあそれでよろしく頼むよ』
『うん。じゃあ準備するからまたねー』
そう言って俺は通話終了ボタンをポチる。
にしても、龍也からのお誘いとは珍しいな。
いきなり電話してきたあたり、結構必要に迫られていたのだろう。
何かいけないことの片棒を担がされている気もするけど、ここは一旦気にしないでおく。
よし。そうと決まれば早く支度をしないといけないな。
「さてさて、なに着て行こうかなー」
俺は机を離れて部屋着から着替え始めた。
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