第34話 体育祭—1
今日はいよいよ体育祭だ。
俺はこの日をとても楽しみにしていた。
それは放課後に特訓をしているうちにどんどん勝ちたいという気持ちが昂ってきたからだ。
体育祭は6色に分かれて戦う。
赤、白、青、緑、黄、桃の6色だ。
全学年ちょうど6クラスあるので、それぞれの学年の同じ組が同じ団になっている。
俺のクラスは青団で、なんと部長が団長だ。
団長は3年生の各クラスの体育委員が担っているのだが、まさか部長が委員会にも入っているとは驚いた。
部長の仕事だけでも忙しそうなのに、よくそこまで頑張れるな。
「シュンちゃんおはよう!」
「おはよう、まこと」
腕を組んで座りながら会場設営をしている役員を眺めていると、体操着姿のまことが荷物を持ってやってきた。
そしてまことは俺の隣に座った。
「いやー、私立ってすごいね。屋内で体育祭ができるんだから」
「分かる分かる。中学の時は炎天下の中やってたから暑くてしかたなかったよ」
「そうだよね。日焼け対策が大変だったけど、その必要もなくて最高だよ」
第一体育館はアリーナ型の体育館だ。
2階には傾斜上に並んだプラスチック製の椅子が四方を囲むように設置されていて、座りながら1階で行われる競技を眺めることができる。
空調も効いていて、最高と言わざるを得ない環境だ。
こんなところで体育祭ができることに本気で感謝したい。
そんな体育館の青団スペースで色々準備している役員を下に眺めていると、まことが尋ねてくる。
「シュンちゃんはどの種目に出るの?」
「えっとね、玉入れと綱引きと団対抗リレーだよ」
「あっ、そうだった。リレー出るんだったね! 頑張って!」
「ありがとう。絶対に勝つよ!」
以前、クラス内で誰がどの種目に出るのかを話し合った。
伝統の全員リレーは文字通り全員強制参加だが、他の種目に関しては誰がどれだけ出ようと規定の数さえ揃えば問題ない。
つまり、運動が苦手な人は全員リレー以外は出なくていいし、その枠を運動が得意な人が埋めていいのだ。
実際、俺のクラスでも全員リレー以外は出ていない人もいるし、6種目くらい出ている人もいる。
俺は3種目と平均的なところだ。
そして、そのうちの1つである団対抗リレーは全員リレーとは違って各クラス2人が出場する、各団6人によって行われるガチのリレーだ。
話し合いの時は「やりたいです!!」と全力でアピールして出場権を勝ち取った。
もう1人は普段まことと仲良くしているっぽい背の高い子だった。陸上部に入っているようで、期待できる頼もしいペアだ。
「まことはどれに出るの?」
「私も玉入れ出るよ。あとは大縄飛び。2つしか出てないんだ」
「なるほど。…てか、ここの体育祭、種目が多すぎるんだよね」
「そうだよね!? わけがわからないよ」
ほんと、わけがわからないよって感じだ。
一旦整理してみよう。
まず午前の部。
開会式から始まり、台風の目、障害物競走、玉入れ、綱引き、大縄跳び、騎馬戦と続く。
昼休憩を挟んだら応援合戦があり、午後の部のスタートとなる。
走り幅跳び、走り高跳び、100メートル走、槍投げと何故か陸上種目が並べば、それらの次に借り物競走、棒引きとなる。そして部活対抗リレー、団対抗リレー、桜染の血闘、全員リレーと続いて閉会式を迎える。
どうやら応援合戦と陸上種目だけは校庭でやるらしい。
それはさておき、陸上種目なんて盛り上がるのか?と疑問に思ったが、ポムやミカが彼女たちの姉から聞いた話によればめちゃくちゃ盛り上がるらしい。
確かに分かりやすくて盛り上がるのかな…?
やっぱりちょっと変だなこの学校。なんて思っていたら、まことが俺の方をじーっと見つめてくることに気がついた。
「…どうしたの?」
「シュンちゃん、何か気づくことない?」
「え………あっ!!」
俺としたことが、今言われて気づいた。
まことの髪がめちゃくちゃ可愛くなっているではないか!
やっぱ体育祭だから気合いを入れてるのかな。
俺は短くしちゃったし、何も特別なことはしてきてないや。
「めちゃくちゃ可愛いよツーサイドアップ!!」
「えへへ、ありがとう! 早起きして頑張ったんだー!」
「すごいね。私は何もしてきてないや」
「シュンちゃんはそのままでも十分可愛いよ! ショート似合ってる。そういえば、最初にソレ見た時びっくりしたんだから」
「まこと以外もみんな驚いてたよ」
「そうだろうねー。ちなみに、銀髪にしたのは私とお揃いにするため?」
「ふふ、そうかも」
「えへへ、またまた〜」
普段まことは髪を下ろしているが、今日はツーサイドアップに結んでいた。
いつもは〝美女〟って感じだけど、今日は〝美少女〟って感じだ。
どっちも可愛いし似合っているが、普段と違う特別感もあって今日のまことの方が好きかもしれない。
いつものメンバーも美人揃いだけど、まことは更に顔が良い。
もちろん、俺も負けてないけどな!
…そう言えば、いつメンが全然来ないな。
そう思って近くを見回したら俺の後方にいつメン4人が座っていた。
俺とまことが一緒だったから邪魔しないようにしてくれたのかな?
こっちに来てくれたって問題ないのに。
いや、考えてみたら前々から同じようなことはあったな。
なんというか、女子ならではというか。
例えば俺がいつメンと一緒にいると、まこととか女皇様とかは俺に話しかけてこないし、逆に俺がまこととか女皇様とかと話しているといつメンは話しかけてこない。
そこら辺のグループ意識と言うか、縄張り意識と言うか、そーゆーのが女子は強いのだろうか?
俺はそこら辺意識しないから、少し理解に苦しむな。
「あ、そろそろ始まるかもよ」
「ほんとだ」
まことに言われ、考え事から意識を戻した俺は1階に目を向ける。
いつの間にか役員は準備を終え、設置された演説台の上に体育委員長が立っていた。
開会式が始まるのだ。
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