### 第2話:本当の自分
翌日、サクラは仕事を終えた後、再びレンと会
う約束をしていた。正直、彼女は少し緊張して
いた。昨日の出来事はまるで夢のようで、現実
とは思えなかったからだ。アイドルの彼が、な
ぜ自分に興味を持ったのか、サクラにはまだ理
解できていなかった。
*
指定されたカフェに到着すると、すでにレンは
待っていた。彼はシンプルな帽子とマスクで顔
を隠していたが、そのオーラは隠しきれず、周囲
の視線を集めていた。
「サクラさん、こちらへどうぞ。」
レンは優しく声をかけ、席へ案内した。
「昨日は、ありがとうございました。あんなに
長い時間話すつもりはなかったんですが、つ
い…」
レンは少し照れた様子で言った。
「私こそ、突然あんな話をされて驚きました。
でも、話してくれてありがとう。」
サクラは微笑んだ。
*
二人はカフェのメニューを注文し、自然な流れ
で会話が始まった。レンは、アイドルとしての
生活の裏側を少しずつ明かし始めた。華やかな
表舞台とは裏腹に、常にプレッシャーと孤独を
感じていることを打ち明けた。
「みんなが僕を見てくれるのは嬉しいけど、そ
れでも心から笑えることは少ないんです。みんな
が望む『レン』を演じることで、自分自身を見
失ってしまいそうになる。」
その言葉に、サクラは心を痛めた。彼の笑顔の
裏に隠された孤独が、彼女にとっては耐え難い
ものに思えた。サクラは、自分の中で芽生え始
めた感情が、ただの同情ではないことを確信し
た。
「レンさん、私にできることがあれば、何でも
言ってください。あなたが本当の自分を取り戻
せるように、私も手伝いたいです。」
その言葉に、レンは驚き、そして嬉しそうに微
笑んだ。
「ありがとう、サクラさん。そんな風に言って
もらえるなんて、嬉しいです。」
### 心の壁を超えて
それからの二人は、頻繁に会うようになった。
レンは徐々にサクラに心を開き、彼の本当の姿
を見せるようになった。サクラもまた、彼に対
して素直な気持ちを隠さずに伝えるようにな
り、二人の距離は日に日に縮まっていった。
*
ある日、サクラの職場で特別なプロジェクトが
発表された。アイドルグループの特集記事を担
当することになり、その取材相手が偶然にもレ
ンのグループだったのだ。
「これって、運命なんでしょうか?」
サクラは内心、驚きと緊張が入り混じった感情
を抱えながら、レンにそのことを伝えた。
「運命かもしれませんね。でも、だからこそ、
僕たちはもっとお互いを知るべきだと思いま
す。」
レンは微笑んで答えた。
*
プロジェクトが進む中で、サクラは職場での顔
とプライベートでの顔を使い分けるレンの姿
に、ますます惹かれていった。そして、レンも
また、サクラの誠実さや優しさにますます心を
許していった。
### 甘い瞬間
取材が無事に終わった後、レンはサクラを静か
な場所へ連れて行った。それは彼が子供の頃か
ら大切にしている、小さな公園だった。
「ここで、僕はよく一人で考え事をしていまし
た。誰にも見られずに、ただ静かに…」
レンは遠くを見つめながら言った。
「そんな場所を私に教えてくれてありがとう、
レンさん。」
サクラは感謝の気持ちを込めて言った。
「サクラさん、僕は…あなたと一緒にいると、
本当に心が安らぐんです。だから、もっとあなた
のそばにいたい、もっとあなたを知りたい…」
レンの告白に、サクラの心は一気に熱くなっ
た。彼女は、自分が彼をどう思っているのか、
もう隠すことはできなかった。
「私も、レンさんのことが…大切です。」
サクラは小さな声で答えた。
その瞬間、レンは彼女を優しく抱きしめた。二
人は、まるで時が止まったかのように、その甘
い瞬間を共有した。
### これからの二人
その後、二人は正式に交際を始めた。しかし、
レンがサクラを甘やかされるのは、彼女と二人
きりのときだけ。表向きはアイドルとしての役
割を全うし、プライベートではサクラに甘える
レンの姿は、まさに彼が望んでいた「本当の自
分」だった。
*
サクラもまた、彼を支えながら、自分自身の気
持ちを深めていった。二人は、これからも一緒
に困難を乗り越え、甘く切ない恋愛を続けてい
くことだろう。
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