### 第4話:お忍びライブ参戦

### 第4話:お忍びライブ参戦


サクラとレンが交際を始めてから数か月が経


ち、二人の関係はますます深まっていた。サク


ラは、レンがどれほど一生懸命に仕事に取り組


んでいるかを理解し、彼を支えることが自分の


幸せだと感じるようになっていた。



ある日、レンが参加する大規模なライブが開催


されることが発表された。全国ツアーの一環


で、ファンたちが待ち望んでいたイベントだ。


サクラは、そのライブに行きたいという気持ち


を抑えられなかった。しかし、彼のファンとし


てではなく、彼の特別な存在として彼を応援し


たいという強い思いがあった。


「レンさん、今度のライブ、私も行きたいで


す。」


サクラはある日、勇気を出して彼にそう伝え


た。


「え、本当に?でも、大丈夫かな…人が多い


し、万が一誰かに気づかれたら…」


レンは少し心配そうに言った。


「心配しないで。変装して、目立たないように


するから。どうしても、あなたが頑張っている


姿をこの目で見たいんです。」


サクラの瞳には、強い決意が宿っていた。



レンは少し考えた後、サクラの手を握りしめて


言った。


「分かったよ、でも絶対に無理はしないで。君


がそこにいると思うと、僕もいつも以上に頑張


れる気がするよ。」


こうして、サクラはレンのライブにお忍びで参


加することになった。


### ライブ当日


ライブ当日、サクラはレンに見送られて会場へ


向かった。もちろん、二人は別々に会場入り


し、サクラは完全に変装していた。キャップに


サングラス、そしてマスクで顔を隠し、普通の


ファンの一人として紛れ込むためだ。



会場に到着したサクラは、周りのファンたちと


同じように興奮しながらも、心の中では特別な


感情を抱いていた。


「今日、私はファンじゃない。彼を一番近くで


支える人なんだ」


と。



ライブが始まると、会場は熱気に包まれ、ファ


ンたちの歓声が響き渡った。サクラもその一部


として、心から楽しんでいた。しかし、彼女の


視線は常にステージの中央に立つレンに注がれ


ていた。



レンはいつも以上に輝いていた。彼のパフォー


マンスは完璧で、ファンたちを魅了し続けてい


たが、その瞳の奥には、いつも以上に力強い決


意が感じられた。サクラはその姿を見て、胸が


熱くなった。


「レンさん、こんなに頑張ってるんだ…」


サクラは彼の姿に感動し、目頭が熱くなった。



ライブが終盤に差し掛かり、レンがMCでファン


に向けてメッセージを送る時間がやってきた。


「今日は、特別な日です。皆さんがこうして応援


してくれて、本当に感謝しています。実は、今日


は僕にとってもっと特別な理由があるんです。」


その言葉に、会場はざわめき始めた。サクラも


驚きながら、彼の言葉に耳を傾けた。


「僕にとって大切な人が、この会場に来てくれ


ています。その人がそばにいてくれるおかげで、


僕はいつもよりもっと頑張れるんです。ありがと


う。」


レンは笑顔を浮かべながら、観客席に目を向け


た。サクラはその瞬間、彼が自分に向けてメッ


セージを送っていることに気づいた。涙が頬を


伝い、彼への感謝と愛情が溢れ出した。


「レンさん…」


サクラは小さな声で彼の名前を呟いた。


### 二人だけの打ち上げ


ライブが無事に終了し、サクラは指定された場


所でレンと再会した。レンは汗をかいたまま、


疲れを見せることなく、サクラを抱きしめた。


「来てくれてありがとう、君がそこにいてくれ


たおかげで、今日は本当に特別なライブになっ


たよ。」


レンはそう言って、彼女の髪にキスをした。


「私こそ、ありがとう。レンさんの頑張りを見


て、私ももっとあなたを支えたいって思っ


た。」


サクラは涙ぐみながら答えた。


「これからも、君のことを一番大切にするよ。


だから、ずっと僕のそばにいてくれないか?」


レンは優しくサクラを見つめた。


「もちろん、ずっと一緒に…」


サクラは微笑んで答え、二人は再び抱きしめ合


った。



その夜、二人はレンの自宅でささやかな打ち上


げを開いた。レンの好きな料理をサクラが用意


し、二人で静かに過ごすその時間が、彼らにと


って何よりも特別なものだった。



甘いワインを少しだけ口にしたレンは、サクラ


の肩に頭を乗せ、心地よい眠気に包まれてい


た。


「今日のライブ、君がいてくれて本当に嬉しかっ


た…ありがとう、サクラさん。」


レンは目を閉じながら、優しく囁いた。


「私も、レンさんのことがますます好きになり


ました。これからも、ずっと一緒に頑張りましょうね。」


サクラは彼の髪を優しく撫でながら、微笑んで


答えた。



二人はそのまま、甘く穏やかな時間を共有し、


静かに夜が更けていった。


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