第46話 あっという間の1学期

「—続いて、校長先生のお話です」


現在、俺たちは第一体育館で1学期の終業式を行っている。

さすがに2階の席は使わず、みんな1階に学年ごとに並んで体育座りしている。

女子校だからかガードが緩く、みんなパンツが丸見えだ。

とは言え、あんまり周りをジロジロ見ていると怪しまれるので自重しよう。


それはそうと、結構あっという間に過ぎた1学期だったな。

中間テストが終わったら体育祭があって、それからまた少ししたら期末テストがあって。部活もそれなりに忙しかったし、気づいたら時間が経ってたという感じだ。


そんな感じで気づいたら1学期も終わりを迎え、俺たちは退屈な終業式をやり過ごす。

周りのみんなも眠そうだ。

そして30分くらいぼーっとしていれば終業式は終わり、俺たちは再び教室に戻る。


この後はHRホームルームがあり、それが終われば解散だ。

担任が戻ってくるまでの間、俺は近くの友人と雑談して過ごす。


「ねえシュン、この前みんなで海行こうって話出たじゃん?いつ頃行く〜?」

「ミカが言ってたやつか。夏休み前半に部活が多く入ってるから後半がいいかな」

「なるほど〜。じゃあポムたちにもそこら辺で聞いてみようかな」

「花が計画立ててくれるの?」

「うん、多分わたしが1番暇だし、こーゆー時くらい働きたいなって」

「はは、なるほどね。ありがとう」

「否定してくれたっていいんだからね!?」


俺は肩をすくめてやりすごす。

まあ、花が1番暇なのは事実だろうし。


そして俺たちの話を聞いていた女皇様がこちらを凝視している。

サングラス越しだから視線は分からないけど多分凝視している。 

仕方ない奴なこった。

ここは手を差し伸べるとしよう。


「女皇様も来る?」

「ほう! おこがましくも我を海に誘おうというのか!! まあ、お前たちがどうしてもと言うのなら、行ってやらないこともないぞ…?」

 

腕を組んで偉そうに言う女皇様に、花が笑顔で答える。


「わたしたち女皇様と遊びたいな〜。来てくれたら嬉しいな〜」

「そうかそうか!! では考えておくとしよう!!」


うんうん、と何かに頷く女皇様。

それにしても、花の女皇様の扱い方が上手すぎる。

俺のスタイルは手を繋いで女皇様のペースに合わせる感じだが、花のスタイルは手を引っ張って導いてあげる感じだ。

お母さんが幼稚園児と遊んでいるのを見ているような気分になる。

花は面倒見が良いのかもしれないな。


「はーい座って座って〜」


そんな会話をしていれば担任が教室に戻ってきた。

後少しで夏休み。そう思うとワクワクしてくる。


「みんな揃ってるね? じゃあプリント配って大事な話をしたら今日は終わりにします」


その言葉に少しざわつく教室。

プリント配布は普通のことだけど、わざわざ大事な話と断るくらいの話があるらしい。


なんだろうな?と考えながら前から送られてくるプリントの数々を後ろに回し、やがてプリント配布が終わる。


「はい、プリントはこれでお終いでーす。

じゃあ大事な話だけど…」


担任は教壇からみんなの顔を一瞥し、一呼吸置いてから答えを明かした。


「なんと!2学期からこのクラスに転校生が来ます!!」

「「「え〜〜!?」」」

「あはは、良い反応ありがと〜。来るのは2学期からだけど、早めに伝えておいた方がいいかなと思って伝えておきました〜」


担任の言葉に完璧な反応を見せるクラスメイト。俺も瞬時にそのノリに合わせた。


しかしなるほど、確かに大事な話だな。

まさか転校生とは。

高校で転校するのって面倒くさいイメージがあるけど、そこら辺はどうなんだろう。

2学期になったらその子に聞いてみたいな。


「じゃ、話も終わったので解散!」

「「「いぇーい!!」」」


そして担任が話を終えた瞬間、クラス中がワイワイ盛り上がる。

体育祭を経て俺のクラスは結構明るくなった。以前の俺たちじゃ、夏休みを迎えるとなってもこんな風に盛り上がらなかっただろう。

隣の女皇様も上機嫌のようだ。

何かの鼻歌を歌っている。


「何、その歌?」

「ダークネスソングだ」

「そ、そっか」


俺には習得出来なさそうな歌だな…。

そう思っていると、花も話に乗ってきた。


「何それ〜? わたしにも教えてよ〜」

「では今度譜面に起こして渡してやろう」

「ほんと!? やったー!」

「女皇様そんなことできるの…?」

「ふふふ、我を甘く見るでない1号。我にかかればそのくらい朝飯前なのだよ!!」

「多彩だね女皇様」

「そうだろうそうだろう!! はっはっは!!」


手を腰に当てて凄む女皇様を横目に、花は両手を合わせて提案した。


「まあそれは置いといて〜、この後みんなでファミレス行かない?」

「いいね。今11時だしちょうど良さそう」

「でしょ〜。ダークネスちゃんも来るでしょ?」

「いいのか!? …コホン、まあ、2号がそう言うのならば行ってやろう」

「あはは、じゃあ決まりね。ポムたちも誘ってくる〜」


花が離れたので俺は女皇様に小声で聞いてみる。


「…ねえ、嬉しいなら素直に喜べば?」

「…………分かるでしょ、恥ずかしいの!!!」

「なら仕方ないか」


女皇様、神咲モードになっちゃった。

このツンデレめ、可愛い反応しやがって!


「2人とも〜、行こ〜〜」


教室の扉の方で花が俺たちを呼ぶ。

みんな支度が出来ているようだ。


「ほら、行こ」


俺は女皇様の手を引っ張って扉に向かった。



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