第40話 初めての電話

体育祭も打ち上げも終わり、夜に帰宅した俺は風呂も夕飯も済ませた。


そして夕飯後、俺はモコモコパジャマを装備してベッドでゴロゴロしていた。


「はぁ〜、疲れたぁ〜」


ベッドに大の字になって寝転がっていると1日の疲れがドット湧いてくる。

今日は色々と疲れた。だけど、楽しかった。

可愛い女子に囲まれるのはやっぱり最高だ。

でもって、囲まれるだけじゃなくてそれなりにチヤホヤされるからもっと最高だ。

今日もそうだったが、最近はクラスメイトが話しかけてくれるようになってきたんだ。


現在俺が友達と呼べるのはミカ、ポム、花、アリスのいつメンに加えて、まこと、女皇様の6人くらいだ。

田中さんとは今日少し会話をしたが、まだ友達と呼べるほどの関係ではないと思う。


そんな6人に限らず、ちょくちょく他のクラスメイトが話しかけてくれるのは素直に嬉しい。

そしてそれと同時に、俺はあることを確信した。


俺は一時期ミカを落とそうとしていたが、最近はそれはやめている。

既にミカは時々甘えた感じになるようになったというのもあるが、やっぱり1人を狙うんじゃなくてみんなに手を伸ばした方がいいと思ったからだ。

そしてそれは今日確信に変わった。


確かに女子にガチ恋されてみたいというのはある。だが、1人の女子にガチ恋されるよりも多くの女子から好かれている方が楽しいということを確信したのだ。

もちろんその感情が大きいに越したことはないけど。

そんなことを、今日の体育祭で「かっこいいー!」とか多くのクラスメイトに言われているうちに思った。


もちろん、隙があれば口説いたり色っぽいことをしたりするのは前提だ。落とせるなら落としていきたい。

だけど、その対象は限定しないでオープンにいくほうがいいだろう。

初心に戻り、あまり狙い過ぎないでいく。

スタートは浅く広くだ。

自由奔放にみんなと関わり、隙を見せたその時だけは蛇のように喰らいつく。

うん、これでいこう。

そうしていつの日にか、どこにいっても「シュンちゃーん!」と言われるようなポジションに登り詰めるのだ。


ということで、早速女皇様に電話をしようと思う。

女皇様の正体が判明したこのタイミングは彼女との距離を詰めるチャンスだ。

女皇様と呼ぶべきか神咲さんと呼ぶべきかは悩ましいけど、とりあえずは女皇様でいいかな。


俺はチャットアプリのLIMEライムを開き、女皇様のアカウントを探す。

いつだったか、女皇様とは連絡先を交換していた。確か向こうから交換しようって言い出したんだっけな。


アカウントを見つけたら早速電話をかける。

時間はまだ21時だし、高校生なら起きている時間だろう。

 

ピロロロンと電話の発信音が鳴り—


「—!? ふ、藤宮!?」

「あ、もしもし女皇様〜?」


ワンコールも経たないうちに女皇様は電話に出た。


「ど、どうしたのだこんな時間に?」

 

声からすごく焦っているのが伝わってくる。

マイク越しにドタドタと物音も聞こえる。


「あんまり大した用事じゃないんだけどさ、その前に、今日はお疲れ様ね」

「ああ、うむ、お疲れさま…である」


急な電話のせいか、いつもと調子が違くて面白い。


「女皇様の動き凄かったよ。体柔らかいんだね」

「まあな! 日頃のトレーニングの賜物よ!」

「そっかそっか。でさ、本題なんだけどいい?」

「うむ」

「じゃあその本題だけど、明日暇? よかったら一緒にお昼でもどう?」

「行く!!何時に、どこ集合にする!? 丁度明日は暇なのだ!絶対に行くぞ!!」

「…乗り気みたいで良かった。学校の近くに良い感じのカフェあるから、あそこの駅集合でどう? 時間は11時とかで」

「了解だ!必ず行くとも!」

「おっけー。じゃあまた明日ね」

「うむ!」


俺は電話を切った。

なんか、凄い喜んでる感じだったな。

一瞬鼓膜が破れるかと思ったけど、向こうが乗り気なら何だっていい。


何気に高校生になってから初めて友達と電話したな。

……いや、この身体になって初めての友達との電話かもしれない。

中学の時はほとんど電話はしなかったし、そもそもスマホを学校に持って行っちゃダメだったので連絡先を知っている友達が少なかった。


そう考えると、今の電話は俺の初めてということだ。

そうか、俺は初めてを女皇様に捧げたのか。

女皇様なら悪くない気もするな。


…それはそうと、明日は女皇様と過ごせることになった。

明日こそは色々と質問責めにしてやろう。

もちろんラインは考えたほうがいい。

なんで厨二病なの?とかは絶対に聞いちゃダメだ。

そこら辺、上手いこと見抜いていかないとだな。


「ふぅ〜」


改めて俺はぼーっと白い天井を眺める。

疲れたし、女皇様には電話したし、もうやることもない。

ちょっと早いけどそろそろ寝ようかな。


「……」


そう思ったけど、さっきから絶妙にムラつくんだよな…。

疲れているはずなのに、疲れているからこそムラムラする。

理由はよく分からないけど生理現象なんだから仕方ない。


だけど、いつもそーゆーのは風呂場でやるし、

自分の部屋でやったことは一度もない。


…どうだ、いけるか?


お母さんも涼太も1階にいるし、少しなら声が漏れてもバレないはずだ。


よし、少しだけだ。

ちゃちゃっと済ませよう。


そう考えた俺は布団にくるまり、ズボンの隙間に手を伸ばす。

やがてその手は下着に触れ、そのまま奥へと指を進める。


「……んっ」


下着の上から敏感なところに触れると、思わず声が漏れ出てしまう。


その瞬間—


「お姉ちゃんどうしたの?」

「ちょっ!?」


いつの間に2階に上がってきたんだ涼太!!

俺は脊髄反射でパジャマを着直し、何事もなかったかのように涼太に向き合った。


「り、涼太、せめて部屋に入る時はノックしようね?」

「分かったー」


コイツ、全然分かったって顔してない。

これはあれだな、部屋に鍵をつけるしかないな。


「…まあいいや。で、どうしたの?」

「なんか変な声が聞こえた気がして」

「そ、そうかな?お姉ちゃん寝ようと思ってたところだから変な声なんて聞こえないと思うんだけどな?」

「そっかー。まあいいや。おやすみー」

「うん、おやすみ」


涼太は眠たそうな足取りで自分の部屋に向かっていった。


「……ふぅ、危なかった」


まったく、あと数秒違ったら喘ぐその瞬間を涼太に見られるところだった。

やっぱり自室での自慰はだめだな。

少なくとも鍵をつけるまでは。


突然の涼太出現で何故かムラムラも吹き飛んだし、今日はこのまま寝ちゃおう。


おやすみ、世界。

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