### 第2話:本当の自分

翌日、サクラは仕事を終えた後、再びレンと会


う約束をしていた。正直、彼女は少し緊張して


いた。昨日の出来事はまるで夢のようで、現実


とは思えなかったからだ。アイドルの彼が、な


ぜ自分に興味を持ったのか、サクラにはまだ理


解できていなかった。



指定されたカフェに到着すると、すでにレンは


待っていた。彼はシンプルな帽子とマスクで顔


を隠していたが、そのオーラは隠しきれず、周囲


の視線を集めていた。


「サクラさん、こちらへどうぞ。」


レンは優しく声をかけ、席へ案内した。


「昨日は、ありがとうございました。あんなに


長い時間話すつもりはなかったんですが、つ


い…」


レンは少し照れた様子で言った。


「私こそ、突然あんな話をされて驚きました。


でも、話してくれてありがとう。」


サクラは微笑んだ。



二人はカフェのメニューを注文し、自然な流れ


で会話が始まった。レンは、アイドルとしての


生活の裏側を少しずつ明かし始めた。華やかな


表舞台とは裏腹に、常にプレッシャーと孤独を


感じていることを打ち明けた。


「みんなが僕を見てくれるのは嬉しいけど、そ


れでも心から笑えることは少ないんです。みんな


が望む『レン』を演じることで、自分自身を見


失ってしまいそうになる。」


その言葉に、サクラは心を痛めた。彼の笑顔の


裏に隠された孤独が、彼女にとっては耐え難い


ものに思えた。サクラは、自分の中で芽生え始


めた感情が、ただの同情ではないことを確信し


た。


「レンさん、私にできることがあれば、何でも


言ってください。あなたが本当の自分を取り戻


せるように、私も手伝いたいです。」


その言葉に、レンは驚き、そして嬉しそうに微


笑んだ。


「ありがとう、サクラさん。そんな風に言って


もらえるなんて、嬉しいです。」


### 心の壁を超えて


それからの二人は、頻繁に会うようになった。


レンは徐々にサクラに心を開き、彼の本当の姿


を見せるようになった。サクラもまた、彼に対


して素直な気持ちを隠さずに伝えるようにな


り、二人の距離は日に日に縮まっていった。



ある日、サクラの職場で特別なプロジェクトが


発表された。アイドルグループの特集記事を担


当することになり、その取材相手が偶然にもレ


ンのグループだったのだ。


「これって、運命なんでしょうか?」


サクラは内心、驚きと緊張が入り混じった感情


を抱えながら、レンにそのことを伝えた。


「運命かもしれませんね。でも、だからこそ、


僕たちはもっとお互いを知るべきだと思いま


す。」


レンは微笑んで答えた。



プロジェクトが進む中で、サクラは職場での顔


とプライベートでの顔を使い分けるレンの姿


に、ますます惹かれていった。そして、レンも


また、サクラの誠実さや優しさにますます心を


許していった。


### 甘い瞬間


取材が無事に終わった後、レンはサクラを静か


な場所へ連れて行った。それは彼が子供の頃か


ら大切にしている、小さな公園だった。


「ここで、僕はよく一人で考え事をしていまし


た。誰にも見られずに、ただ静かに…」


レンは遠くを見つめながら言った。


「そんな場所を私に教えてくれてありがとう、


レンさん。」


サクラは感謝の気持ちを込めて言った。


「サクラさん、僕は…あなたと一緒にいると、


本当に心が安らぐんです。だから、もっとあなた


のそばにいたい、もっとあなたを知りたい…」


レンの告白に、サクラの心は一気に熱くなっ


た。彼女は、自分が彼をどう思っているのか、


もう隠すことはできなかった。


「私も、レンさんのことが…大切です。」


サクラは小さな声で答えた。


その瞬間、レンは彼女を優しく抱きしめた。二


人は、まるで時が止まったかのように、その甘


い瞬間を共有した。


### これからの二人


その後、二人は正式に交際を始めた。しかし、


レンがサクラを甘やかされるのは、彼女と二人


きりのときだけ。表向きはアイドルとしての役


割を全うし、プライベートではサクラに甘える


レンの姿は、まさに彼が望んでいた「本当の自


分」だった。



サクラもまた、彼を支えながら、自分自身の気


持ちを深めていった。二人は、これからも一緒


に困難を乗り越え、甘く切ない恋愛を続けてい


くことだろう。


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