第53話 良い気分♩
「ふう〜。疲れた〜」
プール掃除を終えて帰宅した俺は、誰もいない家で早速風呂に入っている。
部活は午前に終わる——8時〜12時——から遅くとも1時には帰宅できるが、汗だくだし汚れたしで真昼にも関わらず風呂に入っている。
俺は浴槽に浸かりながら、浴槽の縁に置いてあるエロい方の競泳水着をつまみ上げて広げてみる。
「おお…」
やはり、全体的に露出度高めだ。背中から肩にかけてはほぼ丸出し。下半身は股から骨盤の辺りまで大きくカットされている超V字のデザインとなっている。
ハイレグすぎで最早コスプレとでも言った方がよさそうな代物だが、これでも競泳水着と銘打って販売しているのだから不思議だ。
「ふふ、ふふふ…」
一瞬のうちに無限に広がる妄想をしていると変な笑いが漏れ出てしまった。
よし、これは体を洗ってから着るとして、今は脚をマッサージしよう。
「…考えてみれば、友達増えてきたよなぁ」
ふくらはぎから太ももにかけてマッサージしながら、俺は部員の顔を思い浮かべる。
長瀬さんとはもう友達と呼び合える関係だろう。後は
そして今日、なぜかよく分からないけど先輩たちが話しかけにきてくれた。日向先輩と部長以外の先輩とはあんまり話したことがなかったからびっくりしたけど、話しかけられて悪い気はしなかったな。
4、5人で一気に来られたせいで名前は覚えきれなかったけど、顔は覚えることができた。今度は俺の方から話しかけてみようかな。
みんな俺のこと「かっこいいよね〜」とか「可愛い〜」とか言ってくれたし、向こうからの好感度はそれなりに高いはずだし。
そう考えると、やっぱり俺は部活内での地位を着実に上げていっていると言える。
少しづつ話す人が増えていってるし、俺の周りにも人が集まるようになってきた。
何気に今週末は長瀬&果崎ペアと3人で映画に行く約束もしている。
「はは、前世じゃこんな気分になることも少なかったな。友達が多いってのは…良いな」
友達の笑顔を思い出すと心が温まるのを感じる。
今後はもっとモテるべく頑張らないとだな。
——よし。良い気分になったところで、準備するとしますか。
「フンフフーン〜♪」
自慰するにしても何をするにしても身体は綺麗な方が良い。
ということで鼻歌を歌いながらささっと身体を綺麗に洗い終えた俺は水着に着替える。
「おお〜! これは……ヤバいな」
スク水よりも、部活で着てたやつよりもこの競泳水着はピッチリしている。
まず、背中がスースーする。鏡越しにどうなっているのか見てみれば、細い紐がクロスしているだけなのが分かる。つまり、俺の背中を隠しているのは幅2センチもなさそうな細い紐だけということだ。
ちょっと恥ずかしいけど、それよりも下半身の方がヤバいから大丈夫だ。
…その下半身だが、正直、誰にも見られたくないほどエロい。
ついさっきまでは「友達にエロい俺を見せて惚れさせたりしたら面白そうだな」なんて思ってたけど、実際にこれを着てみると、そんな気持ちよりも恥ずかしさのが勝る。
「……」
俺の脚は細くて長い美脚だが、太ももにはそれなりに肉がついている。
俺は前世の時から太ももはムチムチしている方が好きだったが、まあ、ムチムチしているとまでは言えなくても健康的な肉付きだろう。
ふくらはぎは細く、太ももは程よく太い。そんなエッチな両脚が付け根から全部丸見えだ。
さらに、ハイレグすぎてアソコへの食い込みがヤバい。尻に関してはTバックみたいになっている。
こんなのアイツらに見られたら絶対色々言われるよな〜。
最初は堂々と見せつける方が楽しそうだと思ったけど、やっぱり無理だ。恥ずかしすぎる。
…何だろう、少しづつ俺の心は女性のものに近づきつつあるのかな? 俺としたことが、露出を恥ずかしがるだなんて。
「…」
だけど、今この場には誰もいない。
どんなに恥ずかしくても、誰もいないのならば好き放題できる。
てことで、俺は床に女の子座りして鏡に向かって上目遣いしてみる。
「え、かわよ」
水で濡れると髪が全部下がっちゃうから普段よりも女っぽくなってしまう。
けど、それがイイ!!
俺は女の子座りのまま、合わせた膝の前に両手をつき、伸びた両腕で胸を両側から寄せてみる。
俺の胸はこれでもDカップある。
水着で押さえつけられていても、寄せられた胸の盛り上がりがはっきり分かった。
「えっっっっっ…!!」
これは…あれだな。
〝恥じらいつつ何かを期待しているポーズ〟
として、ここぞという時にだけ使うことにしよう。攻撃力が高すぎる…。
だって俺、もう我慢できないもん…。
「………んっ」
お母さん、涼太、しばらく帰ってこなくていいからね…!!!
「……あっ…………あっ!!!」
* * * * * *
「ぷはっ〜、サイコー!」
風呂から上がって部屋着に着替えた俺は冷蔵庫からコーラを取り出して一気に飲む。
やっぱ1人ってのはイイネ。どんなに大きな声を漏らしても問題ないってのがイイ。
「さてさて〜、一応宿題でもやりますか〜」
風呂では久しぶりに満足いくまで気持ちよくなれたし、おかげで気分は最高だ。
夏休みは沢山遊びたいし、今のうちに宿題を進めておこう。
そう思い、2階に行こうとリビングを出た時だった。
玄関が開き、お母さんが姿を現す。
「あ、おかえり」
「ただいま。あれシュンちゃん、もうお風呂入ったの?」
「うん。部活終わって汗だくだったからね。お母さんは用事済んだの?」
「うん。ばっちし」
お母さんは荷物をまとめながら家に上がる。
今日は近所のデパートに買い物に行っていたようだ。
事故からしばらく経って、完治とはいかないまでも、お母さんは1人で十分行動できる程には回復している。
良かった良かった。
「じゃお母さん、私は部屋にいるからー」
「はーい」
リビングに入ろうとするお母さんを尻目に、俺は階段を登っていく。
そして中段くらいまで登ったところでリビングから声が飛んできた。
「そういえば、もうすぐお父さんが帰ってくるってよー!!」
「えっ!? マジでっ!?」
俺はその言葉を聞いて急いで階段を戻る。
リビングの扉を乱暴に開けてお母さんの姿を探せば、テーブルに買ってきたものを並べている姿を発見する。
「お父さん帰ってくるの!?」
「うん。明日の午後には帰ってこれるだろうってさっき連絡があったの」
「そうなんだ! いやー、びっくりしたよ」
「お母さんもびっくりしたわ」
かれこれお父さんのことは半年くらい見ていない。
時々電話はしてたから声は聞いているが、今どんな風貌になっているのかは分からない。
ちょっと鬱陶しいところはあるけど嫌いじゃないから、帰ってくるのは結構楽しみだな。
「じゃあ私はそれを待ちながら勉強してくるとしますか」
「ふふ、そうね。頑張ってね」
「はーい」
俺は笑顔で返事しながら、再びリビングを出た。
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