第4話 実は、弟がいる
「ただいまー。疲れたぁ〜〜〜」
「おかえりなさい。学校はどうだった?」
クタクタで帰宅すると、エプロン姿の母親が出迎えてくれる。夕飯の支度でもしてくれていたのだろう。
俺は荷物を自室に置いてきて、リビングに戻り母と話す。
「実はね、さっそく友達ができたんだよ」
「それは良かったわね。けどシュンちゃんは友達作り苦手じゃなかった?」
「向こうから来てくれたんだ。放課後も女子会してきてさ。……やたら私ばっかり質問責めに遭って疲れたけど」
「ふふふ、楽しそうで良いじゃない」
「確かにつまらなくはなかったかな。じゃ、部屋戻るね」
「はーい。お風呂は沸かす?」
「よろしく」
「はーい」
俺は再び自室に戻り、部屋の姿見に映る自分を眺める。
やはり、制服が可愛い。白を基調としたブレザーは、赤や金の刺繍が入っていてオシャレだ。薄くチェックの柄が入ったスカートも自分のスラッとした脚と良く似合う。
そして何より俺自身が可愛いしかっこいい。
自己肯定感は高くないとやってられないぜ。
…だけど、今の俺の目は死んでいる。
「疲れたな…ほんとに……」
女子会は楽しかった。少なくともつまらないとは感じなかった。
だけど、今までの人付き合いとあまりにも違う環境に身を投じたせいで、思ったよりも疲労の蓄積が凄まじかった。
そんな風に疲れた時、俺はやることがある。
「へい弟ーーーーー!!」
「————はーい」
隣の部屋の弟を召喚するのだ。
「どしたのお姉ちゃん?」
今年小学2年生になる弟。俺はこいつを育てているのだ。
そう、男の娘に。
「お姉ちゃん疲れちゃった。さ、きてきて」
俺はそう言いながらベッドに腰掛ける。
扉から頭だけを覗かせていた弟はトコトコ俺のところまでやってきた。
「はい、おいで」
「またかよー」
俺は両腕を広げ、弟にハグするように促す。
弟は慣れた様子で俺の太ももにまたがり、足と腕を俺の背に回して抱きつく。
「んー、落ち着く」
「お姉ちゃん良い匂いする〜」
「そうでしょ。良いトリートメントを使っているし、石鹸もこだわってるからね」
「ふーん」
存分に弟に抱きついた後は、今度は弟を180°回転させて膝の上に座らせる。
そうしたらヘアブラシを取り、髪のブラッシングを始める。
俺の髪ではない。
弟の髪だ。
「ねえ、いつまで伸ばせばいいの?」
「えー? お姉ちゃんの気が済むまでだよ」
「えーー。めんどくさいのにーー」
「お姉ちゃん髪の長い男の子が好きだなぁ」
「…髪伸ばす!」
「よしよし」
俺は、弟の男の娘化計画の第一歩としてその茶髪を伸ばさせている。両親は切らせようとしているけど、俺が全力で拒んでいる。
ロマンじゃないか。
ショタがポニーテールしている姿は。
今のコイツの髪の毛は結んだ状態で首のあたりまで伸びている。
もう少し伸ばしたいな。
「…まだー?」
「ああごめんごめん。もういいよ。ありがとう
「ん。じゃ」
ヒョイと膝から降りた弟——涼太はそそくさと自室に戻ってしまった。
涼太は着実にお姉ちゃんっ子になっていると思う。
シスコン男の娘とか最高だろ。
しかも、涼太は俺と同じで美形だ。
イケてる姉と男の娘の弟。
これこそ俺の理想のカタチだ。
「お風呂沸いたよーー」
俺の部屋は2階にある。1階から母親の声が飛んできた。
もうお風呂が沸いたのか。
なら、お風呂に浸かりながら考え事でもしよう。
聖域たるお風呂は考え事をするには適しているのだ。
「今行くー!」
返事をし、俺はのそのそ階段を降りていく。
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