第27話 魔眼は実在するとかしないとか
登校すると、教室の黒板に何人かの生徒が集まっていた。
昨日俺に話しかけてくれた子たちだ。
「おはよー。何してるの?」
「おはよう藤宮さん。ほら、見て」
「ん? ああ、成績表ね」
「そうそう」
黒板には中間テストの成績表が張り出されていた。
科目ごとに、学年順位30位までの人間の名前と点数が分かる。
「藤宮さんって頭いいんだね」
「すごい!」
「可愛くて頭いいとか最強じゃーん」
この子たち、随分と俺のことを褒めてくれるな。
嬉しいが、何となく「ははは」と笑ってやり過ごした。
ちなみに、俺は上から下まで幅があるが、全科目に名を連ねている。
「…この
「ほんとだ。すご」
周りの声につられ、俺も表を見てみる。
確かに全科目1位だ。すげぇバケモンだな。
…ん、待てよ?
神咲…?
なんか聞き覚えがあるな。
「うーん……」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
思い出せそうで思い出せないモヤモヤした感じだ。
だけど思い出せないものはしかたない。
今はこの名前を頭に刻んでおこう。
少し経てば黒板からは自然と人が散っていく。
俺も自席に戻ってスマホをいじっていると、しばらくして女皇様が登校してきた。
「あ、おはよう」
「うむ。今日は我が生みの親に無理矢理追い出されてな。仕方なく来てやった」
「そっかそっか」
女皇様はサングラスをキラリと光らせながら席に着いた。
「ところでさ、面白い話があるんだけど」
「む、なんだ?」
俺はさっそく〝桜染の血闘〟の話をした。
「面白そうだな!」
「でしょ。私、出ようかなって思ってるんだけど、一緒に出ない?」
「下僕1号がそう言うのならば仕方ないな」
そんな風に言っているが、声色は乗り気なそれだ。
厨二病ならこの話は気になるだろうと確信していたからノリノリみたいで良かった。
と思ったら、女皇様は少し肩をすぼめて不満げに言った。
「…しかし、全身タイツなのは嫌だな」
「なんで?」
「そんなのボディラインが丸見えだからに決まっているだろう!」
「えー、えっちでいいじゃん」
「…1号はメリハリのある身体をしているからそのような事が言えるのだ。我は…」
「我は?」
「…なんでもない」
「ふーん」
女皇様は結構背が小さい。胸も小さい。
背も胸も小さいけど、態度はでかい。
「じゃあ服装規定を変えられないか先生に聞いてみなよ」
「ふむ、確かにな。一考の余地はあるな」
「でしょ」
そう自分で提案してみるが、正直1人の生徒が提言したところでルールを変えられるとは思わない。
けど、しなくて変わらないより、したけど変わらないの方がいいだろう。
もちろん、俺はえっちな服装の方が良いと思うけどな。
そういえば、ミカも服装が嫌だという理由で毎年競技に参加する人は少ないって話をしてたような気がする。
…そうだ、これをダシにしてアイツらに吹っかけるのはどうだ?
「先輩、自分の貧相な身体を見せびらかすのが恥ずかしいんですかぁ〜?」とか挑発したら簡単に乗ってくれそうだ。
そしたら全力でボコしてやる。
そんなことを考えていたら、種目表の説明を読みに行った女皇様が教えてくれる。
「なあ1号、参加できるのは各クラス1人まで
とあったぞ」
「…え?」
しまった、全然確認してなかったな。
なら、ここは1つ、女皇様に委ねてみよう。
「じゃあ、女皇様が出てよ」
「いや、だからそれは考えてからと——」
「私ね、ボコボコにして欲しい人がいるの」
「それはその髪と関係があるのか?」
「…え?」
そういえば、女皇様と会うのは俺が髪を変えてから今日が初めてだ。
なのに驚きもせずいつもと同じように声をかけてきた。
勿論、髪を切ることになった理由なんて話していない。
なのに女皇様はそんな事を言ってきた。
びっくりして固まってしまった俺に、女皇様は続ける。
「魔眼が告げているのだよ、何かが変だと。
何かあったのか?」
……女皇様と話していると、ときどき本当に魔眼でも使って全てを見透かされているのかと思いたくなる時がある。
もう、女皇様には話しちゃってもいいかな。
「…実はね、かくかくしかじかで——」
順を追って話していくにつれ、女皇様の腕がプルプルと震え始めた。
話を終えた時には全身から怒りの感情が溢れ出ていた。
「——ってことがあったんだよ」
「許せん! 我が最初の下僕にそのようなことをするとは断じて許せん!」
女皇様は机を拳でドンと叩き、自分の胸に拳を当ててきっぱりと言い放った。
「いいだろう。1号、何が何でもそいつらを〝桜染の血闘〟に引き摺り出せ。一方としか戦えないかもしれないが、必ず嬲り殺してやる」
「意気込みは嬉しいけど、殺すのはだめかなぁ…」
「いんや、殺してやる」
「そ、そうですか…」
流石に本当に殺しはしないだろうけど、ここまでやる気を出してくれているならそれでいいや。
正直、女皇様なら絶対に負けないだろうという確信めいたものを感じるのだ。
もちろん理由などないが、どこか安心して任せられる。
多分、このクラスの雰囲気からしても他に桜染の血闘に参加したいという人もいないだろうし、後は女皇様に任せよう。
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