閑話 え…?

2年3組のとある昼休み。

藤宮涼太は両隣に座る女子たちから話しかけられていた。


「それでねそれでね、わたしのポチがね—」

「うんうん」

「昨日の夜ね—」

「うんうん」


両隣から一方的に話しかけられる涼太は、大した返事もせずに話を聞き流す。

すると、その様子に苛立ちを覚えた右隣の女子が声を荒げた。


「ねえ!聞いてる!?」

「…ごめん、あんまり聞いてなかったかも」

「……何読んでるのよ?」

「サメ図鑑」

「わたしよりサメの方が面白いって言うの?」

「うん」

「ひどい!!もういい!!!」


その女子児童は机をバンと叩くとどこかに行ってしまった。

その騒ぎで教室にいた児童らの視線は涼太に集まり、残された涼太と左隣の女子児童は気まずさを極める。


「…本読んでるのに話しかけてごめんね」

「いいよ。僕も話聞かなくてごめん」


涼太は申し訳なさそうに俯きながら女子児童に謝る。

彼女も軽く頭を下げた。


そして他のクラスメイトの視線を集める中、2人は会話を続ける。


「…あのさ、あんまり正直に言い過ぎるのも良くないと思うよ?」

「だけどお姉ちゃんが『嘘はついちゃダメ。正直者になるんだよ』って…」

「そ、そうなんだ…」


「そーゆーセリフって姉じゃなくて親が言うものじゃないのかな?」と疑問に思いつつも口にしなかった女子児童の精神年齢は高いのだろう。


結局2人の間では面白い会話も生まれず、やがてクラスメイトも2人から視線を外し、各々の行動に戻り始めた。

この女子児童も涼太に話しかけるのを諦め、読書を始める。


そんな頃、涼太と仲の良い村田拓也むらたたくやが涼太に話しかけにやって来た。

涼太は本を読む手を止め、笑顔で会話に応じる。


「なあなあ涼太、さっき2組のタッちゃんと話してたんだけどさ、タッちゃんまだお母さんと寝てるんだって!ガキだよなー!」


大声で話す拓也にクラスメイトが冷たい視線を浴びせる。

クラスメイトの中にはまだ母親と寝ている人が多かったのだろう。 

そして再び自分の近くにクラス中の視線が集まった涼太は、返答すべくその口を開く。


「へぇ、タッちゃんお母さんと寝てるんだ。だけどさ、まだ誰かと寝てる人って多いんじゃないの?僕も時々お姉ちゃんと寝てるし」

「……同じベッドで?」

「うん」


その会話を聞いていた全てのクラスメイトは

大いに困惑した。

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