earthquake in this town

マイペース七瀬

第1話

 2024年9月1日。

 ここは、東京。

 40代後半になっている会社員のミキヒコは、今日は、品川まで出てきた。

 まだまだ、暑い日が続く。

 そして、新型肺炎コロナウイルス感染症が、収束しても、まだ、流行していて、そして、酷暑ゆえにか、熱中症で、倒れて、救急車で、病院へ運ばれる場面を何度か観ている。

 本当だったら、台風がなかったら、もっと、外出して、どこかへ行きたいと思っていたのだが、そうは、いかない。

 ただ、今日くらいは、新宿へ行こうと思った。

 あては、ない。

 昨日、35歳の彼女のマヤと口論になった。

 マヤは、何故か、防災研究所で、仕事をしている。

 明日は、関東大震災の日だから、ミキヒコは、もっと、防災意識を高めないと!

 そんなの、オレしないよ。

 あんな彼女、嫌だ、とか思っていた。

 喧嘩した理由は、そんなものだった。

 確かに、明日は、関東大震災の日だ、と分かった。

 だけど、しつこいって。

 マヤは、阪神淡路大震災を経験したのは、分かるけどさ。

 これから、ミキヒコは、京急品川駅から、山手線で、新宿へ行こうとプラットフォームを歩いた。

 その時、夏の暑さで、頭が、クラクラしていた。

 昨日は、少し、スポーツクラブで、筋トレをしていたが、それでも、どこか、意識が遠のいた。

 ー身体の力がはいらない

 ーみんなについていけない

 歩くスピードが、遅くなっている。

 …。

 あれ???

 ここは、どこ?

 YouTubeのどっきりだろうか?

 まさか、テレビ局のエキストラだろうか?

 みんな、明治時代か大正時代のかっこうをしている。

 道路を、路面電車が走っている。

 人力車が走っている。

 みんな、浴衣を着て歩いている。

 読めない漢字がある。

 今日は、いつだろうか?

 前の人が、読んでいる新聞をちらっとみたら、「大正元年9月1日」と書いている。まさか、と思った。

 いや、マヤが、「1923年9月1日は、関東大震災の日だよ」と口ずっぱく言っているのを、耳がダンボになるほど、聴いたけど、可笑しいじゃないか、と思った。

 ミキヒコは、自分のかっこうをみたら、また、着物になっているのに、気がついた。

 前の時計台を見たら「12時前」になっていた。

 まさかね

 と思った。

 その時、目の前に、「カフェ」とあった。

 そして、そこに、マヤに顔立ちがよく似た女性が、飲食物を運んでいた。

ーあれは、マヤか?

 夢の中にいるのか?

 その時だった。

 ドドドドドドドドド

 ガラガラ

 バンバン

 と地響きが起こった。

「大変だ、地震が起きた」

「逃げろ」

 と言っている。

 建物が、真っ赤な火をつけている。

 ミキヒコは、暑く感じていた。

 ミキヒコは、石にぶつかった痛さを感じた。

ー痛い痛い痛い

ーマヤ、オレが悪かった、ごめん、死にたくないよ

ーマヤ、ごめん、オレ、謝るから

 その時だった。

 マヤ、によく似た女給の女性が、ミキヒコを恥ずかしそうに引っ張っていた、袖口を。

 そして、再び、意識がなくなっていた。

 …。

「月村さん、月村さん」

 と中年の看護師さんは、言っている。

「ここは?」

「病院です、品川の」

「僕は、どうなったのですか?」

「品川駅で倒れて、通行人の方が呼んで」

「ええ」

「あちらは、お付き合いしている方ですか?」

 そこに、マヤ、が、心配そうにミキヒコを観ていた。

「はい」

 ミキヒコは、関東大震災の日を馬鹿にしたから、と思った。

 そして、ミキヒコは、マヤと関東大震災の日の動画をスマホで観ていたらしい。

 その日は、ミキヒコは、マヤ、と、病棟で一緒にいたそうである。<完>

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