第17話 近づく定期テスト

「あ〜、再来週中間テストか〜」


昼休み。俺と花の所に集まってみんなで昼ごはんを食べていると、花が思い出したように言い出した。


「ああ、再来週かテスト。ま、アタシはそれなりに勉強してるから大丈夫かな」

「わたしを置いていかないでよぉぉぉ!」


椅子に座りながら上半身をグルグルさせて「ぁぁぁぁぁ」と呻く花に、ポムはニヤニヤしながら言葉を返した。


「花はちゃんと授業受けていましたよね?」

「そうだよ〜、ちゃんと受けてるよ〜。だけど難しくてあんまり分からないの! …そもそもどうしてこの学校受かったのかも分からないんだから!」

「ふっふっふ。悪いね花。実は私、特待生で受かってるんだよね、ここ」

「「「そうなの!?!?」」」


俺の言葉に、みんなが良い反応を見せてくれる。

いいねいいね。


「シュン、わたしと同類だと思ってたのに…」

「アタシも実はポンコツなのかと…」

「ワタクシもです」

「ミカも」

「おい、みんな揃って私のこと馬鹿だと思ってたの!?」

「シュンはよく授業中に居眠りしてましたから、てっきり勉強は苦手なのかと…」

「それは夜遅くなっちゃうことが多かったからね。それにまあ、授業聞いてなくても分かるし…」

「出た出た! 勉強できる人にのみ許された発言!」

「ぐぬぬ! みんなコイツを許すな〜!」

「えっ? —ひゃっ!?」


ポムと花が俺に先制攻撃を仕掛け、アリスとミカまでそれに続いた。

こら!頭をわしゃわしゃするんじゃない!


「おー、白か。イイネ!」

「ポム!?」


スカートめちゃくちゃ堂々と捲るじゃん!?

…くっ、何とかしようにもアリスが尋常じゃない力で俺の腕を押さえ込んでくるせいで抜け出せない。


「ちょアリス離してよ!」

「え? 何か言いましたか?」

「…」


コイツ、中々にしたたかだぞ。


「良いおっぱいしてるね〜。ま、アタシのが大きいけど」

「だからポム!?!?——あはははっ!」


さっきからポムのセクハラが止まない。

そんな時にミカが首をくすぐってきた。

やめろ! 俺は首が弱いんだ!


「——よーし、みんな離せ〜!」


しばらくしてから花が命令を下す。

それに従ってみんな俺の体から手を離した。


「これでシュンも懲りたはず」

「…はい、おっしゃる通りでございます」


崩れた制服を整えながら俺は反省する。

口の上では。

反省?——ふっふっふ、まさかまさか。

可愛い女子に囲まれて体を弄ばれるの、なかなか悪くなかった。

…というか、女子でもこーゆーノリをするんだな。てっきり体を重ねてじゃれ合うのは男子だけかと思っていたけど、そうでもないらしい。

ふふ、結構楽しかった。

次の機会も狙ってみよう。


「それはそうと、今度みんなで勉強会しない?」

「いいと思う」

「賛成です」

「わたしも〜!」

「いいんじゃない。どこでやる?」


俺がそう質問すると、みんなが無言でこっちを見つめてくる。


「…あ、そーゆー感じ?」


4人が頭を縦に振る。


「…じゃあ帰ったらお母さんに聞いてみるね」

「やった〜!」

「みんな、シュンの部屋入ったら漁ろうね!」


よし、絶対に部屋は片付けよう。


「楽しみ」

「ふふ、そうですね」


おい、お二人さん!?


