### 第5話:試練の時
レンとの幸せな日々が続いていたが、サクラは
ある日、突然の訪問を受けた。レンの所属事務
所のマネージャーが、サクラの職場までやって
きたのだ。
「サクラさん、少しお話があります。」
マネージャーの表情は真剣で、サクラの胸に不
安がよぎった。
*
近くのカフェに場所を移し、マネージャーは重
い口を開いた。
「レンとの関係についてです。あなたとレンの交
際が、彼のキャリアにとって大きなリスクとな
っています。事務所としては、彼の今後の活動を
守るためにも、この関係を続けることはできな
いと判断しました。」
その言葉に、サクラの心は一瞬で凍りついた。
「でも…私たちの関係は、彼にとって大切なも
のなんです。彼は私と一緒にいることで、自分ら
しくいられるって…」
「理解しています。しかし、アイドルとしての彼
には、守らなければならないイメージがありま
す。ファンに夢を与える存在であり続けるために
は、プライベートのことが公になってはいけな
いんです。」
マネージャーの言葉には、断固とした決意が感
じられた。
*
サクラは目を伏せ、言葉を失った。レンとの関
係が彼のキャリアに悪影響を及ぼすならば、自
分はどうすればいいのか。彼の未来を守るため
に、自分が彼から離れるべきなのだろうか。
「サクラさん、これは苦しい決断かもしれませ
んが、どうか理解していただきたい。彼のため
にも、別れるという選択を考えてください。」
その言葉を最後に、マネージャーは立ち上が
り、サクラを残してカフェを後にした。サクラ
はその場でしばらく動けなかった。胸の中に湧
き上がる感情が、どうしようもなく彼女を苦し
めた。
### 別れの決意
サクラは悩みに悩んだ末、レンに別れを告げる
決心をした。彼の未来を守るために、自分が犠
牲になるしかないと考えたのだ。
*
ある日、サクラはレンに会うために、彼の家を
訪れた。彼女の表情はどこか沈んでいて、レン
はすぐに何かがおかしいことに気づいた。
「サクラさん、どうしたの?何かあったの?」
レンは心配そうに彼女を見つめた。
サクラはレンの顔を見つめながら、震える声で
言った。
「レンさん、私たち…別れましょう。」
その言葉に、レンは愕然とした。
「え?どうして突然…」
「あなたの事務所の方に言われたの。私たちが
一緒にいることで、あなたのキャリアに悪影響
を与えるって。だから、私は…あなたのために
別れるべきだと思うの。」
サクラの目には涙が浮かんでいた。レンを傷つ
けたくない、でも彼の未来を守りたいという葛
藤が、彼女の心を引き裂いていた。
*
レンはサクラの手を強く握りしめた。「そんな
こと言わないで、サクラさん。僕は君がいるか
ら頑張れるんだ。君がいなくなったら、僕はど
うすればいいんだ?」
「でも…あなたのためなんです。私と一緒にいる
ことで、あなたが失うものが多すぎる。私はそ
れに耐えられない。」
サクラは涙を拭いながら、必死に言葉を紡い
だ。
*
レンはしばらく沈黙し、何かを決意したように
深く息をついた。
「もし、君が僕から離れると言うなら、僕はす
べてを失っても構わない。それでも、君を手放
すことはできない。」
その言葉に、サクラは胸が締め付けられるよう
な思いだった。
「でも…レンさん…」
「サクラさん、僕のために自分を犠牲にする必
要はないんだ。僕は君と一緒にいることが何よ
りも大事なんだ。」
レンの目には、強い決意が宿っていた。
*
サクラはその目を見て、どうしても彼のそばに
いたいという気持ちが込み上げてきた。しか
し、同時に彼の未来を壊してしまうのではない
かという恐怖が、彼女を再び躊躇させた。
「サクラさん、僕たちには一緒に乗り越えられ
る方法があるはずだ。だから、僕を信じてほし
い。」
レンは優しくサクラを抱きしめ、彼女の涙を拭
った。
「レンさん…」
サクラは彼の胸に顔を埋め、泣き崩れた。彼の
温もりを感じながら、彼の言葉を信じたいとい
う気持ちと、彼を守りたいという思いの間で、
再び葛藤が渦巻いた。
### 新たな決意
その夜、二人は長い時間をかけて話し合った。
レンは事務所に自分の意思をしっかりと伝える
ことを決意し、サクラも彼の決意を支えること
を約束した。
「僕はもう一度、事務所と話をする。君との関
係がどれほど大切かを理解してもらうよ。僕た
ちの愛は、決して間違っていないんだ。」
レンはサクラを強く抱きしめ、決意を新たにし
た。
*
サクラも彼に寄り添いながら、彼を信じてつい
ていくことを決意した。
「レンさん、私もあなたを信じます。どんなこと
があっても、あなたと一緒に乗り越えていきま
す。」
二人はお互いに支え合い、これから訪れるであ
ろう困難に立ち向かう覚悟を決めた。愛する人
と共にいることが、彼らにとって何よりも大切
なことだと、改めて心に誓ったのだった。
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