### 第5話:試練の時

レンとの幸せな日々が続いていたが、サクラは


ある日、突然の訪問を受けた。レンの所属事務


所のマネージャーが、サクラの職場までやって


きたのだ。


「サクラさん、少しお話があります。」


マネージャーの表情は真剣で、サクラの胸に不


安がよぎった。



近くのカフェに場所を移し、マネージャーは重


い口を開いた。


「レンとの関係についてです。あなたとレンの交


際が、彼のキャリアにとって大きなリスクとな


っています。事務所としては、彼の今後の活動を


守るためにも、この関係を続けることはできな


いと判断しました。」


その言葉に、サクラの心は一瞬で凍りついた。


「でも…私たちの関係は、彼にとって大切なも


のなんです。彼は私と一緒にいることで、自分ら


しくいられるって…」


「理解しています。しかし、アイドルとしての彼


には、守らなければならないイメージがありま


す。ファンに夢を与える存在であり続けるために


は、プライベートのことが公になってはいけな


いんです。」


マネージャーの言葉には、断固とした決意が感


じられた。



サクラは目を伏せ、言葉を失った。レンとの関


係が彼のキャリアに悪影響を及ぼすならば、自


分はどうすればいいのか。彼の未来を守るため


に、自分が彼から離れるべきなのだろうか。


「サクラさん、これは苦しい決断かもしれませ


んが、どうか理解していただきたい。彼のため


にも、別れるという選択を考えてください。」


その言葉を最後に、マネージャーは立ち上が


り、サクラを残してカフェを後にした。サクラ


はその場でしばらく動けなかった。胸の中に湧


き上がる感情が、どうしようもなく彼女を苦し


めた。


### 別れの決意


サクラは悩みに悩んだ末、レンに別れを告げる


決心をした。彼の未来を守るために、自分が犠


牲になるしかないと考えたのだ。



ある日、サクラはレンに会うために、彼の家を


訪れた。彼女の表情はどこか沈んでいて、レン


はすぐに何かがおかしいことに気づいた。


「サクラさん、どうしたの?何かあったの?」


レンは心配そうに彼女を見つめた。


サクラはレンの顔を見つめながら、震える声で


言った。


「レンさん、私たち…別れましょう。」


その言葉に、レンは愕然とした。


「え?どうして突然…」


「あなたの事務所の方に言われたの。私たちが


一緒にいることで、あなたのキャリアに悪影響


を与えるって。だから、私は…あなたのために


別れるべきだと思うの。」


サクラの目には涙が浮かんでいた。レンを傷つ


けたくない、でも彼の未来を守りたいという葛


藤が、彼女の心を引き裂いていた。



レンはサクラの手を強く握りしめた。「そんな


こと言わないで、サクラさん。僕は君がいるか


ら頑張れるんだ。君がいなくなったら、僕はど


うすればいいんだ?」


「でも…あなたのためなんです。私と一緒にいる


ことで、あなたが失うものが多すぎる。私はそ


れに耐えられない。」


サクラは涙を拭いながら、必死に言葉を紡い


だ。



レンはしばらく沈黙し、何かを決意したように


深く息をついた。


「もし、君が僕から離れると言うなら、僕はす


べてを失っても構わない。それでも、君を手放


すことはできない。」


その言葉に、サクラは胸が締め付けられるよう


な思いだった。


「でも…レンさん…」


「サクラさん、僕のために自分を犠牲にする必


要はないんだ。僕は君と一緒にいることが何よ


りも大事なんだ。」


レンの目には、強い決意が宿っていた。



サクラはその目を見て、どうしても彼のそばに


いたいという気持ちが込み上げてきた。しか


し、同時に彼の未来を壊してしまうのではない


かという恐怖が、彼女を再び躊躇させた。


「サクラさん、僕たちには一緒に乗り越えられ


る方法があるはずだ。だから、僕を信じてほし


い。」


レンは優しくサクラを抱きしめ、彼女の涙を拭


った。


「レンさん…」


サクラは彼の胸に顔を埋め、泣き崩れた。彼の


温もりを感じながら、彼の言葉を信じたいとい


う気持ちと、彼を守りたいという思いの間で、


再び葛藤が渦巻いた。


### 新たな決意


その夜、二人は長い時間をかけて話し合った。


レンは事務所に自分の意思をしっかりと伝える


ことを決意し、サクラも彼の決意を支えること


を約束した。


「僕はもう一度、事務所と話をする。君との関


係がどれほど大切かを理解してもらうよ。僕た


ちの愛は、決して間違っていないんだ。」


レンはサクラを強く抱きしめ、決意を新たにし


た。



サクラも彼に寄り添いながら、彼を信じてつい


ていくことを決意した。


「レンさん、私もあなたを信じます。どんなこと


があっても、あなたと一緒に乗り越えていきま


す。」


二人はお互いに支え合い、これから訪れるであ


ろう困難に立ち向かう覚悟を決めた。愛する人


と共にいることが、彼らにとって何よりも大切


なことだと、改めて心に誓ったのだった。


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