…とまあ、そんな感じで俺の家で勉強会をする流れになってしまったわけだが、お母さんはOK出してくれるだろうか。

中学の時はあんまり人を家に呼ばせてくれなかったし、少し不安だ。


* * *

「ねえねえ、今度ウチで勉強会して良い?」


帰宅後、早々に俺は尋ねる。

お母さんは一瞬戸惑ったような表情を見せたが、すぐに笑顔で答えた。


「シュンちゃんの部屋以外に入らなければ良いわよ」

「え、いいの!? ありがとう! 私の部屋以外は使わないし大丈夫!」

「ふふ。楽しんでね」


すんなり了承を得られたので拍子抜けだ。

やったぜ。


ということで、そのことを以前作った5人のLIMEライムグループに連絡する。

次の日曜日。俺の最寄駅に集合だ。

メッセージを打つと、速攻で既読がついた。

たぶんポムあたりだろう。


俺がスマホを見ていると、洗い物をしているお母さんが口を開いた。

こぼれ落ちるのは衝撃の言葉。


「ところでシュンちゃん、今日すごいことがあったのよ」

「ん?」

「午前中に涼太を連れて東京に行ってたんだけど、なんと、スカウトされたの!!」

「ああ、そういえば涼太今日は学校休みだったね…って、えぇ!?」


す、スカウト!?

小学2年生だぞ!? アイドルなんて出来るわけもないし何のスカウトだ?


「お母さんも驚いたわよ。小学生がターゲットの服を売ってる雑誌のモデルだって」

「ファッションモデルってこと!?」

「そうみたい」


そうきたか。確かに涼太はまだ小学生だというのに、だいぶ完成された顔をしている。

やっぱ顔がいいと需要が高いのかな。


「で、返事はどうしたの? 」

「名刺だけ貰って、まだ返事はしてないわ。『気になったら電話かけてくれ』って」

「なるほど。それで涼太はなんて?」

「あんまりピンときてないみたいで、『わかんなーい』って変な顔してたわ」

「まあ、そうだよね。私は良いと思うけどなぁ、せっかくスカウトされたんだし。滅多にないよ」

「私もそう思ってるわよ。少しはお金も貰えるだろうし。けど、あの子の気持ちが1番だわ」


子供のことを優先する良い母親だな。


「そうだね。じゃあ、お風呂でも入りながら少し話してみようかな」


俺は荷物を置いてから涼太の部屋に突撃した。


「ただいま! 開けるよ!」


別にこの歳ならナニもしてないだろう。

そう思い、返事を聞くこともなく扉を開ける。


「あ、お姉ちゃん。おかえり」

「あれ、勉強してんだ?」

「うん。よく分かんなくて…」


涼太は机で勉強していた。

小学2年生で勉強だと?

偉い、偉すぎる。

俺なんて、遊んで食べて寝てを繰り返していたぞ。


「どれどれ、お姉ちゃんが教えてあげよう」

「ううん、自分でやるから大丈夫」

「え、そっか…」


そう言うと、涼太は再び教科書に目を落として静かになる。

あんまり考えたことなかったけど、涼太は結構負けず嫌いなところがあるのかもしれない。

学校で、分からなくて悔しかったのだろう。

だからこそ自力で頑張ろうとしているに違いない。

俺はあいつが助けを求めてきた時に助ければ良い。

よし、俺は早々に退場するとしよう。


「邪魔したね。頑張って! 涼太ならできる!」

「うん!」


ニコッと笑う涼太。

本当に男なのかと疑問に思うくらい可愛い。



「じゃ、久々に1人でお風呂入りますか」


ここ最近、毎日涼太とお風呂に入っていた。

可愛いから良かったけど、毎日ともなると少し問題があった。

この身体でも性欲はあるのだ。

もっとも、これが男たる人格から来るものなのか、女たる身体から来るものなのかは分からない。

前世のムラムラとはまた少し違うソレな気もするから、おそらく身体に刻まれた本能なのだと思う。

流石に自室で自慰はできない。前世ではこんなことなかったけど、この身体だと我慢しているのにどうしても喘ぎ声が出てしまうんだ。

涼太にそれが聞かれるとまずいし、あいつはいきなり扉を開けて入ってくることもある。

家族に見つかる恐怖を感じながら自慰できるほど俺の精神は強くない。

だから、普段は風呂場で自慰をしていた。

風呂場ならシャワーの音で喘ぎ声は誤魔化せるし、床が濡れようとも問題ない。

だけど、最近は涼太とお風呂に入っていたから3週間くらいシていなかった。


「…ふふっ」


久しぶりにできると思うと、思わずニヤついてしまう。抑圧されていた性欲が一気に沸き立ってくるのを感じる。


よし、今日のお風呂は長くなるぞ。

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