第39話 打ち上げ

「「「お疲れ様〜!!」」」


体育祭が終わり、俺たちは以前みんなで来た近所のファミレスで打ち上げをしていた。


「いやぁ、惜しかったねぇ〜」

「アタシたち頑張ったんだけどなー」

「まあ、2位なら結構頑張ったんじゃない?

ほら、ミカたちだって全員リレーで一時は1位になったんだしさ」

「確かに。放課後に練習した成果は出せたのかな〜」

「出せた出せた。私が教えたことはちゃんと出来てたし、みんな頑張ったよ」

「そうですよ。まだあと2回体育祭はあるんですし、1位を目指す機会はまだあります!」


確かにアリスの言う通りだな。

せっかくだし今年1位を取りたかったが、まだ体育祭は2年分あるのだ。

優勝は次の機会に狙えばいい。 


今回の体育祭だが、結果は2位で終わった。

結局1位の赤団は追い越せなかったが、2位の黄団を超えることはできた。

悔しいことには悔しいが、悪くない結果なんじゃないか?

正直、全身疲労により考えることを放棄している節があるが、この結果に俺は満足している。


「あ、ポテトきた。食べよ食べよー」


隣に座るポムが猫型ロボットが運んできた山盛りポテトの皿をテーブルに並べる。

今回は俺の左右にポムとミカが、前に花とアリスが座っている。

そんなテーブルにポテトが3皿並ぶ。

そんなに食べ切れるか…?


「「「いただきまーす」」」


そう思っていたけど、1本食べたら無限に食べれそうな気がしてきた。

もう1皿頼んでもいい気がしてくるな。


「それはそうと、シュンかっこよかったよ〜」

「ミカも思った。やっぱり足速いんだね」

「ありがとう2人とも。毎朝ランニングしてるからね」


最近少しだけランニングをサボっているのは内緒だ。


「アタシもランニングするから分かるんだけどさ、ランニングしてるだけじゃ速くならなくない?体力は増えるけどさ」

「あー、確かにそうかも。私の場合は陸上で短距離やってたからかもね」

「どう考えたってそっちでしょ!!」

「はは、ごめんごめん」


考えてみれば、俺は前世からの陸上の経験を今世でも活かしている。

これは俺だけの特権だな。


「かっこいいと言えば、ミカの走り高跳びも凄かったです」

「ほんと?へへ、ありがとう」

「ごめん、私その時リレーの練習してたから見れてなかったんだよね。何位だったの?」

「3位だよ」

「え、凄いね!? 周りの人、陸上部多いよね?」

「そうなんだけど、実はミカも高跳びは経験者なんだよね。小学校の時の陸上大会で高跳びの選手だったの。その時にいっぱい練習したのが身体に染み付いてて」


小学校の時の経験が今尚染み付いているとはなかなか凄いな。


「そうだったんだ。なんか意外」

「分かる〜。ミカちゃんって割と多才だよね〜」

「割とって何よ…」


ミカが頬を膨らませながらポテトを頬張る。

膨らんだ頬をツンとしてみたら無言で俺のことを睨んできた。

すんません。


「ところでさ、アタシめちゃくちゃびっくりしたことがあるんだけど」

「多分アレですよね」

「多分アレだよね〜」

「うん、アレだと思う」

「アレしかないね」

「そうそう。アレだよアレ。神咲さんのアレ!」


やっぱりか。


「時々クラスに変な人いるなーって思ってたけど、あの子が神咲さんだったんだね!!」


ああ…。

やっぱり女皇様って変な人だと思われてたんだな。

俺も最初は「???」ってなったし、普段話さない人からしたらそうなるのも仕方ないか。


「神咲さんって、入学式の時に話してた人ですよね。まさかクラスメイトだったなんて驚きました」

「え〜!ああいおおおおいあお〜(ね〜! わたしも驚いたよ〜:ポム訳)」

「…それなんだけどさ、私、思ったことがあるんだよね」

「何?」

「私も普段話しておきながらどの面下げて言ってるんだって話なんだけどさ、誰も名簿見てこのクラスに神咲御珠がいるってことに気がつかなかったの面白いよね」

「「「……確かに」」」


まあ、女皇様にも多少の責任はあるかもな。

初日に登校していたら自己紹介で判明する。

あとは普段から登校していたら先生に指名されるなりで判明する。

けど、初日にはいなかったしごく稀に登校しても先生からは名指しされなかったしで誰もクラスに神咲御珠がいるという認識を持たなかった。

思い返せば初めて女皇様と会った日に担任が女皇様を名前で呼んでいたような気もするが、あの時は人も少なかったし仕方ない。

名簿とかを眺めていたら分かったかもしれないけど、わざわざ名簿を見る人なんてそうそういないだろう。


まあ、何はともあれ今日の体育祭でクラスの厨二病不審者が学年1位の成績優秀者だということが判明した。

体育祭の時は普段とキャラが違ったし、そんなところも含めて今後のクラスでの立場が気になるところだ。


女皇様からも色々と話を聞きたかったけど、桜染の血闘が終わったら全員リレーもやらずに帰ってしまったのであまり話せなかった。

何気に連絡先は交換しているから、明日あたり遊びに行かないか誘ってみようかな。

明日は学校も休みだし。


…桜染の血闘と言えば、嬉しいような悔しいようなといった感じだ。

女皇様が笹木に惨めな姿を晒させてくれたのは良かったけど、それを見た水瀬が試合を棄権しやがったのが癪に障る。

2回戦で水瀬が棄権したせいで3年の先輩は不戦勝。

3回戦で女皇様と3年の先輩が戦っていたが、その時の女皇様は楽しそうにバトルしていて良かった。

ちなみにその試合も女皇様が勝った。

頭も良い上に運動神経も良いとは、女皇様はもしかしたらハイスペックなのかもしれない。

そんなハイスペ女子に頼らずにヤツらをどうにかしろということなのか…?

まあ、俺にも考えはあるし、後は自分で何とかしよう。


…よし、嫌なことを考えるのはやめだ。

今は打ち上げを楽しまないと。


「…どうしたのシュン?」


花はこーゆー時に鋭い。

適当にごまかそう。


「いや、疲れたな〜って思って」

「そっか〜。既に全身が痛いし、明日は筋肉痛確定だね〜」

「たまには疲れを癒したいよね。そうだ、今度みんなでどっか行こうよ。あんまりみんなで出かけることないじゃん?」

「ポムはそんな時間あるんですか?」

「あー、仕事ってこと? 大丈夫だよ。最近仕事少なくなってきてるから…」


おい、アリス!!

確実に地雷を踏み抜いたな!?


……俺も少し踏み込んでみたいかも。

つま先だけ。つま先だけ踏んでみよう。


「そうなんだ…。そのさ、ポムっぱいの人気が下がるなんてことあるの?」

「それがね!聞いてよ!!同い年の子なんだけど、Iカップの子が入ってきたの!!!おかげでそっちの子に新しい仕事が入るようになって、アタシの仕事が減っちゃったの!!」

「何それ凄いね…。わたしなんてDなのに…」

「花、私も同じだよ。仲間だね…」

「ワタクシも到底追いつけない領域です…」

「ねえ、みんなミカより胸大きいんだから悲しまないでよ…!!」


グラビア界はインフレを起こしているらしい。

なんだよ、Iカップって。それも高1で!!

やってられねぇよ、まったく…。


「…みんな悲しまないでアタシのこと慰めてよ!」

「あ、ごめんごめん。じゃあ空いた時間でみんなで遊ぼうね〜」

「それ慰めになってないから!」

「ポムの慰めは置いておいて、今度みんなで遊ぶってのはアリだよね。ミカは夏休みに海に行くことを提案します」

「海〜!いいねいいね。期末テストが終わったらそーゆー計画立てよう!」

「いいですね。ぜひそうしましょう!」

「私も賛成!」

「…うん、アタシも行けると思う」


ポムを除いて俺たちのテンションは上がる。

夏休みに海か。

最高に楽しみだ!


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